公開日: 2023/04/06 (掲載号:No.514)
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法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【事例51】「法人代表者の配偶者が経営する法人に対する交際費の損金性」

筆者: 安部 和彦

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説

【事例51】

「法人代表者の配偶者が経営する法人に対する交際費の損金性」

 

拓殖大学商学部教授
税理士 安部 和彦

 

【Q】

私は、北海道及び東北地方において飲食店業を営む株式会社X(資本金8,000万円)において、総務部長を務めております。飲食店業は大手チェーン店から個人経営の店に至るまで、政府の様々な支援策にもかかわらず、コロナ禍で壊滅的な打撃を受けた業種として知られております。

ところが、幸いわが社はその中でも比較的ダメージが小さかった、黒毛和牛の食べ放題を売りにした焼肉店を展開していたことから、ここ数年も業績は堅調で、むしろ同業他社が撤退した店舗を居抜きで買い取るなどして、店舗数を増加させているところです。これは、わが社の創業者で現在も代表取締役を務めるA(Xの株式の50%超を保有)の力量と先見性の賜物であると、従業員一同感服しているところです。

ところで、Aの経営者としての能力については疑うところはないのですが、人柄というか器量にはいささか問題があることは認めざるを得ません。Aは悪い意味での「昭和の価値観」に染まっており、表に出ない(出せない)ハラスメントの類も少なくなく、私はいさめる立場でありますが、天狗状態のAとその被害を受けている従業員との間に立って右往左往しており、日々非常にストレスが溜まっております。

そんな中、税務調査で新たな問題が判明しました。すなわち、Aはバツイチなのですが、前の夫人に対して毎月多額の養育費を支払っていることを今の夫人Cが快く思っていないことを気に掛けていて、今の夫人Cに対して様々な資金援助を行っているうち、自らのポケットマネーだけでは足りなくなり、会社の金に手を付けたのです。方法としては、Cが代表取締役を務め唯一の出資者である合同会社Yが運営する和食店において年間50回ほど会食した金額につき、Xがその支出した金額を交際費として経理しているというものです。

問題は、この会食はほぼ毎回AとCのみで行われているところで、税務署の調査官は、当該行為は通常の経済人の行為として不自然・不合理であるから、法人税法132条の規定により損金算入ができない旨指摘してきました。Aはこの指摘に激怒し、訴訟も辞さないと息巻いておりますが、当方は無駄な争いには巻き込まれたくないと考えております。税法上はどのように解するのが正当なのでしょうか、教えてください。

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法人税の損金経理要件をめぐる事例解説

【事例51】

「法人代表者の配偶者が経営する法人に対する交際費の損金性」

 

拓殖大学商学部教授
税理士 安部 和彦

 

【Q】

私は、北海道及び東北地方において飲食店業を営む株式会社X(資本金8,000万円)において、総務部長を務めております。飲食店業は大手チェーン店から個人経営の店に至るまで、政府の様々な支援策にもかかわらず、コロナ禍で壊滅的な打撃を受けた業種として知られております。

ところが、幸いわが社はその中でも比較的ダメージが小さかった、黒毛和牛の食べ放題を売りにした焼肉店を展開していたことから、ここ数年も業績は堅調で、むしろ同業他社が撤退した店舗を居抜きで買い取るなどして、店舗数を増加させているところです。これは、わが社の創業者で現在も代表取締役を務めるA(Xの株式の50%超を保有)の力量と先見性の賜物であると、従業員一同感服しているところです。

ところで、Aの経営者としての能力については疑うところはないのですが、人柄というか器量にはいささか問題があることは認めざるを得ません。Aは悪い意味での「昭和の価値観」に染まっており、表に出ない(出せない)ハラスメントの類も少なくなく、私はいさめる立場でありますが、天狗状態のAとその被害を受けている従業員との間に立って右往左往しており、日々非常にストレスが溜まっております。

