公開日: 2020/07/02 (掲載号:No.376)
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法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【事例19】「仮装経理による棚卸資産過大計上分に係る特別損失の損金性」

筆者: 安部 和彦

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説

【事例19】

「仮装経理による棚卸資産過大計上分に係る特別損失の損金性」

 

国際医療福祉大学大学院准教授
税理士 安部 和彦

 

【Q】

私は、元々銀行マンでしたが、数年前に取引先である埼玉県所在の主として健康食品を扱っている専門商社X株式会社に移籍し、現在、会社の総務・経理を含む管理部門の責任者である管理部長を拝命しております。当社において主力商品として扱っている健康食品は、はやり廃りが極めて激しく、ある時マスコミに取り上げられると一気に注文が殺到したかと思えば、半年後にはそれまでの狂乱騒ぎが嘘のようにパタッと注文がやむということも珍しくありません。また、事前に何が当たるのかは全く予想がつかないため、商品の仕入れはバクチ的な要素があります。

それを反映してか、わが社においては、毎期末において、相当額の棚卸資産の評価損や廃棄損を計上しておりますが、これまでの税務調査で、期末棚卸資産の評価額に関しその計上額が過少であるとして否認されたことが何度もありました。

ただし、今回の税務調査で問題となったのは、営業部が秘かに行っていた架空在庫の経理処理に関してでした。その内容は、ある健康食品に関し、当てが外れて実際には想定よりも相当程度少ない数量しか売れなかったにもかかわらず、あたかも売れて利益を計上できたかのように仮装するため、翌期に売れるものと見込まれると称して、存在しない在庫を外部倉庫に預けているように経理処理したものでした。

〇該当健康食品の架空在庫に係るX社の経理処理(3期前)

X社の経理処理	正しい経理処理 期末在庫	550,000,000円 12,000,000円 売上高 1,200,000,000円	1,200,000,000円 期中仕入高 1,200,000,000円 1,200,000,000円 売上原価 650,000,000円 1,188,000,000円 売上総利益 550,000,000円 12,000,000円

(注) 期首商品棚卸高はゼロ。

3期前の期末においてそのような架空在庫が5億3,800万円分あり、直ちに修正すべきであったにもかかわらず、それを行っていなかったため、内部監査でそれが判明した前期末においてその金額を一括で特別損失に計上し、確定申告においては損金の額に計上しました。その結果、当該事業年度においては、繰越欠損金額(青色欠損金、法法57)が2億9,000万円となりました。

ところがこれについて、課税庁の調査官が、当該特別損失については前事業年度の損金の額に算入できない旨を言い渡されました。これは経理処理の誤りであり、正しい経理処理に直したにもかかわらずそれを認めないというのはどうにも納得がいかないのですが、どう考えればよろしいのでしょうか。

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法人税の損金経理要件をめぐる事例解説

【事例19】

「仮装経理による棚卸資産過大計上分に係る特別損失の損金性」

 

国際医療福祉大学大学院准教授
税理士 安部 和彦

 

【Q】

私は、元々銀行マンでしたが、数年前に取引先である埼玉県所在の主として健康食品を扱っている専門商社X株式会社に移籍し、現在、会社の総務・経理を含む管理部門の責任者である管理部長を拝命しております。当社において主力商品として扱っている健康食品は、はやり廃りが極めて激しく、ある時マスコミに取り上げられると一気に注文が殺到したかと思えば、半年後にはそれまでの狂乱騒ぎが嘘のようにパタッと注文がやむということも珍しくありません。また、事前に何が当たるのかは全く予想がつかないため、商品の仕入れはバクチ的な要素があります。

それを反映してか、わが社においては、毎期末において、相当額の棚卸資産の評価損や廃棄損を計上しておりますが、これまでの税務調査で、期末棚卸資産の評価額に関しその計上額が過少であるとして否認されたことが何度もありました。

