法人税の損金経理要件をめぐる事例解説
【事例75】
「医療法人の理事長に対する貸付金に係る利率の水準」
拓殖大学商学部教授
税理士 安部 和彦
【Q】
私は、今年で創業50周年を迎える、東北地方のある県の県内第二の都市に病院や診療所、訪問看護ステーション等を開設する医療法人社団X(3月決算法人)において、事務長を務めております。
医療業界はご承知の通り、ここ数年はコロナ禍に振り回されており、現場が疲弊して多数の離職者が出るなど、散々な有様でした。当医療法人においても、コロナが猛威を振るっていた2020年春から2022年末までの時期には、医療スタッフがそれへの対応にかかりっきりとなったため、管理部門のスタッフもそれにより手薄となった業務へのバックアップに入るなど、両者が一体となってただ走り続けることによりなんとかその嵐の中を潜り抜けてきたといったところでした。幸いなことにその時期は、国からコロナ関連の様々な補助金を交付されていたことから、法人の経営状況は意外に悪くなったのですが、コロナが感染症の5類に分類された2023年5月以降は、一転して補助金で上げ底となっていた収益性が一気に落ち込み、病院経営の体質改善への取り組みが待ったなしとなりました。そのため、現在、法人を挙げて業務の効率化、収益性の向上に取り組んでいるところです。
さて、そのような中、先週から所轄税務署の税務調査を受けております。そこで現在問題となっているのは、法人の理事長に対する貸付金に関してです。すなわち、医療法人傘下の診療所の建物を建て替える際、その2階及び3階部分を理事長の自宅としたのですが、その部分の建設費用相当額(約1億円)及び生活費充当金額(約2,000万円)につき一旦、銀行から法人に対し融資を受け、さらに法人から理事長個人に転貸するという方法を採っています。当該貸付金につき、法人は銀行から受けた融資と同等の金利で理事長に貸し付けていることとして、当該利息相当分に係る経済的利益につき源泉徴収を行っていますが、調査官は、建設費用相当額はともかくとして、生活費充当金額に対する貸付金利は低すぎるとして、利子税の特例基準割合によるべきと主張しております。法人としては、当該貸付金につき得も損もしていないため、銀行融資に係る金利と同等の金利で貸し付けることに何の問題もないと考えておりますが、税法上はどのように考えるべきなのでしょうか、教えてください。
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