公開日: 2025/08/07 (掲載号:No.630)
文字サイズ

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【事例77】「ゴルフ会員権に係る預託金債権の貸倒損失についての損金算入時期」

筆者: 安部 和彦

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説

【事例77】

「ゴルフ会員権に係る預託金債権の貸倒損失についての損金算入時期」

 

拓殖大学商学部教授
税理士 安部 和彦

 

【Q】

私は、関東地方のとある県の県庁所在地に本社を置き、ソフトウェアの開発やシステム関連のコンサルティングを行うX株式会社(資本金3億円の3月決算法人)において、経理のみならず採用も担当する、何でも屋の総務部長を務めております。

国のDX(Digital Transformation)化推進政策の影響等もあって、現在、ソフトウェアの開発やITシステム業界は概ね好況で、わが社も多額の受注残を抱えてフル稼働しているところです。

しかし、現在のわが社の従業員数では、増え続ける受注をこなすことは到底困難であることから、昨年度から新卒採用のみならず第二新卒や中途採用にも力を入れていますが、残念ながら思うように採用できていないのが現状です。理工学部出身のわが社の社長は、数学ができない文系にはシステムなど分かるわけがない、採用は理工系学部出身か、最低でも高専出身者にしろと無理難題を押し付けてくるのですが、そのような「金の卵」は待遇のよい大手上場企業にすべてさらわれてしまい、私としては、文学部出身でシェークスピアや源氏物語を学んできた者でもいいから、とにかく人を集めたいと、今存亡の危機にある女子大にも足を伸ばして、学生を送り出してほしいと就職担当者に泣きついているところです。

さて、その一方で、社長は自分の道楽であるゴルフについては聖域であるかの如く日夜ふるまっていますが、今回の税務調査では社長の当該ゴルフ道楽に課税庁のメスが入ったところです。すなわち、わが社が会員となっているゴルフクラブのうち、1ヶ所が経営破綻したのですが、当該ゴルフクラブに係る預託金返還請求権につき切り捨てられた金額を退会手続の完了した日の属する事業年度(令和5年3月期)の損金の額に算入したことについて、調査官から問題視されました。

調査官の言うことには、当該金額はゴルフクラブが民事再生法の規定に基づく再生計画認可の決定につき切り捨てが確定した日の属する事業年度(平成30年3月期)に損金算入されるとのことでした。損金計上のタイミングがかなりずれるのですが、税法上いずれが妥当なのでしょうか、教えてください。

この記事全文をご覧いただくには、プロフェッションネットワークの会員登録およびログインが必要です。

すでに会員登録をされている方は、下記ボタンからログインのうえ、ご覧ください。

Profession Journalのすべての記事をご覧いただくには、「プレミアム会員(有料)」へのご登録が必要となります。
なお、『速報解説』については「一般会員(無料)」へのご登録でも、ご覧いただけます。
※他にもWebセミナー受け放題のスーパープレミアム会員などがございます。

会員登録がお済みでない方は、下記会員登録のボタンより、ご登録のお手続きをお願いいたします。

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説

【事例77】

「ゴルフ会員権に係る預託金債権の貸倒損失についての損金算入時期」

 

拓殖大学商学部教授
税理士 安部 和彦

 

【Q】

私は、関東地方のとある県の県庁所在地に本社を置き、ソフトウェアの開発やシステム関連のコンサルティングを行うX株式会社(資本金3億円の3月決算法人)において、経理のみならず採用も担当する、何でも屋の総務部長を務めております。

国のDX(Digital Transformation)化推進政策の影響等もあって、現在、ソフトウェアの開発やITシステム業界は概ね好況で、わが社も多額の受注残を抱えてフル稼働しているところです。

しかし、現在のわが社の従業員数では、増え続ける受注をこなすことは到底困難であることから、昨年度から新卒採用のみならず第二新卒や中途採用にも力を入れていますが、残念ながら思うように採用できていないのが現状です。理工学部出身のわが社の社長は、数学ができない文系にはシステムなど分かるわけがない、採用は理工系学部出身か、最低でも高専出身者にしろと無理難題を押し付けてくるのですが、そのような「金の卵」は待遇のよい大手上場企業にすべてさらわれてしまい、私としては、文学部出身でシェークスピアや源氏物語を学んできた者でもいいから、とにかく人を集めたいと、今存亡の危機にある女子大にも足を伸ばして、学生を送り出してほしいと就職担当者に泣きついているところです。

さて、その一方で、社長は自分の道楽であるゴルフについては聖域であるかの如く日夜ふるまっていますが、今回の税務調査では社長の当該ゴルフ道楽に課税庁のメスが入ったところです。すなわち、わが社が会員となっているゴルフクラブのうち、1ヶ所が経営破綻したのですが、当該ゴルフクラブに係る預託金返還請求権につき切り捨てられた金額を退会手続の完了した日の属する事業年度(令和5年3月期)の損金の額に算入したことについて、調査官から問題視されました。

