法人税の損金経理要件をめぐる事例解説
【事例39】
「役員退職給与の支払時における損金算入」
国際医療福祉大学大学院教授
税理士 安部 和彦
【Q】
私は、中国地方において海産物の製造・販売業を営む株式会社Aにおいて経理部長を務めております。当社は大正時代に創業し、創業者のBが日本料理の味付けに必須のだしを取るのに便利な削り節を他社に先駆けて製造・販売したことから、戦前・戦後にかけてそれなりの企業規模にまで成長しました。
現在は、上場こそしていませんが、製品の品質について、日本料理のプロからご家庭まで幅広くご支持・ご愛顧をいただいておりまして、お陰様で日本全国のスーパーや百貨店に自社製品を販売しており、業界内では確固たる地位を築いているものと自負しております。
本社は創業の地である中国地方にありますが、工場は全国に3ヶ所、営業所は北海道から九州まで12ヶ所に展開しており、百貨店や駅ビルに直営店も5店舗ほど出しております。
ところで、当社は創業家のCから代々社長を出していますが、創業家は専ら経営に専念しており、自社製品の開発はたたき上げの技術者によって行われております。数年前に、このようなたたき上げの製品開発責任者である取締役Dが退任し、それに際して当社は規定に従い、退職慰労金を支払っております。Dに対する役員退職慰労金は、当社の株主総会決議を経て、取締役会でその金額等に関する決議を行うことで支払うこととなっておりましたが、あいにく取引銀行との間でトラブルがあり、メインバンクを急遽変更することになったため、当初支払う事業年度の翌事業年度に実際の支払いを行うこととなりました。
これ自体はよくあることのように思われますし、租税回避の意図など全くないばかりでなく、源泉徴収も支払時に行っております。ところが、なぜか先週来当社にやってきて税務調査を行っている調査官は、当該役員退職慰労金につき、取締役会の決議により金額が確定した事業年度の損金とすべきと主張して譲りません。当社は当然のことながら、資金繰りがついて実際に退職慰労金を支払った事業年度の損金とすべきと主張しておりますが、これでよろしいでしょうか、教えてください。
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