法人税の損金経理要件をめぐる事例解説
【事例63】
「個人間契約の貸付金を法人間契約に変更した場合の貸倒償却の是非」
拓殖大学商学部教授
税理士 安部 和彦
【Q】
私は、関東甲信越地方のある都市に本社を置き、首都圏を中心にフラワーショップを10店舗程度展開する株式会社X(資本金1,000万円で3月決算)に勤務しており、現在経理部長を務めております。わが業界は小規模で個人経営の店が個人客向けに花卉を販売する形態が大半を占めており、最大手であっても全国で200店弱(シェア1%強)というチェーン展開が難しい業界であるとされています。その主たる理由は、扱う花卉が規格化されておらず、また、鮮度が極めて重視されること、また、生活必需品ではなく個人の嗜好に左右されることにあるとされています。
そのような規模の経済を生かしにくい業界において、わが社は、一般のフラワーショップのように個人向けの花卉の販売も行っていますが、わが社独自のマーケット戦略として、主たる顧客ターゲットを、繁華街の高級クラブやラウンジ、ホストクラブ等とし、文字通り「華やかな」雰囲気を作り出すような花束やアレンジメントを納入するという分野に特に注力しており、この点から業界内において顕著な差別化が図られていると言えます。それもあって、コロナ禍で同業他社の業績が厳しい中、おかげさまでわが社の業績は堅調に推移しております。
一方で、最近受けた税務調査で1点解決していない事項があります。それは、わが社の代表取締役Yが取引先で飲食店業を営むZ社の代表者Aに対して行った貸付金債権につき、それをわが社とZ社間の貸付金に振り替えてから数年後、Z社がコロナ禍の業績不振により倒産したため、当該貸付金債権を償却し損金算入したことについての税務署との見解の相違です。Z社が倒産したのは客観的事実であることから、Z社に対する貸付金債権が回収不能となるのは当然であり、それを償却し損金算入することに何ら問題はないと思われるのですが、税務署の調査官は、当該貸付金は契約書の通り個人間のもので、わが社の損益には関係がないと主張します。これはどのように考えるべきなのでしょうか、教えてください。
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