公開日: 2021/12/02 (掲載号:No.447)
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法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【事例36】「同族会社の代表者と同居する愛人に対して支給する給与の損金性」

筆者: 安部 和彦

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説

【事例36】

「同族会社の代表者と同居する愛人に対して支給する給与の損金性」

 

国際医療福祉大学大学院教授
税理士 安部 和彦

 

【Q】

私は、神奈川県内の私鉄沿線のとある駅から徒歩圏内に事務所を構える税理士です。私のクライアントの多くは地元で何十年も前から会計事務所を構えていた父親から引き継いだものですが、その中から廃業する会社が徐々に増えており、顧問先の新規開拓が最近の私の重要な経営課題となっております。

そこで、現状打開の窮余の策として始めたのが、顧客紹介会社の利用とホームページを通じたマーケティング戦略です。後者は、検索エンジンでわが事務所が上位に来るような施策を講じることと、ウェブ広告によりわが事務所のホームページに顧客を誘導することを行っています。前者は、紹介された顧客が顧問契約を締結した場合、年間顧問料の何割かを報酬として支払う施策となります。

その甲斐あってか、わが事務所の顧問先が徐々に増え始めているところですが、その中の1社(A株式会社)のことで相談があります。その会社は創業後10年くらいの芸能事務所で同族会社なのですが、最近売れ始めたタレントが何名か在籍しており、売上げも急上昇しております。そのため、節税の相談が多いのですが、何か手っ取り早い方法はないかとしつこく迫ってきて閉口させられております。

そんな中、A社の社長から連絡があり、現在、税務調査で税務署ともめているので直ちに来てほしいと言われました。話をよく聞いてみると、A社の社長は妻帯者でありながら、自社のタレントの卵Bに手を出して、自宅以外のセカンドハウスに同居させて自分の身の回りの世話をさせており、その対価として給料を毎月50万円支払っているとのことです。BはA社との間に雇用契約がないので従業員ではなく、A社の仕事もしておらず、ただ社長の身の回りの世話をしている愛人に過ぎないことから、税務署の調査官は「「愛人手当」のような個人的な支払いを会社に付け回しているのみでなく、従業員に仮装して給与を支払うのは極めて悪質である」として、厳しく追及されているようです。

私としては、これは良い機会なので、この社長は調査官にこっぴどく絞られるべきと考えているのですが、社長は「最悪でも役員給与として損金に算入されるべき」と主張して譲りません。社長の主張通り、役員給与として損金算入される余地はないのでしょうか、教えてください。

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法人税の損金経理要件をめぐる事例解説

【事例36】

「同族会社の代表者と同居する愛人に対して支給する給与の損金性」

 

国際医療福祉大学大学院教授
税理士 安部 和彦

 

【Q】

私は、神奈川県内の私鉄沿線のとある駅から徒歩圏内に事務所を構える税理士です。私のクライアントの多くは地元で何十年も前から会計事務所を構えていた父親から引き継いだものですが、その中から廃業する会社が徐々に増えており、顧問先の新規開拓が最近の私の重要な経営課題となっております。

そこで、現状打開の窮余の策として始めたのが、顧客紹介会社の利用とホームページを通じたマーケティング戦略です。後者は、検索エンジンでわが事務所が上位に来るような施策を講じることと、ウェブ広告によりわが事務所のホームページに顧客を誘導することを行っています。前者は、紹介された顧客が顧問契約を締結した場合、年間顧問料の何割かを報酬として支払う施策となります。

その甲斐あってか、わが事務所の顧問先が徐々に増え始めているところですが、その中の1社(A株式会社)のことで相談があります。その会社は創業後10年くらいの芸能事務所で同族会社なのですが、最近売れ始めたタレントが何名か在籍しており、売上げも急上昇しております。そのため、節税の相談が多いのですが、何か手っ取り早い方法はないかとしつこく迫ってきて閉口させられております。