そんな中、税務調査で新たな問題が判明しました。すなわち、Aはバツイチなのですが、前の夫人に対して毎月多額の養育費を支払っていることを今の夫人Cが快く思っていないことを気に掛けていて、今の夫人Cに対して様々な資金援助を行っているうち、自らのポケットマネーだけでは足りなくなり、会社の金に手を付けたのです。方法としては、Cが代表取締役を務め唯一の出資者である合同会社Yが運営する和食店において年間50回ほど会食した金額につき、Xがその支出した金額を交際費として経理しているというものです。

問題は、この会食はほぼ毎回AとCのみで行われているところで、税務署の調査官は、当該行為は通常の経済人の行為として不自然・不合理であるから、法人税法132条の規定により損金算入ができない旨指摘してきました。Aはこの指摘に激怒し、訴訟も辞さないと息巻いておりますが、当方は無駄な争いには巻き込まれたくないと考えております。税法上はどのように解するのが正当なのでしょうか、教えてください。

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連載目次

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説

▷総論

● 法人税の課税所得計算と損金経理(その1~5)

▷事例解説

● 法人税の損金経理要件をめぐる事例解説【事例1~40】

・・・  以下、順次公開 ・・・

筆者紹介

安部 和彦

(あんべ・かずひこ)

税理士
和彩総合事務所 代表社員
拓殖大学商学部教授

東京大学卒業後、平成2年、国税庁入庁。
調査査察部調査課、名古屋国税局調査部、関東信越国税局資産税課、国税庁資産税課勤務を経て、外資系会計事務所へ移り、平成18年に安部和彦税理士事務所・和彩総合事務所を開設、現在に至る。
医師・歯科医師向け税務アドバイス、相続税を含む資産税業務及び国際税務を主たる業務分野としている。
平成23年4月、国際医療福祉大学大学院医療経営管理分野准教授に就任。
平成26年9月、一橋大学大学院国際企業戦略研究科経営法務専攻博士後期課程単位修得退学
平成27年3月、博士(経営法) 一橋大学
令和3年4月、国際医療福祉大学大学院医療経営管理分野教授に就任。
令和5年4月、拓殖大学商学部教授に就任。

【主要著書】
・『事例で解説 法人税の損金経理』(2024年・清文社)
・『三訂版 医療・福祉施設における消費税の実務』(2023年・清文社)
・『改訂 消費税 インボイス制度導入の実務』(2023年・清文社)
・『裁判例・裁決事例に学ぶ消費税の判定誤りと実務対応』(2020年・清文社)
・『消費税 軽減税率対応とインボイス制度 導入の実務』(2019年・清文社)
・『[第三版]税務調査と質問検査権の法知識Q&A』(2017年・清文社)
・『最新判例でつかむ固定資産税の実務』(2017年・清文社)
・『新版 税務調査事例からみる役員給与の実務Q&A』(2016年・清文社)
・『要点スッキリ解説 固定資産税』(2016年・清文社)
・『Q&Aでわかる消費税軽減税率のポイント』(2016年・清文社)
・『Q&A医療法人の事業承継ガイドブック』(2015年・清文社)
・『国際課税における税務調査対策Q&A』(2014年・清文社)
・『消費税[個別対応方式・一括比例配分方式]有利選択の実務』(2013年・清文社)
・『修正申告と更正の請求の対応と実務』(2013年・清文社)
・『税務調査の指摘事例からみる法人税・所得税・消費税の売上をめぐる税務』(2011年・清文社)
・『相続税調査であわてない「名義」財産の税務(第3版)』(2021年・中央経済社)
・『相続税調査であわてない不動産評価の税務』(2015年・中央経済社)
・『消費税の税務調査対策ケーススタディ』(2013年・中央経済社)
・『医療現場で知っておきたい税法の基礎知識』(2012年・税務経理協会)
・『事例でわかる病医院の税務・経営Q&A(第2版)』(2012年・税務経理協会)
・『Q&A 相続税の申告・調査・手続相談事例集』(2011年・税務経理協会)
・『ケーススタディ 中小企業のための海外取引の税務』(2020年・ぎょうせい)
・『消費税の税率構造と仕入税額控除』(2015年・白桃書房)

【ホームページ】
https://wasai-consultants.com

             

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