公開日: 2025/12/04 (掲載号:No.647)
文字サイズ

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【事例81】「外国為替の売買相場が著しく変動した場合の外国為替換算差損の損金性」

筆者: 安部 和彦

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説

【事例81】

「外国為替の売買相場が著しく変動した場合の
外国為替換算差損の損金性」

 

拓殖大学商学部教授
税理士 安部 和彦

 

【Q】

私は、アメリカ国内に本店を有する保険会社の東京支店において、10年前から経理部門を統括するディレクターを務めております。日本人は保有する金融資産のうちに保険商品が占める割合が高く、保険好きの国民であると称されることがありますが、私の勤務する外資系の保険会社にとっては、なかなか厳しいマーケットであると認識しております。

どういうことかと言えば、外資系保険会社は、クライアントの要望に沿った保険内容を一から組み立てて商品として提案するのが通例ですが、実際のところクライアントは、保険商品に関する知識に乏しいことが一般的であり、日系保険会社が提供するような、誰にでも「わかりやすい」保険商品を求めている傾向にあります。そのため、外資系保険会社の営業担当者は、自社が提供できる保険の内容を丁寧に説明しながら、相手のニーズに合ったプランを作っていくよう努めますが、このような営業スタイルが「ハマる」クライアントは、いまだ限定的というのが正直なところです。

以上のような経営環境の中、わが東京支店は懸命な営業努力により一定のクライアント層をつかむことができましたが、アメリカの親会社の経営陣を納得させるような水準には達していなかったようで、残念ながら一昨年に業務の大幅な縮小を実施しました。

さて、今般、その際に行った外貨建社債の円換算により生じた損失の損金計上につき、現在受けている国税局の税務調査で問題となっております。すなわち、当該外貨建社債については、外国為替の売買相場が著しく変動したため、わが社は期末換算差損につき損金算入を行ったのですが、調査官は、当該外貨建社債については、デリバティブ取引により繰延ヘッジ処理がされており、為替変動のリスクがヘッジされていることから、損金算入は認められないと主張しております。損失が生じているのに損金算入されないという主張は理解できないのですが、税法上どう考えるのが妥当なのでしょうか、教えてください。

この記事全文をご覧いただくには、プロフェッションネットワークの会員登録およびログインが必要です。

すでに会員登録をされている方は、下記ボタンからログインのうえ、ご覧ください。

Profession Journalのすべての記事をご覧いただくには、「プレミアム会員(有料)」へのご登録が必要となります。
なお、『速報解説』については「一般会員(無料)」へのご登録でも、ご覧いただけます。
※他にもWebセミナー受け放題のスーパープレミアム会員などがございます。

会員登録がお済みでない方は、下記会員登録のボタンより、ご登録のお手続きをお願いいたします。

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説

【事例81】

「外国為替の売買相場が著しく変動した場合の
外国為替換算差損の損金性」

 

拓殖大学商学部教授
税理士 安部 和彦

 

【Q】

私は、アメリカ国内に本店を有する保険会社の東京支店において、10年前から経理部門を統括するディレクターを務めております。日本人は保有する金融資産のうちに保険商品が占める割合が高く、保険好きの国民であると称されることがありますが、私の勤務する外資系の保険会社にとっては、なかなか厳しいマーケットであると認識しております。

どういうことかと言えば、外資系保険会社は、クライアントの要望に沿った保険内容を一から組み立てて商品として提案するのが通例ですが、実際のところクライアントは、保険商品に関する知識に乏しいことが一般的であり、日系保険会社が提供するような、誰にでも「わかりやすい」保険商品を求めている傾向にあります。そのため、外資系保険会社の営業担当者は、自社が提供できる保険の内容を丁寧に説明しながら、相手のニーズに合ったプランを作っていくよう努めますが、このような営業スタイルが「ハマる」クライアントは、いまだ限定的というのが正直なところです。

以上のような経営環境の中、わが東京支店は懸命な営業努力により一定のクライアント層をつかむことができましたが、アメリカの親会社の経営陣を納得させるような水準には達していなかったようで、残念ながら一昨年に業務の大幅な縮小を実施しました。

