公開日: 2020/05/28 (掲載号:No.371)
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フロー・チャートを使って学ぶ会計実務 【第48回】「仮想通貨の会計処理」

筆者: 西田 友洋

【STEP2】保有する仮想通貨の会計処理

(1) 仮想通貨の売却時の会計処理

仮想通貨交換業者及び仮想通貨利用者が、仮想通貨を売却した場合、仮想通貨の売却損益を売買の合意が成立した時点において認識(約定日基準)する(仮想通貨取扱い13)。

損益の計上区分は、仮想通貨取扱いでは決められていないため、各社の状況に応じて、決定することになる。

(2) 期末評価

仮想通貨交換業者又は仮想通貨利用者の保有する仮想通貨の期末評価は、仮想通貨の活発な市場が存在する場合と存在しない場合で異なる。

【活発な市場が存在する場合とは】

仮想通貨交換業者又は仮想通貨利用者の保有する仮想通貨について、継続的に価格情報が提供される程度に仮想通貨取引所又は仮想通貨販売所において十分な数量及び頻度で取引が行われている場合をいう(仮想通貨取扱い8)。

 

① 仮想通貨の活発な市場が存在する場合

保有する仮想通貨(仮想通貨交換業者が預託者から預かった仮想通貨を除く。以下同じ)について、活発な市場が存在する場合、市場価格に基づく価額をもって貸借対照表価額とし、市場価格と帳簿価額との差額は当期の損益として処理する(仮想通貨取扱い5)。

② 仮想通貨の活発な市場が存在しない場合

保有する仮想通貨について、活発な市場が存在しない場合、取得原価をもって貸借対照表価額とする。ただし、期末における処分見込価額(ゼロ又は備忘価額を含む)が取得原価を下回る場合には、当該処分見込価額をもって貸借対照表価額とし、取得原価と当該処分見込価額との差額は当期の損失とする(仮想通貨取扱い6)。

なお、翌期以降、当該損失を戻し入れることはできない(仮想通貨取扱い7)。

【処分見込価額の見積り】

処分見込価額は、独立第三者の当事者との相対取引を行った場合の価額等、資金の回収が確実な金額に基づくことが考えられるが、資金の回収が確実な金額を見積ることが困難な場合にはゼロ又は備忘価額を処分見込価額とする(仮想通貨取扱い43)。

 

損益の計上区分は、仮想通貨取扱いでは決められていないため、各社の状況に応じて、決定することになる。

《設例①:活発な市場が存在する場合》

・A社の決算月は3/31である。

・A社は、当期に活発な市場が存在する仮想通貨を5,000取得した。

・当期末の仮想通貨の市場価格は4,000である。

〈取得時〉

〈当期末〉

(※) 取得価額5,000-市場価格4,000=1,000

《設例②: 活発な市場が存在しない場合》

・A社の決算月は3/31である。

・A社は、当期に活発な市場が存在しない仮想通貨を5,000取得した。

・当期末の処分見込価額は5,000である。

・翌期末の処分見込価額は4,000である。

〈取得時〉

〈当期末〉

(※1) 取得価額5,000≧処分見込価額のため、会計処理不要

〈翌期末〉

(※2) 取得価額5,000-処分見込価額4,000=1,000

次は、【STEP4】を検討する。

フロー・チャートを使って学ぶ会計実務

【第48回】

「仮想通貨の会計処理」

 

RSM清和監査法人
公認会計士 西田 友洋

 

【はじめに】

日本でも様々な仮想通貨が発行されている。この仮想通貨の会計処理について、基準がなかったため、2018年3月14日にASBJより実務対応報告第38号「資金決済法における仮想通貨の会計処理等に関する当面の取扱い」(以下、「仮想通貨取扱い」という)が公表された。今回は、この「仮想通貨の取扱い」について解説する。

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連載目次

フロー・チャートを使って学ぶ会計実務

第1回~第30回

筆者紹介

西田 友洋

(にしだ・ともひろ)

史彩監査法人 パートナー
公認会計士

2007年10月に準大手監査法人に入所。2019年8月にRSM清和監査法人に入所。2022年2月に史彩監査法人に入所。
主に法定監査、上場準備会社向けの監査を中心に様々な業種の会計監査業務に従事する。また、会社買収に当たっての財務デューデリジェンス、IPOを目指す会社への内部統制コンサル及び短期調査、収益認識コンサル実績もある。
他に、決算留意事項セミナーや収益認識セミナー等の講師実績もある。

【日本公認会計士協会委員】
監査・保証基準委員会 委員(現任)
監査・保証基準委員会 起草委員会 起草委員(現任)
中小事務所等施策調査会 「監査専門委員会」専門委員(現任)
品質管理基準委員会 起草委員会 起草委員
中小事務所等施策調査会 「SME・SMP対応専門委員会」専門委員
監査基準委員会「監査基準委員会作業部会」部会員

【書籍】
「図解と設例で学ぶ これならわかる連結会計」(共著/日本実業出版社)等

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