法人税の損金経理要件をめぐる事例解説
【事例59】
「遺跡の調査・発掘に関する請負業務代金の未回収分に係る貸倒損失該当性」
拓殖大学商学部教授
税理士 安部 和彦
【Q】
私は、関東地方のある県庁所在地に本社を置き、建築・土木工事業を営む株式会社X(資本金3億円で3月決算)に勤務しており、現在総務部長を務めております。わが社はもともと宅地造成や住宅の建設工事などを行っている普通の建設会社でしたが、十数年前にたまたま地元自治体から依頼を受けて遺跡の発掘調査に携わったことから、最近の主たる業務は遺跡の調査・発掘に関する請負業務となっております。
遺跡の発掘作業が必要なケースというものは突然現れるもので、例えば、もともと企業の社宅として利用されていた敷地につき、当該企業が業務効率化の一環で社宅を廃止し、当該敷地をマンション用地として大手ディベロッパーに売却するという事例は非常にありふれたものですが、その際にマンション開発を担当したディベロッパーが当該敷地を掘り返したところ、運良く(むしろ悪く?)弥生時代の土器や石器が発掘されるというのが典型例となります。
発掘調査は地元や周辺の自治体の依頼で行うのですが、ケースによっては自治体が直接発注するのではなく、中間に任意団体(人格なき社団)を介して依頼される場合もあります。今回の税務調査で問題となったのは、この中間に任意団体を挟んだケースです。すなわち、元々話を持って来たのは地方自治体であるとはいえ、契約の相手方は当該任意団体であり、任意団体には当然信用力もなく、億単位の発掘費用を支払う能力があるのか疑問視されます。実際、契約で定められた着手金5,000万円の支払いは2ヶ月遅れ、残額は契約が終了した時点では1円も支払われておりません。したがって、わが社は未収入金として計上していた残額1億6,000万円について回収不能と判断し、全額その期において貸倒損失として損金処理を行いました。
しかし、国税局の調査官は、任意団体は地方自治体と一体で活動しているため信用力は十分である上、残額の支払いが遅延したのは発掘調査が天候不順のため当初予定より伸びたことが原因で、任意団体の支払い能力とは何ら関係がないことから、貸倒損失として損金処理することはできないと言ってきました。この場合、法人税法上はどのように考えるのが妥当なのでしょうか、教えてください。
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