法人税の損金経理要件をめぐる事例解説
【事例72】
「事前確定届出給与の届出額と支給額が異なるときの損金性」
拓殖大学商学部教授
税理士 安部 和彦
【Q】
私は、関東地方のある県庁所在地に隣接する市に本社を置き自動車部品等製造業を営む株式会社X(資本金20億円で3月決算法人)において、経理部長を務めております。
わが国の経済は戦後一貫して製造業が牽引してきたものと考えられますが、バブル崩壊後の失われた30余年を経過する中で、それにもだいぶ陰りが見えてきたのは、至極残念なところです。その中でも、世界に名だたるトヨタをはじめとするわが国の自動車メーカー各社は、今でも比較的好業績を維持しており、わが社もその恩恵にあずかっているところですが、将来展望は必ずしも明るくありません。
その原因の1つはEV化の波が一気に押し寄せて、アメリカのテスラや中国のBYDといった新興メーカーが市場を席巻しているという点です。日本の自動車メーカーの強みは次世代自動車の中のハイブリッド車や燃料電池車で、EV市場では正直出遅れていますが、今後EV化が一気に進むのかについては、まだ予断を許さないと考えております。
もう1つは、アメリカにおいて第二次トランプ政権が誕生したことです。ご承知の通り、トランプ大統領は予測不可能な言動を繰り返し、諸外国との軋轢をいとわず取引(ディール)により主張を通そうとします。その際活用するのは関税で、わが国の自動車業界は追加関税の発動によりどれほどの悪影響を被るのか、戦々恐々としています。
さて、そのような国際情勢の中、先週より税務調査を受けておりますが、役員給与について問題となっております。すなわち、わが社の場合、役員に対しても従業員と同様に賞与を支払うため、事前確定届出給与によりその支払った役員給与につき損金算入しています。
ところが、調査官は事前確定届出給与の届出額と実際の支給額が異なるため、支払った金額の全額が損金不算入と主張しております。
確かに賞与の支給分につき一部届出額と異なる金額がありますが、それはあくまで未払分に過ぎず、遅れて支払ったものだから問題ないと思われます。また、届出通り実際に支払った金額さえも損金算入を認めないのは、どう考えてもやりすぎかと思いますが、税法上はどう考えるのが適切なのでしょうか、教えてください。
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