法人税の損金経理要件をめぐる事例解説
【事例53】
「建築工事に係る簿外で支出したコンサルタント料の損金性」
拓殖大学商学部教授
税理士 安部 和彦
【Q】
私は、中国地方の政令指定都市に本社を置き総合建設業を営む株式会社X(資本金2億円で青色申告法人)において、経営企画部長を務めております。首都圏や近畿圏、中京圏といった三大都市圏の政令指定都市ほどではありませんが、中国地方の県庁所在地ではサラリーマン向けのマンション建設が堅調であり、おかげさまでわが社も常に受注工事を抱えている状況であります。
とはいえ、取引金額が大きくなる不動産については、有象無象の輩が介入して分け前をくすねようとする行為が後を絶たず、わが社の場合もその対応には苦慮しております。マンション建設の場合、その敷地として、ある程度まとまった広さの土地が必要となりますが、権利関係が複雑で当事者が多い場合、それらの意向をまとめるまでには紆余曲折があり、担当者はストレスで胃がやられるケースも珍しくありません。また、駐車場へのスムーズな通路確保や接道要件を満たすためにどうしても必要な土地を入手する目的で、その持ち主に対し相場よりも相当高い金額で売却してくれるよう依頼するケースもあります。そのため、蛇の道は蛇ということで、地方ごとに存在する不動産取引のエキスパートと称する仲介者に、コンサルタント料を支払うこともあります。
今回の税務調査で問題となったことの1つは、当該コンサルタント料の支払いのうち1件が帳簿に記載されていた内容(広告宣伝費)と異なるという点についてでした。調査官は、コンサルタント料の支払先に反面調査を行ったものの、契約書記載の住所地には会社は存在せず、また、その代表者にも会えなかったことから、その存在は架空である可能性が高く、そうなると青色申告法人である当社の場合、当該支払いには損金性はないと主張してきました。契約を行った当事者である当社不動産開発部の社員に確認したところ、確かに帳簿に記載されていた内容とは異なるものの、コンサルタント会社の代表と対面で契約を締結し、実際契約書通りの成果(土地の買収)を収めたため、コンサルタント料の支払いには実体があり、損金性は疑いがないと真っ向から反論しております。私としましては社員の肩を持ちたいところですが、税法上はどのように判断するのでしょうか、教えてください。
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