公開日: 2022/09/01 (掲載号:No.484)
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法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【事例44】「減価償却資産の判定単位とその損金性」

筆者: 安部 和彦

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説

【事例44】

「減価償却資産の判定単位とその損金性」

 

国際医療福祉大学大学院教授
税理士 安部 和彦

 

【Q】

私は、神奈川県内において鉄道関連を中心とした模型や物品等を販売する株式会社X(資本金1,000万円、従業員10名の3月決算法人)を経営しております。私は元々製薬関連企業で営業職を務めていましたが、40歳を過ぎて、自分の時間を切り売りするだけのサラリーマン生活に疑問を感じ、子供のころから慣れ親しんできた鉄道模型を細々と扱う商店を開いて、残りの人生を謳歌したいという思いが募り、10年前に私鉄の駅前の商店街に現在の店を開業しました。私のこだわりである、国内外の珍しい鉄道模型を収集し販売しているためか、素人が始めた店の割には顧客がついて、お陰様で店の床面積を2倍に拡大するほどの売上となっております。

ところで、私の店舗で最近力を入れているのは、鉄道模型のジオラマを作成して、その上に実際に模型を走らせるという取り組みです。鉄道模型には軌間によりいくつかの種類がありますが、私の店舗ではそのうち、わが国で最も人気があるNゲージ(軌間9ミリ)とHOゲージ(軌間16.5ミリ)の2種類の模型を走らせることができるレイアウトを常設しております。特にNゲージの方は、地元の子供たちや愛好家が、自分の模型を持ち込んで走らせたりしており、好評をいただいております。一方、HOゲージの方は比較的高額であるため、当社が保有する模型を有償で貸し出して、レイアウト上の運転を楽しんでもらうケースがほとんどです。

さて、そのような貸出し用のHOゲージにつき、先日の税務調査で問題とされました。調査官が言うには、当社が貸し出しているHOゲージの機関車(1台20万円)は、3連となっており、3台で1組の編成となっているのだから、少額減価償却資産(措法67の5)には該当しないとのことです。確かに、わが社のレイアウト上を走らせるのに、蒸気機関車3連運転は非常に迫力があり、多くの愛好家がそれを目当てに訪れているのは事実ですが、1台ずつでも走行可能であり、3台で一編成ということはありません。3台1組だと取得価額が60万円と30万円を大きく超えてしまうため、一時の損金算入はできないということなのでしょうが、使用・貸出の実態に即しておらず、納得がいかないのですが、調査官の言うことが正しいのでしょうか、教えてください。

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法人税の損金経理要件をめぐる事例解説

【事例44】

「減価償却資産の判定単位とその損金性」

 

国際医療福祉大学大学院教授
税理士 安部 和彦

 

【Q】

私は、神奈川県内において鉄道関連を中心とした模型や物品等を販売する株式会社X(資本金1,000万円、従業員10名の3月決算法人)を経営しております。私は元々製薬関連企業で営業職を務めていましたが、40歳を過ぎて、自分の時間を切り売りするだけのサラリーマン生活に疑問を感じ、子供のころから慣れ親しんできた鉄道模型を細々と扱う商店を開いて、残りの人生を謳歌したいという思いが募り、10年前に私鉄の駅前の商店街に現在の店を開業しました。私のこだわりである、国内外の珍しい鉄道模型を収集し販売しているためか、素人が始めた店の割には顧客がついて、お陰様で店の床面積を2倍に拡大するほどの売上となっております。

ところで、私の店舗で最近力を入れているのは、鉄道模型のジオラマを作成して、その上に実際に模型を走らせるという取り組みです。鉄道模型には軌間によりいくつかの種類がありますが、私の店舗ではそのうち、わが国で最も人気があるNゲージ(軌間9ミリ)とHOゲージ(軌間16.5ミリ)の2種類の模型を走らせることができるレイアウトを常設しております。特にNゲージの方は、地元の子供たちや愛好家が、自分の模型を持ち込んで走らせたりしており、好評をいただいております。一方、HOゲージの方は比較的高額であるため、当社が保有する模型を有償で貸し出して、レイアウト上の運転を楽しんでもらうケースがほとんどです。

