公開日: 2023/11/02 (掲載号:No.542)
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法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【事例57】「法人の支出に係る事業関連性と寄附金の損金性」

筆者: 安部 和彦

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説

【事例57】

「法人の支出に係る事業関連性と寄附金の損金性」

 

拓殖大学商学部教授
税理士 安部 和彦

 

【Q】

私は、九州地方の政令指定都市において、主として健康食品の製造・販売を行う株式会社X(資本金1億3,000万円で3月決算)に勤務し、現在総務部長を務めている者です。わが社の創業者Aは若い頃相当苦労したようで、地元宮崎県内の高校を卒業後福岡市に出て様々なアルバイトを経験し、その資金を元手にまずはゲームソフトの会社を立ち上げ、そこそこ成功したとのことです。しかし、従業員の巨額横領にあい当該ゲームソフトの会社は廃業を余儀なくされ、A自身も多額の借金を抱えることになったようです。その後、旅行先の韓国で出会った健康食品にほれ込み、その輸入販売を手掛けて再び会社経営を軌道に乗せ、現在に至っております。

わが社はその後、朝鮮人参の調達やその加工等を行う100%子会社を韓国に設立し、取引を行ってきましたが、ここ数年、当該子会社の業績が思わしくないため、わが社は親会社として様々な支援をしてきました。それに関し、今般の国税局の税務調査で問題となった事項があります。すなわち、2022年3月期に韓国の子会社に契約に基づき業務委託費として支出した2,400万円と、2023年3月期に同子会社に開発費として支出した3,000万円のいずれもが寄附金に該当し、また、それらの支出は国外関連者への寄附金であるため、全額損金不算入になると指摘されました。

わが社が韓国の子会社に対して支出した業務委託費と開発費は、子会社固有の営業能力や人材では収益を得られるような業務を獲得することができないため、やむを得ず親会社の業務の一部につきかなり無理をして委託したものであり、それは子会社に対する親会社の責任として当然のことをしたまでと考えます。したがって、契約自由の原則から、当該支出は業務の対価としての性格があるため、当然に経費・損金になるものと解しますが、法人税法上はどう考えるのが適切なのでしょうか、教えてください。

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法人税の損金経理要件をめぐる事例解説

【事例57】

「法人の支出に係る事業関連性と寄附金の損金性」

 

拓殖大学商学部教授
税理士 安部 和彦

 

【Q】

私は、九州地方の政令指定都市において、主として健康食品の製造・販売を行う株式会社X(資本金1億3,000万円で3月決算)に勤務し、現在総務部長を務めている者です。わが社の創業者Aは若い頃相当苦労したようで、地元宮崎県内の高校を卒業後福岡市に出て様々なアルバイトを経験し、その資金を元手にまずはゲームソフトの会社を立ち上げ、そこそこ成功したとのことです。しかし、従業員の巨額横領にあい当該ゲームソフトの会社は廃業を余儀なくされ、A自身も多額の借金を抱えることになったようです。その後、旅行先の韓国で出会った健康食品にほれ込み、その輸入販売を手掛けて再び会社経営を軌道に乗せ、現在に至っております。

わが社はその後、朝鮮人参の調達やその加工等を行う100%子会社を韓国に設立し、取引を行ってきましたが、ここ数年、当該子会社の業績が思わしくないため、わが社は親会社として様々な支援をしてきました。それに関し、今般の国税局の税務調査で問題となった事項があります。すなわち、2022年3月期に韓国の子会社に契約に基づき業務委託費として支出した2,400万円と、2023年3月期に同子会社に開発費として支出した3,000万円のいずれもが寄附金に該当し、また、それらの支出は国外関連者への寄附金であるため、全額損金不算入になると指摘されました。

わが社が韓国の子会社に対して支出した業務委託費と開発費は、子会社固有の営業能力や人材では収益を得られるような業務を獲得することができないため、やむを得ず親会社の業務の一部につきかなり無理をして委託したものであり、それは子会社に対する親会社の責任として当然のことをしたまでと考えます。したがって、契約自由の原則から、当該支出は業務の対価としての性格があるため、当然に経費・損金になるものと解しますが、法人税法上はどう考えるのが適切なのでしょうか、教えてください。

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連載目次

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説

▷総論

● 法人税の課税所得計算と損金経理(その1~5)

▷事例解説

● 法人税の損金経理要件をめぐる事例解説【事例1~50】

・・・  以下、順次公開 ・・・

筆者紹介

安部 和彦

(あんべ・かずひこ)

税理士
和彩総合事務所 代表社員
拓殖大学商学部教授

東京大学卒業後、平成2年、国税庁入庁。
調査査察部調査課、名古屋国税局調査部、関東信越国税局資産税課、国税庁資産税課勤務を経て、外資系会計事務所へ移り、平成18年に安部和彦税理士事務所・和彩総合事務所を開設、現在に至る。
医師・歯科医師向け税務アドバイス、相続税を含む資産税業務及び国際税務を主たる業務分野としている。
平成23年4月、国際医療福祉大学大学院医療経営管理分野准教授に就任。
平成26年9月、一橋大学大学院国際企業戦略研究科経営法務専攻博士後期課程単位修得退学
平成27年3月、博士(経営法) 一橋大学
令和3年4月、国際医療福祉大学大学院医療経営管理分野教授に就任。
令和5年4月、拓殖大学商学部教授に就任。

【主要著書】
・『事例で解説 法人税の損金経理』(2024年・清文社)
・『三訂版 医療・福祉施設における消費税の実務』(2023年・清文社)
・『改訂 消費税 インボイス制度導入の実務』(2023年・清文社)
・『裁判例・裁決事例に学ぶ消費税の判定誤りと実務対応』(2020年・清文社)
・『消費税 軽減税率対応とインボイス制度 導入の実務』(2019年・清文社)
・『[第三版]税務調査と質問検査権の法知識Q&A』(2017年・清文社)
・『最新判例でつかむ固定資産税の実務』(2017年・清文社)
・『新版 税務調査事例からみる役員給与の実務Q&A』(2016年・清文社)
・『要点スッキリ解説 固定資産税』(2016年・清文社)
・『Q&Aでわかる消費税軽減税率のポイント』(2016年・清文社)
・『Q&A医療法人の事業承継ガイドブック』(2015年・清文社)
・『国際課税における税務調査対策Q&A』(2014年・清文社)
・『消費税[個別対応方式・一括比例配分方式]有利選択の実務』(2013年・清文社)
・『修正申告と更正の請求の対応と実務』(2013年・清文社)
・『税務調査の指摘事例からみる法人税・所得税・消費税の売上をめぐる税務』(2011年・清文社)
・『相続税調査であわてない「名義」財産の税務(第3版)』(2021年・中央経済社)
・『相続税調査であわてない不動産評価の税務』(2015年・中央経済社)
・『消費税の税務調査対策ケーススタディ』(2013年・中央経済社)
・『医療現場で知っておきたい税法の基礎知識』(2012年・税務経理協会)
・『事例でわかる病医院の税務・経営Q&A(第2版)』(2012年・税務経理協会)
・『Q&A 相続税の申告・調査・手続相談事例集』(2011年・税務経理協会)
・『ケーススタディ 中小企業のための海外取引の税務』(2020年・ぎょうせい)
・『消費税の税率構造と仕入税額控除』(2015年・白桃書房)

【ホームページ】
https://wasai-consultants.com

             

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