法人税の損金経理要件をめぐる事例解説
【事例56】
「有価証券評価損の誤計上に対する減額更正に係る嘆願書の効力」
拓殖大学商学部教授
税理士 安部 和彦
【Q】
私は、中部地方の政令指定都市に隣接する市において、主として光学医療機器の製造・販売を行う株式会社X(資本金30億円で3月決算)に勤務し、現在経理部長を務めている者です。医療機器は、分野によって異なりますが、海外の製品が強い分野があったり、逆にわが国のメーカーが強い分野があったりと様々な状況といえますが、わが社が扱う光学医療機器(医用光学機械)は、比較的わが国のメーカーが強い分野ではないかと思われます。そのため、わが社もこれまで順調に利益を計上し内部留保を積み上げてきましたが、その再投資先として同業ないし隣接する分野の他社の株式(いずれも上場企業)を購入してきたという経営トップの意思決定は、結果としてみれば、あまり適切ではなかったように思われます。
すなわち、それらの会社の業績が思わしくなく、明らかに当初の出資額よりも大幅に価値が減価しているところばかりとなってしまいました。無論、わが社も手をこまねいているばかりではなく、わが社の精鋭を出資先に何人も送り込んだりしましたが、結果として業績が上向くことはありませんでした。そのため、会計上、これらの出資先の帳簿価額を大幅に引き下げざるを得ず、税務上も泣く泣く評価損を計上することを余儀なくされました。
しかし、その後顧問税理士から国税庁の「上場有価証券の評価損に関するQ&A」(平成21年4月)を知らされ、その時点における出資先の今後の財務状態から更なる評価損の計上が可能である旨告げられましたが、減額更正の期限が徒過していたため(平成23年12月の改正前で請求期間は1年)、嘆願書により減額更正を依頼しました。
ところが、国税局の担当官は、わが社の場合税法に照らして評価損の計上が可能となる要件を満たしていないため、嘆願書にかかわらず減額更正はできないと言ってきました。当方は、国税庁の上記Q&A(特にQ3)により初めて、事業年度末においてその時点における出資先の今後の財務状態を検討すべきことを知ったのであり、確定申告時には当該Q&Aの存在自体を知らなかったため、検討することは物理的に不可能であるから、国税局の主張は不当と考えております。わが社の考え方で問題ないでしょうか、教えてください。
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