法人税の損金経理要件をめぐる事例解説
【事例48】
「使途不明の商品券購入費用の損金性」
国際医療福祉大学大学院教授
税理士 安部 和彦
【Q】
私は、近畿地方において医療機関向けの人材派遣や情報サービスの提供を行っている株式会社Y(資本金1億円)で総務経理部長を務めております。わが社は代表取締役であるZが10年前に創業した比較的歴史の浅い会社ですが、もともとソフトウェア会社のSEであったZが医療機関向けの情報サービス業に目をつけたところ大当たりし、最近では株式公開の準備を進めるところまで事業を拡大してきました。
私が銀行から当社に移籍してきたのは2年程前ですが、当社の特徴として、急成長中の会社にありがちな現象ではありますが、事業規模に比べ組織運営の整備が不十分であるといえます。そこで、私はこれまでの銀行員としての経験を踏まえ、適切なガバナンスが機能するような組織体制を構築すべく、管理部門の充実を柱とした組織改革を矢継ぎ早に行ってきました。特に不透明かつ不効率な支出を抑制するという意味で、経理部門の役割が大きいことから、チェック体制を整備し、結果として利益率を前年から数ポイント上げることに成功しました。
このような目覚ましい成果を挙げつつも、最後まで手付かずだったのが、代表取締役の特別勘定の取扱いでした。これが先日受けた税務調査で問題となっており、頭を痛めております。すなわち、代表取締役Zが最近熱心に取り組んでいる、日本の伝統的な価値観に根差した道徳教育の普及に関し、それを学校教育の現場で実践しようということで、Zが学校法人Xの理事長に就任したことに伴い、当社から代表取締役特別勘定を通じて支出される不透明な金銭等が問題となりました。問題となった支出は、学校法人に対する商品券500万円分の購入費用で、交際費として計上し、800万円の定額控除限度額の範囲内であるため、全額損金に算入していました。担当の社長室長の説明では、それらの商品券は、学校教育で使用するPCや図書の購入費用に充てられたはずであるとのことでした。
しかし、当社は、それが学校法人において実際には何に充てられていたのかという証拠書類を徴収していないため、調査官は、当該支出は交際費ではなく寄附金ないし使途秘匿金に該当するとして、損金性を否認してきました。私個人としては、調査官の主張はもっともだと感じていますが、代表取締役Zが烈火のごとく怒っており、対応に窮しています。代表取締役にどのように説明すべきでしょうか、教えてください。
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