公開日: 2025/10/02 (掲載号:No.638)
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法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【事例79】「土地と建物を競売により一括取得した場合における建物の取得価額」

筆者: 安部 和彦

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説

【事例79】

「土地と建物を競売により一括取得した場合における建物の取得価額」

 

拓殖大学商学部教授
税理士 安部 和彦

 

【Q】

私は、関東地方のとある県における中堅都市に本社を置き、中華料理を提供する店舗を県内及び近隣県に十数軒展開する飲食業を営むX株式会社(資本金3,000万円の3月決算法人)において経理部長を務めております。

飲食業界はご承知の通り2020年から数年にわたって人類を苦しめたコロナ禍で大変な苦境に陥り、同業他社の多くが廃業や倒産の憂き目に遭ったところでしたが、わが社は政府や自治体からの補助金等の効果もあってか、お陰様でなんとか生き延びることができました。とはいえ、コロナ禍の時期は不採算店をいくつも閉店するなど後ろ向きのリストラを実施しておりましたが、コロナ禍が開けた後は再び攻めに転じて、同業他社が手放した店舗を中心に買収し、業務拡大に努めております。

そんな中、先日来、所轄税務署の税務調査を受けていますが、その中で買収した店舗の経理処理について、調査官と見解の相違が生じています。わが社は、店舗に係る土地建物の取得の際、当該建物の上層階に引き続き残ることとなる賃借人がいるため、当該賃借人から預かった敷金の返還債務を差し引いて建物の取得価額とし、それをもとに毎期の減価償却費を算定して損金計上していました。

ところが、税務調査の席で調査官いわく、当該敷金の返還債務は未だ確定していないため、建物の取得価額に算入できない、したがって減価償却費として損金算入できる金額に誤りがある、とのことでした。この場合、敷金の返還債務は確定していないと断ずることはできるのでしょうか、教えてください。

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法人税の損金経理要件をめぐる事例解説

【事例79】

「土地と建物を競売により一括取得した場合における建物の取得価額」

 

拓殖大学商学部教授
税理士 安部 和彦

 

【Q】

私は、関東地方のとある県における中堅都市に本社を置き、中華料理を提供する店舗を県内及び近隣県に十数軒展開する飲食業を営むX株式会社(資本金3,000万円の3月決算法人)において経理部長を務めております。

飲食業界はご承知の通り2020年から数年にわたって人類を苦しめたコロナ禍で大変な苦境に陥り、同業他社の多くが廃業や倒産の憂き目に遭ったところでしたが、わが社は政府や自治体からの補助金等の効果もあってか、お陰様でなんとか生き延びることができました。とはいえ、コロナ禍の時期は不採算店をいくつも閉店するなど後ろ向きのリストラを実施しておりましたが、コロナ禍が開けた後は再び攻めに転じて、同業他社が手放した店舗を中心に買収し、業務拡大に努めております。

そんな中、先日来、所轄税務署の税務調査を受けていますが、その中で買収した店舗の経理処理について、調査官と見解の相違が生じています。わが社は、店舗に係る土地建物の取得の際、当該建物の上層階に引き続き残ることとなる賃借人がいるため、当該賃借人から預かった敷金の返還債務を差し引いて建物の取得価額とし、それをもとに毎期の減価償却費を算定して損金計上していました。

ところが、税務調査の席で調査官いわく、当該敷金の返還債務は未だ確定していないため、建物の取得価額に算入できない、したがって減価償却費として損金算入できる金額に誤りがある、とのことでした。この場合、敷金の返還債務は確定していないと断ずることはできるのでしょうか、教えてください。

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連載目次

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説

▷総論

● 法人税の課税所得計算と損金経理(その1~5)

▷事例解説

● 法人税の損金経理要件をめぐる事例解説【事例1~50】

・・・  以下、順次公開 ・・・

筆者紹介

安部 和彦

(あんべ・かずひこ)

税理士
和彩総合事務所 代表社員
拓殖大学商学部教授

東京大学卒業後、平成2年、国税庁入庁。
調査査察部調査課、名古屋国税局調査部、関東信越国税局資産税課、国税庁資産税課勤務を経て、外資系会計事務所へ移り、平成18年に安部和彦税理士事務所・和彩総合事務所を開設、現在に至る。
医師・歯科医師向け税務アドバイス、相続税を含む資産税業務及び国際税務を主たる業務分野としている。
平成23年4月、国際医療福祉大学大学院医療経営管理分野准教授に就任。
平成26年9月、一橋大学大学院国際企業戦略研究科経営法務専攻博士後期課程単位修得退学
平成27年3月、博士(経営法) 一橋大学
令和3年4月、国際医療福祉大学大学院医療経営管理分野教授に就任。
令和5年4月、拓殖大学商学部教授に就任。

【主要著書】
・『新版 修正申告と更正の請求の対応と実務』(2025年・清文社)
・『事例で解説 法人税の損金経理』(2024年・清文社)
・『三訂版 医療・福祉施設における消費税の実務』(2023年・清文社)
・『改訂 消費税 インボイス制度導入の実務』(2023年・清文社)
・『裁判例・裁決事例に学ぶ消費税の判定誤りと実務対応』(2020年・清文社)
・『消費税 軽減税率対応とインボイス制度 導入の実務』(2019年・清文社)
・『[第三版]税務調査と質問検査権の法知識Q&A』(2017年・清文社)
・『最新判例でつかむ固定資産税の実務』(2017年・清文社)
・『新版 税務調査事例からみる役員給与の実務Q&A』(2016年・清文社)
・『要点スッキリ解説 固定資産税』(2016年・清文社)
・『Q&Aでわかる消費税軽減税率のポイント』(2016年・清文社)
・『Q&A医療法人の事業承継ガイドブック』(2015年・清文社)
・『国際課税における税務調査対策Q&A』(2014年・清文社)
・『消費税[個別対応方式・一括比例配分方式]有利選択の実務』(2013年・清文社)
・『税務調査の指摘事例からみる法人税・所得税・消費税の売上をめぐる税務』(2011年・清文社)
・『相続税調査であわてない「名義」財産の税務(第3版)』(2021年・中央経済社)
・『相続税調査であわてない不動産評価の税務』(2015年・中央経済社)
・『消費税の税務調査対策ケーススタディ』(2013年・中央経済社)
・『医療現場で知っておきたい税法の基礎知識』(2012年・税務経理協会)
・『事例でわかる病医院の税務・経営Q&A(第2版)』(2012年・税務経理協会)
・『Q&A 相続税の申告・調査・手続相談事例集』(2011年・税務経理協会)
・『ケーススタディ 中小企業のための海外取引の税務』(2020年・ぎょうせい)
・『消費税の税率構造と仕入税額控除』(2015年・白桃書房)

【ホームページ】
https://wasai-consultants.com

           

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