法人税の損金経理要件をめぐる事例解説
【事例50】
「公益社団法人に移行した法人の職員に対する賞与の損金性」
国際医療福祉大学大学院教授
税理士 安部 和彦
【Q】
私は、近畿地方においていくつかの医療機関や福祉施設を運営する公益社団法人Xにおいて、事務方のトップである事務長を務めております。わが国においては、医療機関は様々な経営主体が経営しており、具体的には、地方自治体や独立行政法人、国立大学法人や公立大学法人、日本赤十字社といった公的機関もあれば、厚生労働省が管轄する法律に基づいて設立される医療法人(医療法)や社会福祉法人(社会福祉法)、私立大学医学部付属病院を経営する学校法人などがあり、それぞれ適用される会計ルールが異なるなど、かなり混沌とした状況となっております。私の勤務する公益社団法人は、いわゆる公益法人改革で社団法人から移行した組織で、もともと医療機関や福祉施設を運営していましたが、今から数年前に、より公益性を貫徹した組織に改組され、現在に至っております。
わが法人が運営する事業の中核は病院で、中でも回復期・リハビリテーションに力を入れているY病院は、当該病院が立地する2次医療圏でも定評があり、集患にはそれほど苦労しておりません。そのため、ここ数年続くコロナ禍の下においても、法人全体の経営状況は比較的順調であるといえます。
ところが、そのような黒字体質の当法人を狙い撃ちしたのか、先日から所轄税務署の税務調査を受けております。今回問題となっているのは、公益社団法人移行後に職員に支給した賞与の取扱いです。当法人は給与規定を職員に開示しており、それには給与のほか賞与を予定日に支給する旨が明記されております。そのため、当該規定に基づき既に支給予定日が到来している賞与は、当然のことながら全額損金に算入されるものと考えておりましたが、今回調査官は、未払計上した賞与の額につき、当該賞与支給額が決算日以後に職員に通知されていることから、当該事業年度における損金算入は認められないと主張しております。
このような調査官の主張は民間の事業に対する不当な介入であり、到底認められるものではないと考えておりますが、税法上どのように考えるのが妥当なのでしょうか、教えてください。
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