法人税の損金経理要件をめぐる事例解説
【事例45】
「競走馬を保有する法人における見舞金相当額の経理方法」
国際医療福祉大学大学院教授
税理士 安部 和彦
【Q】
私は、関東北部においてホームセンターを運営する株式会社X(資本金91,000万円の3月決算法人)で総務部長を務めております。わが社は元々総合商社に勤務していた社長が20年前に創業した会社で、地元の農家に対し、農協では買えないけれども必要な機材を提供して事業基盤を固めたのち、一般家庭向けのDIYグッズを販売して一気に事業を拡大して、現在は北関東一円に30店舗を展開するまでになりました。最近は、キャンプグッズやアウトドア向けの安価なアパレルがヒットし、いよいよ東京にも進出しようかという勢いを感じているところです。
ところで、わが社の社長はここ数年、富裕層の間ではひそかに流行しているようですが、競走馬の保有、すなわち馬主としての活動に相当程度力を注いでいます。JRAによれば、馬主には個人、組合及び法人の3種類があり、社長は個人のみならず法人でも馬主になっております。法人馬主は、その代表者が個人馬主として一定の活動を経なければならないようで、個人馬主として相当の金額をつぎ込んだのち、ようやく念願の法人馬主となったのだと喜んでいました。社長によれば、法人馬主となると、交際の幅も広がるとのことで、本業の事業展開、中でも出店先の不動産に関する情報収集に有利に働いているということです。
そんな中、最近わが社は税務調査を受け、法人馬主の件が問題となっております。すなわち、わが社は法人馬主として数頭の競走馬を保有しているわけですが、全頭が順調にレースに出馬して賞金を獲得しているというわけではなく、中には調教中やレース中にケガや事故が起こることがあり、その場合には事故見舞金が支払われます。また、ケガの程度によっては競走馬として活動することは困難であり、牝馬であれば繁殖用の牝馬に転用することもあり、その場合も見舞金が支払われます。
今回問題となったのは、繁殖牝馬に転用した馬に対する見舞金の処理で、当社は見舞金相当額と馬の減価償却費を相殺計上し、結果として益金にも損金にも何ら計上していません。国税局の調査官は、見舞金を益金に計上するとともに、減価償却費を損金経理して計上するのが正しい経理処理であり、それを怠ったX社は減価償却費を計上できないと主張します。経理処理のしかたで課税関係が変わることは納得がいないのですが、どう考えるべきなのでしょうか、教えてください。
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