調査官の言うことには、当該金額はゴルフクラブが民事再生法の規定に基づく再生計画認可の決定につき切り捨てが確定した日の属する事業年度(平成30年3月期)に損金算入されるとのことでした。損金計上のタイミングがかなりずれるのですが、税法上いずれが妥当なのでしょうか、教えてください。

この記事全文をご覧いただくには、プロフェッションネットワークの会員登録およびログインが必要です。

すでに会員登録をされている方は、下記ボタンからログインのうえ、ご覧ください。

Profession Journalのすべての記事をご覧いただくには、「プレミアム会員(有料)」へのご登録が必要となります。
なお、『速報解説』については「一般会員(無料)」へのご登録でも、ご覧いただけます。
※他にもWebセミナー受け放題のスーパープレミアム会員などがございます。

会員登録がお済みでない方は、下記会員登録のボタンより、ご登録のお手続きをお願いいたします。

連載目次

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説

▷総論

● 法人税の課税所得計算と損金経理(その1~5)

▷事例解説

● 法人税の損金経理要件をめぐる事例解説【事例1~50】

・・・  以下、順次公開 ・・・

筆者紹介

安部 和彦

(あんべ・かずひこ)

税理士
和彩総合事務所 代表社員
拓殖大学商学部教授

東京大学卒業後、平成2年、国税庁入庁。
調査査察部調査課、名古屋国税局調査部、関東信越国税局資産税課、国税庁資産税課勤務を経て、外資系会計事務所へ移り、平成18年に安部和彦税理士事務所・和彩総合事務所を開設、現在に至る。
医師・歯科医師向け税務アドバイス、相続税を含む資産税業務及び国際税務を主たる業務分野としている。
平成23年4月、国際医療福祉大学大学院医療経営管理分野准教授に就任。
平成26年9月、一橋大学大学院国際企業戦略研究科経営法務専攻博士後期課程単位修得退学
平成27年3月、博士(経営法) 一橋大学
令和3年4月、国際医療福祉大学大学院医療経営管理分野教授に就任。
令和5年4月、拓殖大学商学部教授に就任。

【主要著書】
・『新版 修正申告と更正の請求の対応と実務』(2025年・清文社)
・『事例で解説 法人税の損金経理』(2024年・清文社)
・『三訂版 医療・福祉施設における消費税の実務』(2023年・清文社)
・『改訂 消費税 インボイス制度導入の実務』(2023年・清文社)
・『裁判例・裁決事例に学ぶ消費税の判定誤りと実務対応』(2020年・清文社)
・『消費税 軽減税率対応とインボイス制度 導入の実務』(2019年・清文社)
・『[第三版]税務調査と質問検査権の法知識Q&A』(2017年・清文社)
・『最新判例でつかむ固定資産税の実務』(2017年・清文社)
・『新版 税務調査事例からみる役員給与の実務Q&A』(2016年・清文社)
・『要点スッキリ解説 固定資産税』(2016年・清文社)
・『Q&Aでわかる消費税軽減税率のポイント』(2016年・清文社)
・『Q&A医療法人の事業承継ガイドブック』(2015年・清文社)
・『国際課税における税務調査対策Q&A』(2014年・清文社)
・『消費税[個別対応方式・一括比例配分方式]有利選択の実務』(2013年・清文社)
・『税務調査の指摘事例からみる法人税・所得税・消費税の売上をめぐる税務』(2011年・清文社)
・『相続税調査であわてない「名義」財産の税務(第3版)』(2021年・中央経済社)
・『相続税調査であわてない不動産評価の税務』(2015年・中央経済社)
・『消費税の税務調査対策ケーススタディ』(2013年・中央経済社)
・『医療現場で知っておきたい税法の基礎知識』(2012年・税務経理協会)
・『事例でわかる病医院の税務・経営Q&A(第2版)』(2012年・税務経理協会)
・『Q&A 相続税の申告・調査・手続相談事例集』(2011年・税務経理協会)
・『ケーススタディ 中小企業のための海外取引の税務』(2020年・ぎょうせい)
・『消費税の税率構造と仕入税額控除』(2015年・白桃書房)

【ホームページ】
https://wasai-consultants.com

           

関連書籍

重点解説 法人税申告の実務

公認会計士・税理士 鈴木基史 著

演習法人税法

公益社団法人 全国経理教育協会 編

実務必須の重要税務判例100

弁護士 菊田雅裕 著

法人税事例選集

公認会計士・税理士 森田政夫 共著 公認会計士・税理士 西尾宇一郎 共著

法人税の損金経理

税理士 安部和彦 著

税法基本判例 Ⅰ

谷口勢津夫 著

社長!税務調査の事前対策してますか

公認会計士・税理士 清原裕平 著

精選Q&A 相続税・贈与税全書〔財産評価編〕

税理士法人チェスター 編著 税理士 香取 稔 編著

法人の不良債権処理と税務の対応

税理士 内山 裕 著

国税調査の舞台裏

税理士 小倉敏郎 著

法人税申告書と決算書の作成手順

税理士 杉田宗久 共著 税理士 岡野敏明 共著

新着情報

もっと見る

記事検索

メルマガ

メールマガジン購読をご希望の方は以下に登録してください。

#
#