法人税の損金経理要件をめぐる事例解説
【事例64】
「販売代理店を海外旅行へ招待する費用の損金性」
拓殖大学商学部教授
税理士 安部 和彦
【Q】
私は、近畿地方に本拠を置き、大阪、京都、神戸を中心とした都市部のフランチャイズ店(販売代理店)に家庭用品を卸している株式会社X(資本金1億5,000万円で3月決算)に勤務しており、現在総務部長を務めております。わが社のビジネスモデルは、巷ではマルチ商法とかネットワークビジネスとか、古くはねずみ講などとレッテルが貼られて胡散臭いものと誤解されがちなのですが、極めてまっとうなもので、扱っている商品は環境にも優しく高品質であることから幅広い消費者層から支持があり、その結果、フランチャイズ店を経営する個人事業主の皆様とウィンウィンの関係を構築していることから、法令違反などとは無縁です。
さて、わが社の業績はフランチャイズ店の頑張り次第で大部分が決まってくることから、わが社はフランチャイズ店の士気を高める様々な工夫を凝らしております。その工夫の主たる方法として、インセンティブプランがあります。その内容は、売上金額に応じたキャッシュバック(ロイヤルティー)が中心ですが、その上乗せとして、売上金額上位5位以内のフランチャイズ店と、売上金額の伸び率上位5位以内のフランチャイズ店を対象とした海外旅行プラン(シンガポール3泊5日)があります。しかしながら、当該インセンティブプランにつき、先日来受けている税務調査で問題視されています。すなわち、国税局の調査官によれば、キャッシュバックプランはともかくとして、フランチャイズ店を対象とした海外旅行は純粋に個人事業主に対する慰安や接待というべき性質のものであり、法人税法上は交際費等に該当することから、中小法人に該当しないわが社の場合、全額が損金不算入になるというのです。
キャッシュバックプランと同じ意図を持ったインセンティブプランであるにもかかわらず、一方は損金算入、もう一方は損金不算入というのでは、ご都合主義としか言いようがないように思えますが、国税局の解釈は正当といえるのでしょうか、教えてください。
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