さて、今般、その際に行った外貨建社債の円換算により生じた損失の損金計上につき、現在受けている国税局の税務調査で問題となっております。すなわち、当該外貨建社債については、外国為替の売買相場が著しく変動したため、わが社は期末換算差損につき損金算入を行ったのですが、調査官は、当該外貨建社債については、デリバティブ取引により繰延ヘッジ処理がされており、為替変動のリスクがヘッジされていることから、損金算入は認められないと主張しております。損失が生じているのに損金算入されないという主張は理解できないのですが、税法上どう考えるのが妥当なのでしょうか、教えてください。

この記事全文をご覧いただくには、プロフェッションネットワークの会員登録およびログインが必要です。

すでに会員登録をされている方は、下記ボタンからログインのうえ、ご覧ください。

Profession Journalのすべての記事をご覧いただくには、「プレミアム会員(有料)」へのご登録が必要となります。
なお、『速報解説』については「一般会員(無料)」へのご登録でも、ご覧いただけます。
※他にもWebセミナー受け放題のスーパープレミアム会員などがございます。

会員登録がお済みでない方は、下記会員登録のボタンより、ご登録のお手続きをお願いいたします。

連載目次

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説

▷総論

● 法人税の課税所得計算と損金経理(その1~5)

▷事例解説

● 法人税の損金経理要件をめぐる事例解説【事例1~50】

・・・  以下、順次公開 ・・・

筆者紹介

安部 和彦

(あんべ・かずひこ)

税理士
和彩総合事務所 代表社員
拓殖大学商学部教授

東京大学卒業後、平成2年、国税庁入庁。
調査査察部調査課、名古屋国税局調査部、関東信越国税局資産税課、国税庁資産税課勤務を経て、外資系会計事務所へ移り、平成18年に安部和彦税理士事務所・和彩総合事務所を開設、現在に至る。
医師・歯科医師向け税務アドバイス、相続税を含む資産税業務及び国際税務を主たる業務分野としている。
平成23年4月、国際医療福祉大学大学院医療経営管理分野准教授に就任。
平成26年9月、一橋大学大学院国際企業戦略研究科経営法務専攻博士後期課程単位修得退学
平成27年3月、博士(経営法) 一橋大学
令和3年4月、国際医療福祉大学大学院医療経営管理分野教授に就任。
令和5年4月、拓殖大学商学部教授に就任。

【主要著書】
・『新版 修正申告と更正の請求の対応と実務』(2025年・清文社)
・『事例で解説 法人税の損金経理』(2024年・清文社)
・『三訂版 医療・福祉施設における消費税の実務』(2023年・清文社)
・『改訂 消費税 インボイス制度導入の実務』(2023年・清文社)
・『裁判例・裁決事例に学ぶ消費税の判定誤りと実務対応』(2020年・清文社)
・『消費税 軽減税率対応とインボイス制度 導入の実務』(2019年・清文社)
・『[第三版]税務調査と質問検査権の法知識Q&A』(2017年・清文社)
・『最新判例でつかむ固定資産税の実務』(2017年・清文社)
・『新版 税務調査事例からみる役員給与の実務Q&A』(2016年・清文社)
・『要点スッキリ解説 固定資産税』(2016年・清文社)
・『Q&Aでわかる消費税軽減税率のポイント』(2016年・清文社)
・『Q&A医療法人の事業承継ガイドブック』(2015年・清文社)
・『国際課税における税務調査対策Q&A』(2014年・清文社)
・『消費税[個別対応方式・一括比例配分方式]有利選択の実務』(2013年・清文社)
・『税務調査の指摘事例からみる法人税・所得税・消費税の売上をめぐる税務』(2011年・清文社)
・『相続税調査であわてない「名義」財産の税務(第3版)』(2021年・中央経済社)
・『相続税調査であわてない不動産評価の税務』(2015年・中央経済社)
・『消費税の税務調査対策ケーススタディ』(2013年・中央経済社)
・『医療現場で知っておきたい税法の基礎知識』(2012年・税務経理協会)
・『事例でわかる病医院の税務・経営Q&A(第2版)』(2012年・税務経理協会)
・『Q&A 相続税の申告・調査・手続相談事例集』(2011年・税務経理協会)
・『ケーススタディ 中小企業のための海外取引の税務』(2020年・ぎょうせい)
・『消費税の税率構造と仕入税額控除』(2015年・白桃書房)

【ホームページ】
https://wasai-consultants.com

           

#