公開日: 2024/12/05 (掲載号:No.597)
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法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【事例69】「土地営業権原価に係る償却費の損金該当性」

筆者: 安部 和彦

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説

【事例69】

「土地営業権原価に係る償却費の損金該当性」

 

拓殖大学商学部教授
税理士 安部 和彦

 

【Q】

私は、関東地方のある政令指定都市に本社を構え不動産の売買及び不動産経営コンサルティング業を営む株式会社X(資本金8億円で3月決算法人)において、経理部長を務めております。

わが社は長らく首都圏郊外の住宅用地の造成及び販売に携わってきましたが、ここ20年程度にわたる働き盛りのサラリーマン層における郊外から都心回帰の動きにより、東京駅から電車で1時間半以上かかるような、わが社の扱っている類の戸建て住宅地の需要は冷え込むようになってきました。そのため、ここ10年くらいは東京23区内やその周辺の、東京駅まで1時間以内に立地する駅周辺の土地を購入し、その上に単身ないし夫婦子なし世帯向けの賃貸マンションを建設して、資産運用に意欲的な富裕層に購入してもらうビジネスに注力することで、わが社もなんとか息を吹き返してやっていけているところです。

さて、そのような中、わが社も先日来国税局の税務調査を受けていますが、そこで1点問題となっている事項があります。それは、他社が開発したゴルフ練習場用地につき、わが社が買収しその建設を引き継いで完成させた物件がありますが、調査官は、その買収の際に計上した営業権は専らゴルフ練習場の建物及び構築物という有形固定資産により構成されており、調査事業年度において当該練習場は未だ稼働していないことから、その減価償却費は損金算入できないと主張しております。私の考えでは、当社が計上した営業権はゴルフ練習場買収に伴い発生した超過収益力に基づく「のれん」であり、ゴルフ練習場は稼働していないもののその運営を行っている事業部は業務を開始しているため、減価償却が可能と考えております。この場合、法人税法上どのように考えるのが妥当なのでしょうか、教えてください。

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法人税の損金経理要件をめぐる事例解説

【事例69】

「土地営業権原価に係る償却費の損金該当性」

 

拓殖大学商学部教授
税理士 安部 和彦

 

【Q】

私は、関東地方のある政令指定都市に本社を構え不動産の売買及び不動産経営コンサルティング業を営む株式会社X(資本金8億円で3月決算法人)において、経理部長を務めております。

わが社は長らく首都圏郊外の住宅用地の造成及び販売に携わってきましたが、ここ20年程度にわたる働き盛りのサラリーマン層における郊外から都心回帰の動きにより、東京駅から電車で1時間半以上かかるような、わが社の扱っている類の戸建て住宅地の需要は冷え込むようになってきました。そのため、ここ10年くらいは東京23区内やその周辺の、東京駅まで1時間以内に立地する駅周辺の土地を購入し、その上に単身ないし夫婦子なし世帯向けの賃貸マンションを建設して、資産運用に意欲的な富裕層に購入してもらうビジネスに注力することで、わが社もなんとか息を吹き返してやっていけているところです。

さて、そのような中、わが社も先日来国税局の税務調査を受けていますが、そこで1点問題となっている事項があります。それは、他社が開発したゴルフ練習場用地につき、わが社が買収しその建設を引き継いで完成させた物件がありますが、調査官は、その買収の際に計上した営業権は専らゴルフ練習場の建物及び構築物という有形固定資産により構成されており、調査事業年度において当該練習場は未だ稼働していないことから、その減価償却費は損金算入できないと主張しております。私の考えでは、当社が計上した営業権はゴルフ練習場買収に伴い発生した超過収益力に基づく「のれん」であり、ゴルフ練習場は稼働していないもののその運営を行っている事業部は業務を開始しているため、減価償却が可能と考えております。この場合、法人税法上どのように考えるのが妥当なのでしょうか、教えてください。

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連載目次

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説

▷総論

● 法人税の課税所得計算と損金経理(その1~5)

▷事例解説

● 法人税の損金経理要件をめぐる事例解説【事例1~50】

・・・  以下、順次公開 ・・・

筆者紹介

安部 和彦

(あんべ・かずひこ)

税理士
和彩総合事務所 代表社員
拓殖大学商学部教授

東京大学卒業後、平成2年、国税庁入庁。
調査査察部調査課、名古屋国税局調査部、関東信越国税局資産税課、国税庁資産税課勤務を経て、外資系会計事務所へ移り、平成18年に安部和彦税理士事務所・和彩総合事務所を開設、現在に至る。
医師・歯科医師向け税務アドバイス、相続税を含む資産税業務及び国際税務を主たる業務分野としている。
平成23年4月、国際医療福祉大学大学院医療経営管理分野准教授に就任。
平成26年9月、一橋大学大学院国際企業戦略研究科経営法務専攻博士後期課程単位修得退学
平成27年3月、博士(経営法) 一橋大学
令和3年4月、国際医療福祉大学大学院医療経営管理分野教授に就任。
令和5年4月、拓殖大学商学部教授に就任。

【主要著書】
・『事例で解説 法人税の損金経理』(2024年・清文社)
・『三訂版 医療・福祉施設における消費税の実務』(2023年・清文社)
・『改訂 消費税 インボイス制度導入の実務』(2023年・清文社)
・『裁判例・裁決事例に学ぶ消費税の判定誤りと実務対応』(2020年・清文社)
・『消費税 軽減税率対応とインボイス制度 導入の実務』(2019年・清文社)
・『[第三版]税務調査と質問検査権の法知識Q&A』(2017年・清文社)
・『最新判例でつかむ固定資産税の実務』(2017年・清文社)
・『新版 税務調査事例からみる役員給与の実務Q&A』(2016年・清文社)
・『要点スッキリ解説 固定資産税』(2016年・清文社)
・『Q&Aでわかる消費税軽減税率のポイント』(2016年・清文社)
・『Q&A医療法人の事業承継ガイドブック』(2015年・清文社)
・『国際課税における税務調査対策Q&A』(2014年・清文社)
・『消費税[個別対応方式・一括比例配分方式]有利選択の実務』(2013年・清文社)
・『修正申告と更正の請求の対応と実務』(2013年・清文社)
・『税務調査の指摘事例からみる法人税・所得税・消費税の売上をめぐる税務』(2011年・清文社)
・『相続税調査であわてない「名義」財産の税務(第3版)』(2021年・中央経済社)
・『相続税調査であわてない不動産評価の税務』(2015年・中央経済社)
・『消費税の税務調査対策ケーススタディ』(2013年・中央経済社)
・『医療現場で知っておきたい税法の基礎知識』(2012年・税務経理協会)
・『事例でわかる病医院の税務・経営Q&A(第2版)』(2012年・税務経理協会)
・『Q&A 相続税の申告・調査・手続相談事例集』(2011年・税務経理協会)
・『ケーススタディ 中小企業のための海外取引の税務』(2020年・ぎょうせい)
・『消費税の税率構造と仕入税額控除』(2015年・白桃書房)

【ホームページ】
https://wasai-consultants.com

             

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