法人税の損金経理要件をめぐる事例解説
【事例81】
「外国為替の売買相場が著しく変動した場合の
外国為替換算差損の損金性」
拓殖大学商学部教授
税理士 安部 和彦
【Q】
私は、アメリカ国内に本店を有する保険会社の東京支店において、10年前から経理部門を統括するディレクターを務めております。日本人は保有する金融資産のうちに保険商品が占める割合が高く、保険好きの国民であると称されることがありますが、私の勤務する外資系の保険会社にとっては、なかなか厳しいマーケットであると認識しております。
どういうことかと言えば、外資系保険会社は、クライアントの要望に沿った保険内容を一から組み立てて商品として提案するのが通例ですが、実際のところクライアントは、保険商品に関する知識に乏しいことが一般的であり、日系保険会社が提供するような、誰にでも「わかりやすい」保険商品を求めている傾向にあります。そのため、外資系保険会社の営業担当者は、自社が提供できる保険の内容を丁寧に説明しながら、相手のニーズに合ったプランを作っていくよう努めますが、このような営業スタイルが「ハマる」クライアントは、いまだ限定的というのが正直なところです。
以上のような経営環境の中、わが東京支店は懸命な営業努力により一定のクライアント層をつかむことができましたが、アメリカの親会社の経営陣を納得させるような水準には達していなかったようで、残念ながら一昨年に業務の大幅な縮小を実施しました。
さて、今般、その際に行った外貨建社債の円換算により生じた損失の損金計上につき、現在受けている国税局の税務調査で問題となっております。すなわち、当該外貨建社債については、外国為替の売買相場が著しく変動したため、わが社は期末換算差損につき損金算入を行ったのですが、調査官は、当該外貨建社債については、デリバティブ取引により繰延ヘッジ処理がされており、為替変動のリスクがヘッジされていることから、損金算入は認められないと主張しております。損失が生じているのに損金算入されないという主張は理解できないのですが、税法上どう考えるのが妥当なのでしょうか、教えてください。
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