公開日: 2024/04/04 (掲載号:No.563)
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法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【事例61】「株主総会の承認を得ていない決算書類に基づく確定申告の有効性」

筆者: 安部 和彦

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説

【事例61】

「株主総会の承認を得ていない決算書類に基づく確定申告の有効性」

 

拓殖大学商学部教授
税理士 安部 和彦

 

【Q】

私は、東北地方のある県庁所在地に本社を置き、不動産の賃貸や管理等を行う株式会社X(資本金3,000万円で3月決算)に勤務しており、現在総務部長を務めております。東北地方は太平洋側の地域を中心に、10年以上前の東日本大震災で大きな被害を受け、現在も復興の過程にあるという状況です。しかし、先日の能登半島地震のように、わが国ではほかの地方においても毎年のように多大な地震の被害を受けているとの報道に接するところであり、そのたびごとにとても他人事とは思えず、微力ながら何かの足しになればと募金を行っています。東日本大震災で多大な被害を受けた地域では、不動産オーナーも多額の損失を被っており、わが社もそのような取引先の実情に応じ、寄り添うような対応が求められてきたところです。

さて、私の前職は地方銀行の支店長で、わが社には2年前に転職しております。私の現在のポストの前任者はわが社一筋のたたき上げだったようで、社長の信認は厚かったようですが、近年世間で問題となっている法令順守の意識にはやや欠ける人だったと聞き及んでおります。そのため、私が総務部長に就いてからは、前任者のコンプライアンス違反を是正する作業を続けている状態です。

そんな中、つい先日私が発見したのが、わが社の決算書類につき株主総会の承認を得ていない年度があるという驚きの事実でした。その年度につき決算と申告内容を精査したところ、本来であれば法人税法の要件を満たした有価証券評価損につき費用計上すべきであるにもかかわらず行っていないことから、決算書類を修正し臨時株主総会で当該書類について承認を得ました。次いで、株主総会の承認を得ていない決算書類に基づく当初申告は無効であるため、修正後の真正の決算書類に基づく法人税の申告書を再度作成し、それを税務署に提出しました。

ところがこれに対して税務署から連絡があり、株主総会の承認を得ていない決算書類に基づく当初申告は有効であり、当初申告において損金経理により有価証券評価損を計上していないことから、損金算入は認められない旨を告げられました。税務署の説明には納得がいかないのですが、税法上はどう考えるのでしょうか、教えてください。

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法人税の損金経理要件をめぐる事例解説

【事例61】

「株主総会の承認を得ていない決算書類に基づく確定申告の有効性」

 

拓殖大学商学部教授
税理士 安部 和彦

 

【Q】

私は、東北地方のある県庁所在地に本社を置き、不動産の賃貸や管理等を行う株式会社X(資本金3,000万円で3月決算)に勤務しており、現在総務部長を務めております。東北地方は太平洋側の地域を中心に、10年以上前の東日本大震災で大きな被害を受け、現在も復興の過程にあるという状況です。しかし、先日の能登半島地震のように、わが国ではほかの地方においても毎年のように多大な地震の被害を受けているとの報道に接するところであり、そのたびごとにとても他人事とは思えず、微力ながら何かの足しになればと募金を行っています。東日本大震災で多大な被害を受けた地域では、不動産オーナーも多額の損失を被っており、わが社もそのような取引先の実情に応じ、寄り添うような対応が求められてきたところです。

さて、私の前職は地方銀行の支店長で、わが社には2年前に転職しております。私の現在のポストの前任者はわが社一筋のたたき上げだったようで、社長の信認は厚かったようですが、近年世間で問題となっている法令順守の意識にはやや欠ける人だったと聞き及んでおります。そのため、私が総務部長に就いてからは、前任者のコンプライアンス違反を是正する作業を続けている状態です。

