法人税の損金経理要件をめぐる事例解説
【事例51】
「法人代表者の配偶者が経営する法人に対する交際費の損金性」
拓殖大学商学部教授
税理士 安部 和彦
【Q】
私は、北海道及び東北地方において飲食店業を営む株式会社X(資本金8,000万円)において、総務部長を務めております。飲食店業は大手チェーン店から個人経営の店に至るまで、政府の様々な支援策にもかかわらず、コロナ禍で壊滅的な打撃を受けた業種として知られております。
ところが、幸いわが社はその中でも比較的ダメージが小さかった、黒毛和牛の食べ放題を売りにした焼肉店を展開していたことから、ここ数年も業績は堅調で、むしろ同業他社が撤退した店舗を居抜きで買い取るなどして、店舗数を増加させているところです。これは、わが社の創業者で現在も代表取締役を務めるA(Xの株式の50%超を保有)の力量と先見性の賜物であると、従業員一同感服しているところです。
ところで、Aの経営者としての能力については疑うところはないのですが、人柄というか器量にはいささか問題があることは認めざるを得ません。Aは悪い意味での「昭和の価値観」に染まっており、表に出ない(出せない)ハラスメントの類も少なくなく、私はいさめる立場でありますが、天狗状態のAとその被害を受けている従業員との間に立って右往左往しており、日々非常にストレスが溜まっております。
そんな中、税務調査で新たな問題が判明しました。すなわち、Aはバツイチなのですが、前の夫人に対して毎月多額の養育費を支払っていることを今の夫人Cが快く思っていないことを気に掛けていて、今の夫人Cに対して様々な資金援助を行っているうち、自らのポケットマネーだけでは足りなくなり、会社の金に手を付けたのです。方法としては、Cが代表取締役を務め唯一の出資者である合同会社Yが運営する和食店において年間50回ほど会食した金額につき、Xがその支出した金額を交際費として経理しているというものです。
問題は、この会食はほぼ毎回AとCのみで行われているところで、税務署の調査官は、当該行為は通常の経済人の行為として不自然・不合理であるから、法人税法132条の規定により損金算入ができない旨指摘してきました。Aはこの指摘に激怒し、訴訟も辞さないと息巻いておりますが、当方は無駄な争いには巻き込まれたくないと考えております。税法上はどのように解するのが正当なのでしょうか、教えてください。
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