公開日: 2024/11/07 (掲載号:No.593)
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法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【事例68】「法人の支出する飲食費等のうち交際費等に該当するものの判断基準」

筆者: 安部 和彦

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説

【事例68】

「法人の支出する飲食費等のうち交際費等に該当するものの判断基準」

 

拓殖大学商学部教授
税理士 安部 和彦

 

【Q】

私は、近畿地方のある県庁所在地で広告業を営む株式会社Z(資本金5,000万円で3月決算法人)において、総務部長を務めております。わが社は大手広告代理店に勤務していた現社長が20年前に起業した会社であり、創業当時はTVCM制作の下請け業務が主でしたが、現在は企業や大学、医療機関のブランディングの企画立案が主たる業務となっております。

企業や大学のブランディングとは、一言でいえば顧客となる企業や大学の知名度やイメージを引き上げることであり、それを通じて企業の製品の売上増や大学の学生獲得増に貢献する活動であるといえます。近年はマスメディアやTVCMを通じた企業・製品の広告宣伝活動よりも、webやSNSによるマーケティング活動のほうがより効果的というのが、わが業界の常識となりつつあります。ご承知の通り、大学は少子化の波をもろに受け、中堅以下の私立大学はその存続が危ぶまれるほど学生募集に苦慮しており、その生き残り戦略としてブランディングの確立が急務となっております。そのため、企業や大学からのSNSによる効果的なブランディングを行ってほしいという依頼が急増しており、それが現在のわが社の稼ぎ頭となっております。

そのような中、最近税務署の税務調査を受け、交際費に関する指摘を執拗に受けております。すなわち、わが社は中小法人に該当し、当初申告では法人税の取扱い上損金算入が認められる上限に達しない金額の交際費のみ計上していたのですが、申告を見直したところその金額が増加したため、更正の請求を行いました。ところが税務署は、追加計上した部分の金額につき、「特定の取引先の社長や大学の理事との飲食費が突出して多いが、これはプライベートな飲食であり個人で負担すべき支出ではないか」と難癖をつけてくるのです。業務を発注し合う間柄の取引先との飲食費が交際費にならないというのは、社会通念に反するトンデモ理論だと思うのですが、税法の解釈はどうなるのでしょうか、教えてください。

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法人税の損金経理要件をめぐる事例解説

【事例68】

「法人の支出する飲食費等のうち交際費等に該当するものの判断基準」

 

拓殖大学商学部教授
税理士 安部 和彦

 

【Q】

私は、近畿地方のある県庁所在地で広告業を営む株式会社Z(資本金5,000万円で3月決算法人)において、総務部長を務めております。わが社は大手広告代理店に勤務していた現社長が20年前に起業した会社であり、創業当時はTVCM制作の下請け業務が主でしたが、現在は企業や大学、医療機関のブランディングの企画立案が主たる業務となっております。

企業や大学のブランディングとは、一言でいえば顧客となる企業や大学の知名度やイメージを引き上げることであり、それを通じて企業の製品の売上増や大学の学生獲得増に貢献する活動であるといえます。近年はマスメディアやTVCMを通じた企業・製品の広告宣伝活動よりも、webやSNSによるマーケティング活動のほうがより効果的というのが、わが業界の常識となりつつあります。ご承知の通り、大学は少子化の波をもろに受け、中堅以下の私立大学はその存続が危ぶまれるほど学生募集に苦慮しており、その生き残り戦略としてブランディングの確立が急務となっております。そのため、企業や大学からのSNSによる効果的なブランディングを行ってほしいという依頼が急増しており、それが現在のわが社の稼ぎ頭となっております。

そのような中、最近税務署の税務調査を受け、交際費に関する指摘を執拗に受けております。すなわち、わが社は中小法人に該当し、当初申告では法人税の取扱い上損金算入が認められる上限に達しない金額の交際費のみ計上していたのですが、申告を見直したところその金額が増加したため、更正の請求を行いました。ところが税務署は、追加計上した部分の金額につき、「特定の取引先の社長や大学の理事との飲食費が突出して多いが、これはプライベートな飲食であり個人で負担すべき支出ではないか」と難癖をつけてくるのです。業務を発注し合う間柄の取引先との飲食費が交際費にならないというのは、社会通念に反するトンデモ理論だと思うのですが、税法の解釈はどうなるのでしょうか、教えてください。

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連載目次

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説

▷総論

● 法人税の課税所得計算と損金経理(その1~5)

▷事例解説

● 法人税の損金経理要件をめぐる事例解説【事例1~50】

・・・  以下、順次公開 ・・・

筆者紹介

安部 和彦

(あんべ・かずひこ)

税理士
和彩総合事務所 代表社員
拓殖大学商学部教授

東京大学卒業後、平成2年、国税庁入庁。
調査査察部調査課、名古屋国税局調査部、関東信越国税局資産税課、国税庁資産税課勤務を経て、外資系会計事務所へ移り、平成18年に安部和彦税理士事務所・和彩総合事務所を開設、現在に至る。
医師・歯科医師向け税務アドバイス、相続税を含む資産税業務及び国際税務を主たる業務分野としている。
平成23年4月、国際医療福祉大学大学院医療経営管理分野准教授に就任。
平成26年9月、一橋大学大学院国際企業戦略研究科経営法務専攻博士後期課程単位修得退学
平成27年3月、博士(経営法) 一橋大学
令和3年4月、国際医療福祉大学大学院医療経営管理分野教授に就任。
令和5年4月、拓殖大学商学部教授に就任。

【主要著書】
・『事例で解説 法人税の損金経理』(2024年・清文社)
・『三訂版 医療・福祉施設における消費税の実務』(2023年・清文社)
・『改訂 消費税 インボイス制度導入の実務』(2023年・清文社)
・『裁判例・裁決事例に学ぶ消費税の判定誤りと実務対応』(2020年・清文社)
・『消費税 軽減税率対応とインボイス制度 導入の実務』(2019年・清文社)
・『[第三版]税務調査と質問検査権の法知識Q&A』(2017年・清文社)
・『最新判例でつかむ固定資産税の実務』(2017年・清文社)
・『新版 税務調査事例からみる役員給与の実務Q&A』(2016年・清文社)
・『要点スッキリ解説 固定資産税』(2016年・清文社)
・『Q&Aでわかる消費税軽減税率のポイント』(2016年・清文社)
・『Q&A医療法人の事業承継ガイドブック』(2015年・清文社)
・『国際課税における税務調査対策Q&A』(2014年・清文社)
・『消費税[個別対応方式・一括比例配分方式]有利選択の実務』(2013年・清文社)
・『修正申告と更正の請求の対応と実務』(2013年・清文社)
・『税務調査の指摘事例からみる法人税・所得税・消費税の売上をめぐる税務』(2011年・清文社)
・『相続税調査であわてない「名義」財産の税務(第3版)』(2021年・中央経済社)
・『相続税調査であわてない不動産評価の税務』(2015年・中央経済社)
・『消費税の税務調査対策ケーススタディ』(2013年・中央経済社)
・『医療現場で知っておきたい税法の基礎知識』(2012年・税務経理協会)
・『事例でわかる病医院の税務・経営Q&A(第2版)』(2012年・税務経理協会)
・『Q&A 相続税の申告・調査・手続相談事例集』(2011年・税務経理協会)
・『ケーススタディ 中小企業のための海外取引の税務』(2020年・ぎょうせい)
・『消費税の税率構造と仕入税額控除』(2015年・白桃書房)

【ホームページ】
https://wasai-consultants.com

             

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