法人税の損金経理要件をめぐる事例解説
【事例62】
「時価を超える対価で購入した土地を売却した場合の売上原価」
拓殖大学商学部教授
税理士 安部 和彦
【Q】
私は、中国地方のある地方都市に本社を置き、不動産の賃貸や売買の仲介等を行う株式会社X(資本金1,000万円で3月決算)に勤務しており、現在経理部長を務めております。私は平成に入ってから不動産業界に入ったため、バブル崩壊前の地価高騰に伴う「おいしい時期」のことを知らない世代ですが、最近コロナ禍を抜けてようやくこの業界にも春が訪れようとしています。
東京近辺では今年は新築マンションの平均売り出し価格が1億円越えと報道されており、インバウンド需要のみならず、ダブルインカムのパワーカップルの購入意欲も引き付けているようで、私の地元とは異次元の世界ではないかとの驚きもあります。とはいえ、この流れは地方の政令指定都市にも及びつつあり、広島や岡山でもマンション価格は着実に上昇しております。
さて、そのような不動産業界の活況に水を差すかのような指摘が、先日の税務調査でありました。地元の税務署の調査官から、わが社が所有する土地の売却について異議を申し立てられたというわけです。その内容は、わが社が広島市内のある企業の社宅跡地を買収し、それをマンション業者に売却するという取引につき、当該敷地の買収価額が時価(鑑定評価額)よりも相当程度高いため、その金額をその後の売買取引の売上原価とすることはできないというものでした。
当該敷地は広島市内では希少なマンション適地であり、また、昨今の土地上昇傾向を勘案すれば、税務署がいう「時価」よりも、資本関係がなく価格に関し操作可能性が生じる余地がないと言える第三者との間の「契約価格」の方が、より公正な「市場価格」に近いと言えるものと確信しております。実際のところ、税法上はどのように考えるべきなのでしょうか、教えてください。
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