公開日: 2025/01/09 (掲載号:No.601)
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法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【事例70】「使用人に対する決算賞与の損金算入時期」

筆者: 安部 和彦

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説

【事例70】

「使用人に対する決算賞与の損金算入時期」

 

拓殖大学商学部教授
税理士 安部 和彦

 

【Q】

私は、九州地方のある県庁所在地に本社を構え家具の製造販売及び輸出入等の事業を営む株式会社X(資本金3億円で3月決算法人)において、総務部長を務めております。

九州地方は昔から家具製造が盛んな地域で、当社も自社製造の家具を地元向けのみならず全国各地に販売して業績を伸ばしてきました。ところが最近、わが国の家具業界は衰退しているのではないかという見方が根強くあります。確かに少子高齢化や人口減少が進むわが国において、新築住宅の着工数が減少し、特に大型家具の需要が縮小しているのは事実であると思われます。そのような経済情勢の中、家具業界全体の売上も減少傾向が見られますが、これだけで業界全体が衰退していると判断するのは、必ずしも妥当とはいえません。

例えば、ニトリのような業界の大手企業は、低価格で高品質な家庭用の家具を提供することで幅広い層から支持を得て業績を伸ばしています。これらの大手企業は、商品の企画から製造、販売までを一貫して行うことでコストを削減し、競争力を高めています。また、当該企業は法人向けの事業を強化し、オフィス家具や店舗用家具などの需要に応えることで新たな収益源を確保しています。さらに、高級家具市場では、海外ブランドの企業が高いデザイン性や機能性に優れた製品を提供することで、特定のニッチ市場をターゲットにし、高い収益力を確保しています。

そのような中、わが社は、地域密着型の家具製造・販売企業として独自の価値を提供するというマーケティング戦略を採っています。すなわち、地元のニーズに合わせたオーダーメイド家具や修理サービスなどを提供することで、地域の、法人を含む幅広い顧客からの信頼を得るべく必死で生き残りを図っているところです。

さて、そのようなわが社に最近税務調査が入り、新たな頭痛の種となっております。国税局の調査官によれば、従業員に対する決算賞与につき、政令に定める要件を満たしていないとして、損金算入が認められなかったのです。決算期末までに人事部が賞与の支給を全従業員に通知しており、債務が確定しているにもかかわらず、損金算入を認めないのは不当だと思うのですが、税法上どのように考えるのが正当なのでしょうか、教えてください。

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法人税の損金経理要件をめぐる事例解説

【事例70】

「使用人に対する決算賞与の損金算入時期」

 

拓殖大学商学部教授
税理士 安部 和彦

 

【Q】

私は、九州地方のある県庁所在地に本社を構え家具の製造販売及び輸出入等の事業を営む株式会社X(資本金3億円で3月決算法人)において、総務部長を務めております。

九州地方は昔から家具製造が盛んな地域で、当社も自社製造の家具を地元向けのみならず全国各地に販売して業績を伸ばしてきました。ところが最近、わが国の家具業界は衰退しているのではないかという見方が根強くあります。確かに少子高齢化や人口減少が進むわが国において、新築住宅の着工数が減少し、特に大型家具の需要が縮小しているのは事実であると思われます。そのような経済情勢の中、家具業界全体の売上も減少傾向が見られますが、これだけで業界全体が衰退していると判断するのは、必ずしも妥当とはいえません。

例えば、ニトリのような業界の大手企業は、低価格で高品質な家庭用の家具を提供することで幅広い層から支持を得て業績を伸ばしています。これらの大手企業は、商品の企画から製造、販売までを一貫して行うことでコストを削減し、競争力を高めています。また、当該企業は法人向けの事業を強化し、オフィス家具や店舗用家具などの需要に応えることで新たな収益源を確保しています。さらに、高級家具市場では、海外ブランドの企業が高いデザイン性や機能性に優れた製品を提供することで、特定のニッチ市場をターゲットにし、高い収益力を確保しています。

