法人税の損金経理要件をめぐる事例解説
【事例70】
「使用人に対する決算賞与の損金算入時期」
拓殖大学商学部教授
税理士 安部 和彦
【Q】
私は、九州地方のある県庁所在地に本社を構え家具の製造販売及び輸出入等の事業を営む株式会社X(資本金3億円で3月決算法人)において、総務部長を務めております。
九州地方は昔から家具製造が盛んな地域で、当社も自社製造の家具を地元向けのみならず全国各地に販売して業績を伸ばしてきました。ところが最近、わが国の家具業界は衰退しているのではないかという見方が根強くあります。確かに少子高齢化や人口減少が進むわが国において、新築住宅の着工数が減少し、特に大型家具の需要が縮小しているのは事実であると思われます。そのような経済情勢の中、家具業界全体の売上も減少傾向が見られますが、これだけで業界全体が衰退していると判断するのは、必ずしも妥当とはいえません。
例えば、ニトリのような業界の大手企業は、低価格で高品質な家庭用の家具を提供することで幅広い層から支持を得て業績を伸ばしています。これらの大手企業は、商品の企画から製造、販売までを一貫して行うことでコストを削減し、競争力を高めています。また、当該企業は法人向けの事業を強化し、オフィス家具や店舗用家具などの需要に応えることで新たな収益源を確保しています。さらに、高級家具市場では、海外ブランドの企業が高いデザイン性や機能性に優れた製品を提供することで、特定のニッチ市場をターゲットにし、高い収益力を確保しています。
そのような中、わが社は、地域密着型の家具製造・販売企業として独自の価値を提供するというマーケティング戦略を採っています。すなわち、地元のニーズに合わせたオーダーメイド家具や修理サービスなどを提供することで、地域の、法人を含む幅広い顧客からの信頼を得るべく必死で生き残りを図っているところです。
さて、そのようなわが社に最近税務調査が入り、新たな頭痛の種となっております。国税局の調査官によれば、従業員に対する決算賞与につき、政令に定める要件を満たしていないとして、損金算入が認められなかったのです。決算期末までに人事部が賞与の支給を全従業員に通知しており、債務が確定しているにもかかわらず、損金算入を認めないのは不当だと思うのですが、税法上どのように考えるのが正当なのでしょうか、教えてください。
この記事全文をご覧いただくには、プロフェッションネットワークの会員登録およびログインが必要です。
通常、Profession Journalの記事閲覧はプレミアム会員専用のサービスですので、プレミアム会員でのご登録をおすすめします。
プレミアム会員の方は下記ボタンからログインしてください。
プレミアム会員のご登録がお済みでない方は、下記ボタンから「プレミアム会員」を選択の上、お手続きください。