日本の企業税制
【第20回】
「BEPS行動8:価格付けが困難な無形資産」
一般社団法人日本経済団体連合会
常務理事 阿部 泰久
1 はじめに
2 公開討議草案の概要
3 公開討議草案の問題点
4 おわりに
1 はじめに
OECD租税委員会は、6月4日、移転価格ガイドライン改定作業の中で残されていた重要な課題である「BEPS行動8:価格付けが困難な無形資産」に関する公開討議草案を公表した。
公開討議草案は、価格付けが困難な無形資産に係るアプローチを開発するとの行動8の要請に対応し、OECD移転価格ガイドライン第6章D.3の改訂を提案するものであり、わが国の移転価格課税にも重要な影響をもたらすものとなる。
そこで、本稿では、公開討議草案の概要と、その問題点を整理しておきたい。
2 公開討議草案の概要
公開討議草案は、関連者間での一定の無形資産の譲渡(無形資産に係る権利の譲渡を含む)については譲渡時の価格設定が信頼できない、すなわち、比較対象取引がなく、価格付けの基礎となるprojectionその他の情報が納税者の説明に拠らざるを得ず、当局と納税者の間で情報の非対称が顕著であるため、独立企業間であればそのような譲渡については事後的な価格調整メカニズムや契約再交渉メカニズムを講じることもあるとの想定のもと、一定の要件に合致する場合は、譲渡後の結果に基づき、当局による調整メカニズムの発動を許容する。
調整メカニズムの対象となるHTVI(Hard-to-value intangibles)とは、譲渡時に信頼できる比較対象取引がなく、信頼できるprojectionが欠如し又は想定が高度に不確かな無形資産をカバーするものとされ、その具体的な特徴として、以下のような点が示されている。
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