法人税の損金経理要件をめぐる事例解説
【事例57】
「法人の支出に係る事業関連性と寄附金の損金性」
拓殖大学商学部教授
税理士 安部 和彦
【Q】
私は、九州地方の政令指定都市において、主として健康食品の製造・販売を行う株式会社X(資本金1億3,000万円で3月決算)に勤務し、現在総務部長を務めている者です。わが社の創業者Aは若い頃相当苦労したようで、地元宮崎県内の高校を卒業後福岡市に出て様々なアルバイトを経験し、その資金を元手にまずはゲームソフトの会社を立ち上げ、そこそこ成功したとのことです。しかし、従業員の巨額横領にあい当該ゲームソフトの会社は廃業を余儀なくされ、A自身も多額の借金を抱えることになったようです。その後、旅行先の韓国で出会った健康食品にほれ込み、その輸入販売を手掛けて再び会社経営を軌道に乗せ、現在に至っております。
わが社はその後、朝鮮人参の調達やその加工等を行う100%子会社を韓国に設立し、取引を行ってきましたが、ここ数年、当該子会社の業績が思わしくないため、わが社は親会社として様々な支援をしてきました。それに関し、今般の国税局の税務調査で問題となった事項があります。すなわち、2022年3月期に韓国の子会社に契約に基づき業務委託費として支出した2,400万円と、2023年3月期に同子会社に開発費として支出した3,000万円のいずれもが寄附金に該当し、また、それらの支出は国外関連者への寄附金であるため、全額損金不算入になると指摘されました。
わが社が韓国の子会社に対して支出した業務委託費と開発費は、子会社固有の営業能力や人材では収益を得られるような業務を獲得することができないため、やむを得ず親会社の業務の一部につきかなり無理をして委託したものであり、それは子会社に対する親会社の責任として当然のことをしたまでと考えます。したがって、契約自由の原則から、当該支出は業務の対価としての性格があるため、当然に経費・損金になるものと解しますが、法人税法上はどう考えるのが適切なのでしょうか、教えてください。
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