そんな中、A社の社長から連絡があり、現在、税務調査で税務署ともめているので直ちに来てほしいと言われました。話をよく聞いてみると、A社の社長は妻帯者でありながら、自社のタレントの卵Bに手を出して、自宅以外のセカンドハウスに同居させて自分の身の回りの世話をさせており、その対価として給料を毎月50万円支払っているとのことです。BはA社との間に雇用契約がないので従業員ではなく、A社の仕事もしておらず、ただ社長の身の回りの世話をしている愛人に過ぎないことから、税務署の調査官は「「愛人手当」のような個人的な支払いを会社に付け回しているのみでなく、従業員に仮装して給与を支払うのは極めて悪質である」として、厳しく追及されているようです。

私としては、これは良い機会なので、この社長は調査官にこっぴどく絞られるべきと考えているのですが、社長は「最悪でも役員給与として損金に算入されるべき」と主張して譲りません。社長の主張通り、役員給与として損金算入される余地はないのでしょうか、教えてください。

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連載目次

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説

▷総論

● 法人税の課税所得計算と損金経理(その1~5)

▷事例解説

・・・  以下、順次公開 ・・・

筆者紹介

安部 和彦

(あんべ・かずひこ)

税理士
和彩総合事務所 代表社員
拓殖大学商学部教授

東京大学卒業後、平成2年、国税庁入庁。
調査査察部調査課、名古屋国税局調査部、関東信越国税局資産税課、国税庁資産税課勤務を経て、外資系会計事務所へ移り、平成18年に安部和彦税理士事務所・和彩総合事務所を開設、現在に至る。
医師・歯科医師向け税務アドバイス、相続税を含む資産税業務及び国際税務を主たる業務分野としている。
平成23年4月、国際医療福祉大学大学院医療経営管理分野准教授に就任。
平成26年9月、一橋大学大学院国際企業戦略研究科経営法務専攻博士後期課程単位修得退学
平成27年3月、博士(経営法) 一橋大学
令和3年4月、国際医療福祉大学大学院医療経営管理分野教授に就任。
令和5年4月、拓殖大学商学部教授に就任。

【主要著書】
・『事例で解説 法人税の損金経理』(2024年・清文社)
・『三訂版 医療・福祉施設における消費税の実務』(2023年・清文社)
・『改訂 消費税 インボイス制度導入の実務』(2023年・清文社)
・『裁判例・裁決事例に学ぶ消費税の判定誤りと実務対応』(2020年・清文社)
・『消費税 軽減税率対応とインボイス制度 導入の実務』(2019年・清文社)
・『[第三版]税務調査と質問検査権の法知識Q&A』(2017年・清文社)
・『最新判例でつかむ固定資産税の実務』(2017年・清文社)
・『新版 税務調査事例からみる役員給与の実務Q&A』(2016年・清文社)
・『要点スッキリ解説 固定資産税』(2016年・清文社)
・『Q&Aでわかる消費税軽減税率のポイント』(2016年・清文社)
・『Q&A医療法人の事業承継ガイドブック』(2015年・清文社)
・『国際課税における税務調査対策Q&A』(2014年・清文社)
・『消費税[個別対応方式・一括比例配分方式]有利選択の実務』(2013年・清文社)
・『修正申告と更正の請求の対応と実務』(2013年・清文社)
・『税務調査の指摘事例からみる法人税・所得税・消費税の売上をめぐる税務』(2011年・清文社)
・『相続税調査であわてない「名義」財産の税務(第3版)』(2021年・中央経済社)
・『相続税調査であわてない不動産評価の税務』(2015年・中央経済社)
・『消費税の税務調査対策ケーススタディ』(2013年・中央経済社)
・『医療現場で知っておきたい税法の基礎知識』(2012年・税務経理協会)
・『事例でわかる病医院の税務・経営Q&A(第2版)』(2012年・税務経理協会)
・『Q&A 相続税の申告・調査・手続相談事例集』(2011年・税務経理協会)
・『ケーススタディ 中小企業のための海外取引の税務』(2020年・ぎょうせい)
・『消費税の税率構造と仕入税額控除』(2015年・白桃書房)

【ホームページ】
https://wasai-consultants.com

             

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