公開日: 2022/05/26 (掲載号:No.471)
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フロー・チャートを使って学ぶ会計実務 【第58回】「金融商品のレベル別の時価開示」

筆者: 西田 友洋

【STEP1】項目ごとの分類

まず、「現金及び短期間で決済されるため時価が帳簿価額に近似するもの」、「非上場株式、投資信託、組合等への出資」「それ以外の金融商品」の3つに分類する。

(1) 現金及び短期間で決済されるため時価が帳簿価額に近似するもの

「現金及び短期間で決済されるため時価が帳簿価額に近似するもの」は、時価開示が不要のため(時価開示適用指針4)、【STEP2】及び【STEP3】の検討は不要である。なお、「金融商品の時価等に関する事項」の注記で、以下の注記を行うことが考えられる。

「現金及び預金」については、現金であること及び預金は短期間で決済されるため時価が帳簿価額に近似するものであることから、記載を省略しています。

(2) 非上場株式、投資信託、組合等への出資

「非上場株式、投資信託、組合等への出資」については、【STEP3】を検討する。

(3) それ以外の金融商品

「それ以外の金融商品」については、「貸借対照表計上額(BS価額)が時価の場合」と、「貸借対照表計上額(BS価額)は取得価額で注記のみ時価の場合」で注記内容が異なる場合があるため、金融商品ごとに貸借対照表価額(BS価額)を時価で計上しているか、貸借対照表価額(BS価額)は取得価額で注記のみ時価であるかを分類する。

また、時価はレベル1から3のどれに該当するかにより、注記内容が異なるため、時価がそれぞれのどれに当てはまるかを分類する。分類後、【STEP2】を検討する。

〈レベル1からレベル3のインプット(時価会計基準11)〉

〈例示〉

(※1) 各社の時価の算定方法により、レベルは異なる場合がある。

(※2) 総資産の大部分を金融資産が占め、かつ総負債の大部分を金融負債及び保険契約から生じる負債が占める企業集団又は企業(以下、「企業集団等」という)以外の企業集団等(つまり、事業会社)においては、取引相手の金融機関、ブローカー、情報ベンダー等、の第三者が客観的に信頼性のある者で企業集団等から独立した者であり、公表されているインプットの契約時からの推移と入手した相場価格との間に明らかな不整合はないと認められ、かつ、レベル2の時価に属すると判断される場合には、以下のデリバティブ取引は、当該第三者から入手した相場価格を時価とみなすことができる(時価適用指針24)。

 インプットである金利がその全期間にわたって一般に公表されており観察可能である同一通貨の固定金利と変動金利を交換する金利スワップ

 インプットである所定の通貨の先物為替相場がその全期間にわたって一般に公表されており観察可能である為替予約又は通貨スワップ

なお、オプションを含むような取引は、利用されるボラティリティの種類によってはレベル3の時価に分類されると考えられるため、上記の適用対象外となる。そのため、取引相手の金融機関、ブローカー、情報ベンダー等、第三者から入手した相場価格が時価会計基準に従って算定されたものであると判断できる場合には、当該価格を時価の算定に用いることができる(時価適用指針18)。

フロー・チャートを使って学ぶ会計実務

【第58回】

「金融商品のレベル別の時価開示」

 

史彩監査法人
公認会計士 西田 友洋

 

【はじめに】

2019年7月4日に企業会計基準第30号「時価の算定に関する会計基準(以下、「時価会計基準」という)」及び企業会計基準適用指針第31号「時価の算定に関する会計基準の適用指針(以下、「時価適用指針」という)」が公表され、また、企業会計基準適用指針第19号「金融商品の時価等の開示に関する適用指針(以下、「時価開示適用指針」という)」が改正された。当該公表及び改正により、2022年3月期より金融商品のレベル別の時価開示が求められている。

今回は、金融商品のレベル別の時価開示について解説する。

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連載目次

フロー・チャートを使って学ぶ会計実務

第1回~第30回

筆者紹介

西田 友洋

(にしだ・ともひろ)

史彩監査法人 パートナー
公認会計士

2007年10月に準大手監査法人に入所。2019年8月にRSM清和監査法人に入所。2022年2月に史彩監査法人に入所。
主に法定監査、上場準備会社向けの監査を中心に様々な業種の会計監査業務に従事する。また、会社買収に当たっての財務デューデリジェンス、IPOを目指す会社への内部統制コンサル及び短期調査、収益認識コンサル実績もある。
他に、決算留意事項セミナーや収益認識セミナー等の講師実績もある。

【日本公認会計士協会委員】
監査・保証基準委員会 委員(現任)
監査・保証基準委員会 起草委員会 起草委員(現任)
中小事務所等施策調査会 「監査専門委員会」専門委員(現任)
品質管理基準委員会 起草委員会 起草委員
中小事務所等施策調査会 「SME・SMP対応専門委員会」専門委員
監査基準委員会「監査基準委員会作業部会」部会員

【書籍】
「図解と設例で学ぶ これならわかる連結会計」(共著/日本実業出版社)等

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