法人税の損金経理要件をめぐる事例解説
【事例29】
「ガソリンスタンドに対する売掛金の減額処理の寄附金該当性」
国際医療福祉大学大学院教授
税理士 安部 和彦
【Q】
私は、関西で石油製品卸売業を営むA株式会社で経理部長をしております。わが社が扱っている石油製品は主としてガソリンや灯油などの民生用エネルギーであり、特約店・販売店と呼ばれる石油販売業者を通じて一般消費者に販売されます。
わが国においては、少子高齢化の進行や人口減少、若者の自動車離れといった経済構造の変動に加え、昨年来の新型コロナウイルス感染症の蔓延という現象も相まって、わが社が扱っているガソリンや灯油の需要が低迷しており、その結果として、わが社の取引先である中小規模のガソリンスタンドの多くが経営危機に陥っております。そのような状況下において、取引先のガソリンスタンドの中には、わが社に対する債務の支払いが長期間滞っているばかりでなく、後継者難等で将来的にその経営状況が改善する見込みが極めて薄い特約店・販売店も存在することから、そのような特約店については、事業の継続を断念してもらい、代わりに廃業に伴い発生する様々な資金の援助を行うようにして、わが社が被る負担を最小限に留める方策を採っております。
ところが先日受けた税務調査で、経営危機に陥っている特約店等に対する売掛金について減額処理を行ったものにつき、回収可能性が消滅したわけではない当該売掛金を一方的に減額処理したとするわが社の税務処理が問題視され、単純な費用ではなく寄附金に該当することから、全額損金に算入することはできない旨言い渡されました。
わが社が売掛金を減額処理した特約店は、いずれも深刻な経営難に陥っており、経営者が高齢化して後継者も不在であることから、将来的にも経営が改善する見込みはないのであり、そのような特約店との取引をズルズル継続することは、更なる負担増につながることが懸念されるところです。そのような判断に基づき、特約店との話し合いにより行った廃業要請に伴う売掛金の減額処理は、わが社の事業遂行上、真にやむを得ない措置であり、税務上も寄附金に該当する余地はないものと理解しております。わが社の判断に問題がないか、アドバイスをお願いします。
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