そのような中、わが社は、地域密着型の家具製造・販売企業として独自の価値を提供するというマーケティング戦略を採っています。すなわち、地元のニーズに合わせたオーダーメイド家具や修理サービスなどを提供することで、地域の、法人を含む幅広い顧客からの信頼を得るべく必死で生き残りを図っているところです。

さて、そのようなわが社に最近税務調査が入り、新たな頭痛の種となっております。国税局の調査官によれば、従業員に対する決算賞与につき、政令に定める要件を満たしていないとして、損金算入が認められなかったのです。決算期末までに人事部が賞与の支給を全従業員に通知しており、債務が確定しているにもかかわらず、損金算入を認めないのは不当だと思うのですが、税法上どのように考えるのが正当なのでしょうか、教えてください。

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連載目次

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説

▷総論

● 法人税の課税所得計算と損金経理(その1~5)

▷事例解説

● 法人税の損金経理要件をめぐる事例解説【事例1~50】

・・・  以下、順次公開 ・・・

筆者紹介

安部 和彦

(あんべ・かずひこ)

税理士
和彩総合事務所 代表社員
拓殖大学商学部教授

東京大学卒業後、平成2年、国税庁入庁。
調査査察部調査課、名古屋国税局調査部、関東信越国税局資産税課、国税庁資産税課勤務を経て、外資系会計事務所へ移り、平成18年に安部和彦税理士事務所・和彩総合事務所を開設、現在に至る。
医師・歯科医師向け税務アドバイス、相続税を含む資産税業務及び国際税務を主たる業務分野としている。
平成23年4月、国際医療福祉大学大学院医療経営管理分野准教授に就任。
平成26年9月、一橋大学大学院国際企業戦略研究科経営法務専攻博士後期課程単位修得退学
平成27年3月、博士(経営法) 一橋大学
令和3年4月、国際医療福祉大学大学院医療経営管理分野教授に就任。
令和5年4月、拓殖大学商学部教授に就任。

【主要著書】
・『事例で解説 法人税の損金経理』(2024年・清文社)
・『三訂版 医療・福祉施設における消費税の実務』(2023年・清文社)
・『改訂 消費税 インボイス制度導入の実務』(2023年・清文社)
・『裁判例・裁決事例に学ぶ消費税の判定誤りと実務対応』(2020年・清文社)
・『消費税 軽減税率対応とインボイス制度 導入の実務』(2019年・清文社)
・『[第三版]税務調査と質問検査権の法知識Q&A』(2017年・清文社)
・『最新判例でつかむ固定資産税の実務』(2017年・清文社)
・『新版 税務調査事例からみる役員給与の実務Q&A』(2016年・清文社)
・『要点スッキリ解説 固定資産税』(2016年・清文社)
・『Q&Aでわかる消費税軽減税率のポイント』(2016年・清文社)
・『Q&A医療法人の事業承継ガイドブック』(2015年・清文社)
・『国際課税における税務調査対策Q&A』(2014年・清文社)
・『消費税[個別対応方式・一括比例配分方式]有利選択の実務』(2013年・清文社)
・『修正申告と更正の請求の対応と実務』(2013年・清文社)
・『税務調査の指摘事例からみる法人税・所得税・消費税の売上をめぐる税務』(2011年・清文社)
・『相続税調査であわてない「名義」財産の税務(第3版)』(2021年・中央経済社)
・『相続税調査であわてない不動産評価の税務』(2015年・中央経済社)
・『消費税の税務調査対策ケーススタディ』(2013年・中央経済社)
・『医療現場で知っておきたい税法の基礎知識』(2012年・税務経理協会)
・『事例でわかる病医院の税務・経営Q&A(第2版)』(2012年・税務経理協会)
・『Q&A 相続税の申告・調査・手続相談事例集』(2011年・税務経理協会)
・『ケーススタディ 中小企業のための海外取引の税務』(2020年・ぎょうせい)
・『消費税の税率構造と仕入税額控除』(2015年・白桃書房)

【ホームページ】
https://wasai-consultants.com

             

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