法人税の損金経理要件をめぐる事例解説
【事例47】
「経営譲渡契約に基づき発生する営業権の償却費に係る損金性」
国際医療福祉大学大学院教授
税理士 安部 和彦
【Q】
私は、東海地方において工作機械を製造・販売する株式会社Xで経理部長を務めております。あらゆる機械やその部品類は基本的に当社が扱うような工作機械によって製造されるため、工作機械は一般に「機械を作る機械」「(和製英語ですが)マザーマシン」といわれており、有力な自動車製造会社が複数存在する東海地方においては、伝統的に工作機械メーカーが多数立地しています。戦後創業した当社もその一角として、これまで順調に事業活動を展開してきました。
しかし、近年、当業界においても中国メーカーの台頭などもあって国際的な競争が激しくなり、事業再編の話がひっきりなしに飛び交っています。そんな中、数年前に、東海地方にある有力な自動車部品メーカー甲の子会社のうちの一社(乙)に関する事業譲渡の話が当社に持ち込まれました。すなわち、乙社は従業員の高齢化によりここ数年経営成績が低迷しており、甲のグループ企業再編の一環で整理する必要に迫られていたものの、甲に対して自社製造の工作機械を納入し、またそのメンテナンスを行ってきたため、今後も確実な売上が望めるという話でした。
そこで、当社は甲から乙の株式全部の譲渡を受けることとなりました。その株式譲渡価格の算定においては、乙の簿価純資産価額がほぼゼロであることを考慮しつつ、甲に対する工作機械の納入・メンテナンスの優先的な契約権があることを斟酌し、後者の価値を過去の実績から1億2,000万円と見積もりました。
当社は乙の株式の譲渡を甲から受けたのち、乙の甲に対する工作機械の納入・メンテナンスの優先的な契約権を営業権と認定して、その価格1億2,000万円を3年間にわたって均等償却し、各事業年度において損金に算入していました。
ところが先日受けた税務調査で、税務署の調査官から、甲に対する工作機械の納入・メンテナンスの優先的な契約権なるものは実体がなく、営業権と呼べるものではないため、償却費の損金算入は認められないと言い渡されました。調査官の当該主張には到底承服できないのですが、法人税法上どのように考えるべきなのでしょうか、教えてください。
この記事全文をご覧いただくには、プロフェッションネットワークの会員(プレミアム
会員又は一般会員)としてのログインが必要です。
通常、Profession Journalはプレミアム会員専用の閲覧サービスですので、プレミアム
会員のご登録をおすすめします。
プレミアム会員の方は下記ボタンからログインしてください。
プレミアム会員のご登録がお済みでない方は、下記ボタンから「プレミアム会員」を選択の上、お手続きください。