法人税の損金経理要件をめぐる事例解説
【事例52】
「請負契約により取得した機械装置の取得時期」
拓殖大学商学部教授
税理士 安部 和彦
【Q】
私は、中部地方において自動車部品の製造業を営む株式会社A(資本金20億円で3月決算)において、経理部長を務めております。中部地方にはわが国を代表する自動車メーカーの工場が多数存在しており、わが社もそれらに属する担当者から要求される厳しい品質基準とコスト管理に音を上げつつも、何とか食らいついて、これまで事業を維持することができてきたところです。
自動車業界は技術革新のスピードが極めて速く、完成品メーカーにその部品を納入する下請けも常にそのような流れの中で、最新の技術に見合う品質と、それと相反する「リーズナブルな」コストとを両立した製品を製造し続けることが求められています。そのため、わが社を取り巻く経済環境が厳しい中、将来の自社の収益源を維持・開拓するため、設備投資への資金投入には余念がないところであります。
そんな中、先日来受けている税務調査でわが社が過去に行った設備投資に関し、調査官から問題が提起されています。すなわち、自動車の完成品メーカーからの要請で、一昨年の事業年度(X1年3月31日決算)終了間際において、新たに納入することとなった部品を製造するのに必要な工作機械を導入したのですが、その導入のタイミングに係る経理処理が間違っていると指摘されました。
わが社は、メーカーの要請に1日でも早く応えるため、事業年度末に近いX1年3月30日に機械の据付工事を終え、直ちにサンプルとなる部品の製造を開始し、翌事業年度であるX1年4月3日にはその第1弾を相手方に提供しております。したがって、わが社の経理上の処理としては、据付工事を終え部品の製造を開始したX1年3月期において当該機械装置に係る減価償却費を損金に計上しております。ところが、調査官は、納入メーカーによる据付工事はX1年3月30日に終了しているとしても、その試運転により当該機械に期待される性能の発揮をわが社が確認したのは早くてX1年4月1日以降であり、事業年度末であるX1年3月31日において機械を取得したというための要件である検収を終えていないため、当該事業年度において減価償却費を損金に計上することはできないと主張しております。このような場合、当該機械装置の取得時期及び減価償却費の損金計上のタイミングはどうなるのでしょうか、教えてください。
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