法人税の損金経理要件をめぐる事例解説
【事例55】
「従業員に対する賞与の損金算入時期」
拓殖大学商学部教授
税理士 安部 和彦
【Q】
私は、近畿地方のある県庁所在地において、主として旅行者向けの土産物店や飲食店を営む株式会社X(資本金5,000万円で3月決算)に勤務し、現在総務部長を務めている者です。2020年以来のコロナ禍で、わが社がターゲットとするインバウンドの旅行客は激減し、一時は廃業やむなしという瀬戸際まで追い込まれました。そのため、インバウンド一本やりの経営戦略を改め、国内客の取り込みも必死になって行うとともに、政府の様々な支援策や社長の必死の資金策によりどうにかこうにかこの度の経営危機を乗り切り、今年は国内客のみならずインバウンドの旅行客もだいぶ戻ってきたため、お陰様で何とか一息つくことができました。
そんなわけで、ここ数年は多くの従業員を泣く泣く解雇したり、残ってもらった従業員にも満足に賞与を支給することもできず、非常に心苦しいところでしたが、昨年度末においてはようやく決算賞与を支払うことができるところまで業績が回復しました。久しぶりの賞与だったため、従業員も大いに喜んでくれたようです。
さて、そんな中、先日から受けている当社の法人税にかかる税務調査で、従業員に対する当該賞与が問題とされております。すなわち、従業員全員にその支給額について事業年度末日までに通知をし、その金額を同日において損金経理したものの、銀行からの融資が遅れた関係で、実際の支給の日が翌事業年度の5月10日となったことが問題なのだそうです。確かに、法人税法施行令第72条の3(旧第134条の2)には翌事業年度末から1月以内という要件が定められていますが、まず、支給が遅れたのは不可抗力であり十分正当な理由があること、また、法律の定める債務確定基準(法法22③二)は満たしているにもかかわらず、法律に定められていない付加的な要件を政令で定めることは租税法律主義に反し許されないこと、の2つの理由から、税務署側の主張には問題があると考えております。この点につき、法人税法上どのように考えるのが妥当なのでしょうか、教えてください。
この記事全文をご覧いただくには、プロフェッションネットワークの会員(プレミアム
会員又は一般会員)としてのログインが必要です。
通常、Profession Journalはプレミアム会員専用の閲覧サービスですので、プレミアム
会員のご登録をおすすめします。
プレミアム会員の方は下記ボタンからログインしてください。
プレミアム会員のご登録がお済みでない方は、下記ボタンから「プレミアム会員」を選択の上、お手続きください。