さて、そのような貸出し用のHOゲージにつき、先日の税務調査で問題とされました。調査官が言うには、当社が貸し出しているHOゲージの機関車(1台20万円)は、3連となっており、3台で1組の編成となっているのだから、少額減価償却資産(措法67の5)には該当しないとのことです。確かに、わが社のレイアウト上を走らせるのに、蒸気機関車3連運転は非常に迫力があり、多くの愛好家がそれを目当てに訪れているのは事実ですが、1台ずつでも走行可能であり、3台で一編成ということはありません。3台1組だと取得価額が60万円と30万円を大きく超えてしまうため、一時の損金算入はできないということなのでしょうが、使用・貸出の実態に即しておらず、納得がいかないのですが、調査官の言うことが正しいのでしょうか、教えてください。

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連載目次

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説

▷総論

● 法人税の課税所得計算と損金経理(その1~5)

▷事例解説

● 法人税の損金経理要件をめぐる事例解説【事例1~50】

・・・  以下、順次公開 ・・・

筆者紹介

安部 和彦

(あんべ・かずひこ)

税理士
和彩総合事務所 代表社員
拓殖大学商学部教授

東京大学卒業後、平成2年、国税庁入庁。
調査査察部調査課、名古屋国税局調査部、関東信越国税局資産税課、国税庁資産税課勤務を経て、外資系会計事務所へ移り、平成18年に安部和彦税理士事務所・和彩総合事務所を開設、現在に至る。
医師・歯科医師向け税務アドバイス、相続税を含む資産税業務及び国際税務を主たる業務分野としている。
平成23年4月、国際医療福祉大学大学院医療経営管理分野准教授に就任。
平成26年9月、一橋大学大学院国際企業戦略研究科経営法務専攻博士後期課程単位修得退学
平成27年3月、博士(経営法) 一橋大学
令和3年4月、国際医療福祉大学大学院医療経営管理分野教授に就任。
令和5年4月、拓殖大学商学部教授に就任。

【主要著書】
・『事例で解説 法人税の損金経理』(2024年・清文社)
・『三訂版 医療・福祉施設における消費税の実務』(2023年・清文社)
・『改訂 消費税 インボイス制度導入の実務』(2023年・清文社)
・『裁判例・裁決事例に学ぶ消費税の判定誤りと実務対応』(2020年・清文社)
・『消費税 軽減税率対応とインボイス制度 導入の実務』(2019年・清文社)
・『[第三版]税務調査と質問検査権の法知識Q&A』(2017年・清文社)
・『最新判例でつかむ固定資産税の実務』(2017年・清文社)
・『新版 税務調査事例からみる役員給与の実務Q&A』(2016年・清文社)
・『要点スッキリ解説 固定資産税』(2016年・清文社)
・『Q&Aでわかる消費税軽減税率のポイント』(2016年・清文社)
・『Q&A医療法人の事業承継ガイドブック』(2015年・清文社)
・『国際課税における税務調査対策Q&A』(2014年・清文社)
・『消費税[個別対応方式・一括比例配分方式]有利選択の実務』(2013年・清文社)
・『修正申告と更正の請求の対応と実務』(2013年・清文社)
・『税務調査の指摘事例からみる法人税・所得税・消費税の売上をめぐる税務』(2011年・清文社)
・『相続税調査であわてない「名義」財産の税務(第3版)』(2021年・中央経済社)
・『相続税調査であわてない不動産評価の税務』(2015年・中央経済社)
・『消費税の税務調査対策ケーススタディ』(2013年・中央経済社)
・『医療現場で知っておきたい税法の基礎知識』(2012年・税務経理協会)
・『事例でわかる病医院の税務・経営Q&A(第2版)』(2012年・税務経理協会)
・『Q&A 相続税の申告・調査・手続相談事例集』(2011年・税務経理協会)
・『ケーススタディ 中小企業のための海外取引の税務』(2020年・ぎょうせい)
・『消費税の税率構造と仕入税額控除』(2015年・白桃書房)

【ホームページ】
https://wasai-consultants.com

             

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