法人税の損金経理要件をめぐる事例解説
【事例46】
「役員退職慰労金の引当金との相殺処理と損金経理」
国際医療福祉大学大学院教授
税理士 安部 和彦
【Q】
私は、首都圏を中心に東日本においてアミューズメント施設を運営する株式会社X(資本金9,000万円の3月決算法人)で経理部長を務めております。わが国のアミューズメント業界、中でもわが社の業務領域であるゲームセンターは少子高齢化の影響により、これまで主たる顧客であった10代・20代の若者の人口減少の荒波を受けて、全般的に市場が縮小しております。そのため、地方の零細資本のゲームセンターは大手に買収され淘汰されており、わが社も地方においてはロードサイドの駐車場を完備した施設を買収し、家族連れを取り込むことで生き残りを図ろうと必死になっております。
今やゲームは自宅においてゲーム機器で遊ぶのが一般的で、自宅外ではスマホのアプリで遊ぶというのが主流となる中、顧客にわざわざゲームセンターまで足を運んでもらうために、わが社も様々な工夫を行っております。例えば、クレーンゲームは現在、自宅に居ながら楽しめるオンライン形態のものも盛んですが、リアルな感覚を重視するファンも未だ少なくなく、わが社もワンフロアすべてクレーンゲームとする店舗を増加させ、長時間楽しめる場を提供しております。
また、クレーンゲームの商品の上限が800円から1,000円に引き上げられたことから、ユーザーに人気のあるマスコットやフィギュアの品ぞろえを拡大したり、マスコットをデコレーションしたり着せ替えを楽しめるグッズを別のフロアに用意したりと、客単価の引上げにつながるような施策を矢継ぎ早に投入しております。わが社のこのような創意工夫は、専ら3年前に事業承継した二代目社長のアイデアと行動力の賜物で、その結果、コロナ禍や最近のインフレにもめげず、わが社の業績はおかげさまで好調となっております。
そんな中、最近所轄税務署の税務調査を受け、調査官から厳しい指摘をされて戸惑っております。すなわち、わが社の創業者で先代社長に対する役員退職慰労金につき、特別損失として支給したものがありますが、損金経理を行っていないため、損金計上は認められないというものです。当社は先代社長の退職に備え、役員退職慰労引当金を引当計上しており、役員退職慰労金の支給に際しては、総勘定元帳において、以下の通り仕訳を行っており、当然損金算入されるものと認識しておりますが、どのように考えるべきなのでしょうか、教えてください。なお、当該役員退職慰労金の支給に関し、不相当に高額な部分の金額はないものという点で調査官と意見が一致しております。
この記事全文をご覧いただくには、プロフェッションネットワークの会員(プレミアム
会員又は一般会員)としてのログインが必要です。
通常、Profession Journalはプレミアム会員専用の閲覧サービスですので、プレミアム
会員のご登録をおすすめします。
プレミアム会員の方は下記ボタンからログインしてください。
プレミアム会員のご登録がお済みでない方は、下記ボタンから「プレミアム会員」を選択の上、お手続きください。