そんな中、つい先日私が発見したのが、わが社の決算書類につき株主総会の承認を得ていない年度があるという驚きの事実でした。その年度につき決算と申告内容を精査したところ、本来であれば法人税法の要件を満たした有価証券評価損につき費用計上すべきであるにもかかわらず行っていないことから、決算書類を修正し臨時株主総会で当該書類について承認を得ました。次いで、株主総会の承認を得ていない決算書類に基づく当初申告は無効であるため、修正後の真正の決算書類に基づく法人税の申告書を再度作成し、それを税務署に提出しました。

ところがこれに対して税務署から連絡があり、株主総会の承認を得ていない決算書類に基づく当初申告は有効であり、当初申告において損金経理により有価証券評価損を計上していないことから、損金算入は認められない旨を告げられました。税務署の説明には納得がいかないのですが、税法上はどう考えるのでしょうか、教えてください。

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連載目次

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説

▷総論

● 法人税の課税所得計算と損金経理(その1~5)

▷事例解説

● 法人税の損金経理要件をめぐる事例解説【事例1~40】

・・・  以下、順次公開 ・・・

筆者紹介

安部 和彦

(あんべ・かずひこ)

税理士
和彩総合事務所 代表社員
拓殖大学商学部教授

東京大学卒業後、平成2年、国税庁入庁。
調査査察部調査課、名古屋国税局調査部、関東信越国税局資産税課、国税庁資産税課勤務を経て、外資系会計事務所へ移り、平成18年に安部和彦税理士事務所・和彩総合事務所を開設、現在に至る。
医師・歯科医師向け税務アドバイス、相続税を含む資産税業務及び国際税務を主たる業務分野としている。
平成23年4月、国際医療福祉大学大学院医療経営管理分野准教授に就任。
平成26年9月、一橋大学大学院国際企業戦略研究科経営法務専攻博士後期課程単位修得退学
平成27年3月、博士(経営法) 一橋大学
令和3年4月、国際医療福祉大学大学院医療経営管理分野教授に就任。
令和5年4月、拓殖大学商学部教授に就任。

【主要著書】
・『事例で解説 法人税の損金経理』(2024年・清文社)
・『三訂版 医療・福祉施設における消費税の実務』(2023年・清文社)
・『改訂 消費税 インボイス制度導入の実務』(2023年・清文社)
・『裁判例・裁決事例に学ぶ消費税の判定誤りと実務対応』(2020年・清文社)
・『消費税 軽減税率対応とインボイス制度 導入の実務』(2019年・清文社)
・『[第三版]税務調査と質問検査権の法知識Q&A』(2017年・清文社)
・『最新判例でつかむ固定資産税の実務』(2017年・清文社)
・『新版 税務調査事例からみる役員給与の実務Q&A』(2016年・清文社)
・『要点スッキリ解説 固定資産税』(2016年・清文社)
・『Q&Aでわかる消費税軽減税率のポイント』(2016年・清文社)
・『Q&A医療法人の事業承継ガイドブック』(2015年・清文社)
・『国際課税における税務調査対策Q&A』(2014年・清文社)
・『消費税[個別対応方式・一括比例配分方式]有利選択の実務』(2013年・清文社)
・『修正申告と更正の請求の対応と実務』(2013年・清文社)
・『税務調査の指摘事例からみる法人税・所得税・消費税の売上をめぐる税務』(2011年・清文社)
・『相続税調査であわてない「名義」財産の税務(第3版)』(2021年・中央経済社)
・『相続税調査であわてない不動産評価の税務』(2015年・中央経済社)
・『消費税の税務調査対策ケーススタディ』(2013年・中央経済社)
・『医療現場で知っておきたい税法の基礎知識』(2012年・税務経理協会)
・『事例でわかる病医院の税務・経営Q&A(第2版)』(2012年・税務経理協会)
・『Q&A 相続税の申告・調査・手続相談事例集』(2011年・税務経理協会)
・『ケーススタディ 中小企業のための海外取引の税務』(2020年・ぎょうせい)
・『消費税の税率構造と仕入税額控除』(2015年・白桃書房)

【ホームページ】
https://wasai-consultants.com

             

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