法人税の損金経理要件をめぐる事例解説
【事例13】
「従業員への慰安目的で実施する「感謝の夕べ」に要する費用の損金性」
国際医療福祉大学大学院准教授
税理士 安部 和彦
【Q】
私は九州地方の政令指定都市で、食品の製造販売を行っている資本金5億円の株式会社Aで総務部長兼経理部長を務めております。わが社は一昨年に創業50周年を迎え、ここ数年は業績も堅調であったことから、昨年3月の決算期前の週末に、全従業員(子会社を含め概ね500名程度)を対象に大分県の温泉旅館を貸し切って一泊2日の「感謝の夕べ」を開催しました。
当該「感謝の夕べ」においては、「従業員こそわが社の最大の資産」という現社長の考えから、日ごろの従業員の労苦に報いるとともに、リフレッシュして翌期以後の更なる業績向上につなげる目的で、バスをチャーターして温泉旅館を訪れ、温泉につかったあと夜は山海の珍味に舌鼓を打ちながらプロの芸人によるコントやものまねのショーが執り行われました。また、翌日は旅館で朝食をとった後、バスで会社に戻り解散するというスケジュールとなりました。当日の参加者は全従業員の9割を超え、帰社後にとったアンケートの回答の多くは「仕事へのモチベーション向上につながった」と肯定的なものであったため、福利厚生を担当する総務部長としても、今回の「感謝の夕べ」は大成功であったと自負しております。
わが社においては、昨年3月期の法人税の申告に関し、上記「感謝の夕べ」に要した諸費用をすべて福利厚生費として損金算入しておりました。ところが、先日受けた税務調査で調査官は、従業員は租税特別措置法第61条の4第4項にいう「その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等」に該当し、かつ、その金額が総額約1,200万円と高額であることから、同条第3項の「通常要する費用」の範囲を超えているため、交際費等に該当するとして、全額損金不算入となる旨言い渡されました。
私は入社以来経理一筋で30年のキャリアがありますが、これまでの経験と同業者との勉強会等で得た知識から、わが社が行うような全従業員を対象とした慰安目的の「感謝の夕べ」は、まさに福利厚生費そのものであり、交際費と解する余地はないものと認識しております。また、金額が高額であることを問題としているようですが、総額は確かに1,200万円と目立つ支出といえますが、参加者1人当たりに直せば約24,000円に過ぎず、交通費を含めた一泊旅行としては比較的リーズナブルといえます。したがって、当該支出は「通常要する費用」の観点からも交際費には該当しないものと考えられますが、いかがでしょうか。
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