ただし、今回の税務調査で問題となったのは、営業部が秘かに行っていた架空在庫の経理処理に関してでした。その内容は、ある健康食品に関し、当てが外れて実際には想定よりも相当程度少ない数量しか売れなかったにもかかわらず、あたかも売れて利益を計上できたかのように仮装するため、翌期に売れるものと見込まれると称して、存在しない在庫を外部倉庫に預けているように経理処理したものでした。

〇該当健康食品の架空在庫に係るX社の経理処理(3期前)

X社の経理処理	正しい経理処理 期末在庫	550,000,000円 12,000,000円 売上高 1,200,000,000円	1,200,000,000円 期中仕入高 1,200,000,000円 1,200,000,000円 売上原価 650,000,000円 1,188,000,000円 売上総利益 550,000,000円 12,000,000円

(注) 期首商品棚卸高はゼロ。

3期前の期末においてそのような架空在庫が5億3,800万円分あり、直ちに修正すべきであったにもかかわらず、それを行っていなかったため、内部監査でそれが判明した前期末においてその金額を一括で特別損失に計上し、確定申告においては損金の額に計上しました。その結果、当該事業年度においては、繰越欠損金額(青色欠損金、法法57)が2億9,000万円となりました。

ところがこれについて、課税庁の調査官が、当該特別損失については前事業年度の損金の額に算入できない旨を言い渡されました。これは経理処理の誤りであり、正しい経理処理に直したにもかかわらずそれを認めないというのはどうにも納得がいかないのですが、どう考えればよろしいのでしょうか。

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連載目次

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説

▷総論

● 法人税の課税所得計算と損金経理(その1~5)

▷事例解説

・・・  以下、順次公開 ・・・

筆者紹介

安部 和彦

(あんべ・かずひこ)

税理士
和彩総合事務所 代表社員
国際医療福祉大学大学院教授

東京大学卒業後、平成2年、国税庁入庁。
調査査察部調査課、名古屋国税局調査部、関東信越国税局資産税課、国税庁資産税課勤務を経て、外資系会計事務所へ移り、平成18年に安部和彦税理士事務所・和彩総合事務所を開設、現在に至る。
医師・歯科医師向け税務アドバイス、相続税を含む資産税業務及び国際税務を主たる業務分野としている。
平成23年4月、国際医療福祉大学大学院医療経営管理分野准教授に就任。

【主要著書】
・『消費税 インボイス制度導入の実務』(清文社)
・『裁判例・裁決事例に学ぶ 消費税の判定誤りと実務対応』(清文社)
・『新版 医療・福祉施設における消費税の実務』(清文社)
・『【第三版】税務調査と質問検査権の法知識Q&A』(清文社)
・『最新判例でつかむ固定資産税の実務』(清文社)
・『新版 税務調査事例からみる役員給与実務Q&A』(清文社)
・『要点スッキリ解説 固定資産税Q&A』(清文社)
・『Q&A 医療法人の事業承継ガイドブック』(清文社)
・『税務調査の指摘事例からみる法人税・所得税・消費税の売上をめぐる税務』(清文社)
・『修正申告と更正の請求の対応と実務』(清文社)
・『事例でわかる病医院の税務・経営Q&A(第2版)』(税務経理協会)
・『Q&A 相続税の申告・調査・手続相談事例集』(税務経理協会)
・『医療現場で知っておきたい税法の基礎知識』(税務経理協会)
・『消費税の税務調査対策ケーススタディ』(中央経済社)
・『消費税[個別対応方式・一括比例配分方式]有利選択の実務』(清文社)
・『国際課税における税務調査対策Q&A』(清文社)

【主要論文】
・「わが国企業の海外事業展開とタックスヘイブン対策税制について」(『国際税務』2001年12月号)
・「タックスヘイブン対策税制の適用範囲-キャドバリー・シュウェップス事件の欧州裁判所判決等を手がかりにして-」『税務弘報』(2007年10月号)
など
            

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