法人税の損金経理要件をめぐる事例解説
【事例43】
「関係会社へ支払った追加傭車費の寄附金該当性」
国際医療福祉大学大学院教授
税理士 安部 和彦
【Q】
私は、都内において運送業を営む株式会社X(3月決算法人)で経理部長を務めております。わが社は高度成長期に会社を設立して以来、自動車部品等の工業製品のほか、法人契約の引越業務等に関し、50年に渡り地道に業務を拡大してきており、現在ではお陰様で営業エリアは関東一円をカバーし、支店網も20店舗以上展開してきているところです。
しかしながら、今年で3年目となるコロナ禍の影響の下で、特に初年度は当社の取引先は軒並み操業停止に追い込まれ、貨物需要が大幅に落ち込みました。このままどうなるのかと大いに心配しておりましたが、お陰様で翌年度はその反動で多くの業種で業績が回復し、貨物需要もコロナ禍前の水準まで持ち直すこととなりました。コロナ初年度はわが社の業績が落ち込み、リストラが不可避となったため、やむを得ず従業員の早期退職を募ることにより危機を乗り切りましたが、翌年度は前年度の反動で、リストラ後の事業体制ではさばききれないほどの業務が舞い込んできたため、わが社の代表取締役が役員(代表権を有する)を務めるY株式会社(3月決算法人)からドライバーを派遣してもらうことで、何とか顧客の要請に応えることができました。コロナ3年目である今年度は、新規のドライバーを雇用して体制の充実に努めていますが、底堅い貨物需要に応じるためにはそれだけでは足りないため、昨年度から引き続きY社からのドライバー派遣に頼っているところです。
ところが、先日来受けている税務調査において、調査官から、わが社からY社に対して支払われている傭車費は、その算定基準が不明確であり、特に決算月である3月に多額の一時金が支払われているが、これはY社がギリギリ黒字にならない程度の水準となるよう調整した金額となっており、対価性が不明で恣意性が強い金銭の支払いであることから、寄附金である旨指摘されました。実際は、上記で説明したとおり、当社において賄えない顧客からの要請に応えるため、Y社からドライバーを派遣してもらった分に対する支払いであるから対価性はあり、年度末に支払いが偏ったのは、Y社からの情報提供が遅延したためであって、何ら他意はないところです。したがって、課税庁の指摘は不当と考えますが、税法に照らせばどのように考えるのが妥当なのでしょうか、教えてください。
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