公開日: 2023/01/05 (掲載号:No.501)
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法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【事例48】「使途不明の商品券購入費用の損金性」

筆者: 安部 和彦

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説

【事例48】

「使途不明の商品券購入費用の損金性」

 

国際医療福祉大学大学院教授
税理士 安部 和彦

 

【Q】

私は、近畿地方において医療機関向けの人材派遣や情報サービスの提供を行っている株式会社Y(資本金1億円)で総務経理部長を務めております。わが社は代表取締役であるZが10年前に創業した比較的歴史の浅い会社ですが、もともとソフトウェア会社のSEであったZが医療機関向けの情報サービス業に目をつけたところ大当たりし、最近では株式公開の準備を進めるところまで事業を拡大してきました。

私が銀行から当社に移籍してきたのは2年程前ですが、当社の特徴として、急成長中の会社にありがちな現象ではありますが、事業規模に比べ組織運営の整備が不十分であるといえます。そこで、私はこれまでの銀行員としての経験を踏まえ、適切なガバナンスが機能するような組織体制を構築すべく、管理部門の充実を柱とした組織改革を矢継ぎ早に行ってきました。特に不透明かつ不効率な支出を抑制するという意味で、経理部門の役割が大きいことから、チェック体制を整備し、結果として利益率を前年から数ポイント上げることに成功しました。

このような目覚ましい成果を挙げつつも、最後まで手付かずだったのが、代表取締役の特別勘定の取扱いでした。これが先日受けた税務調査で問題となっており、頭を痛めております。すなわち、代表取締役Zが最近熱心に取り組んでいる、日本の伝統的な価値観に根差した道徳教育の普及に関し、それを学校教育の現場で実践しようということで、Zが学校法人Xの理事長に就任したことに伴い、当社から代表取締役特別勘定を通じて支出される不透明な金銭等が問題となりました。問題となった支出は、学校法人に対する商品券500万円分の購入費用で、交際費として計上し、800万円の定額控除限度額の範囲内であるため、全額損金に算入していました。担当の社長室長の説明では、それらの商品券は、学校教育で使用するPCや図書の購入費用に充てられたはずであるとのことでした。

しかし、当社は、それが学校法人において実際には何に充てられていたのかという証拠書類を徴収していないため、調査官は、当該支出は交際費ではなく寄附金ないし使途秘匿金に該当するとして、損金性を否認してきました。私個人としては、調査官の主張はもっともだと感じていますが、代表取締役Zが烈火のごとく怒っており、対応に窮しています。代表取締役にどのように説明すべきでしょうか、教えてください。

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法人税の損金経理要件をめぐる事例解説

【事例48】

「使途不明の商品券購入費用の損金性」

 

国際医療福祉大学大学院教授
税理士 安部 和彦

 

【Q】

私は、近畿地方において医療機関向けの人材派遣や情報サービスの提供を行っている株式会社Y(資本金1億円)で総務経理部長を務めております。わが社は代表取締役であるZが10年前に創業した比較的歴史の浅い会社ですが、もともとソフトウェア会社のSEであったZが医療機関向けの情報サービス業に目をつけたところ大当たりし、最近では株式公開の準備を進めるところまで事業を拡大してきました。

私が銀行から当社に移籍してきたのは2年程前ですが、当社の特徴として、急成長中の会社にありがちな現象ではありますが、事業規模に比べ組織運営の整備が不十分であるといえます。そこで、私はこれまでの銀行員としての経験を踏まえ、適切なガバナンスが機能するような組織体制を構築すべく、管理部門の充実を柱とした組織改革を矢継ぎ早に行ってきました。特に不透明かつ不効率な支出を抑制するという意味で、経理部門の役割が大きいことから、チェック体制を整備し、結果として利益率を前年から数ポイント上げることに成功しました。

このような目覚ましい成果を挙げつつも、最後まで手付かずだったのが、代表取締役の特別勘定の取扱いでした。これが先日受けた税務調査で問題となっており、頭を痛めております。すなわち、代表取締役Zが最近熱心に取り組んでいる、日本の伝統的な価値観に根差した道徳教育の普及に関し、それを学校教育の現場で実践しようということで、Zが学校法人Xの理事長に就任したことに伴い、当社から代表取締役特別勘定を通じて支出される不透明な金銭等が問題となりました。問題となった支出は、学校法人に対する商品券500万円分の購入費用で、交際費として計上し、800万円の定額控除限度額の範囲内であるため、全額損金に算入していました。担当の社長室長の説明では、それらの商品券は、学校教育で使用するPCや図書の購入費用に充てられたはずであるとのことでした。

しかし、当社は、それが学校法人において実際には何に充てられていたのかという証拠書類を徴収していないため、調査官は、当該支出は交際費ではなく寄附金ないし使途秘匿金に該当するとして、損金性を否認してきました。私個人としては、調査官の主張はもっともだと感じていますが、代表取締役Zが烈火のごとく怒っており、対応に窮しています。代表取締役にどのように説明すべきでしょうか、教えてください。

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連載目次

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説

▷総論

● 法人税の課税所得計算と損金経理(その1~5)

▷事例解説

● 法人税の損金経理要件をめぐる事例解説【事例1~50】

・・・  以下、順次公開 ・・・

筆者紹介

安部 和彦

(あんべ・かずひこ)

税理士
和彩総合事務所 代表社員
拓殖大学商学部教授

東京大学卒業後、平成2年、国税庁入庁。
調査査察部調査課、名古屋国税局調査部、関東信越国税局資産税課、国税庁資産税課勤務を経て、外資系会計事務所へ移り、平成18年に安部和彦税理士事務所・和彩総合事務所を開設、現在に至る。
医師・歯科医師向け税務アドバイス、相続税を含む資産税業務及び国際税務を主たる業務分野としている。
平成23年4月、国際医療福祉大学大学院医療経営管理分野准教授に就任。
平成26年9月、一橋大学大学院国際企業戦略研究科経営法務専攻博士後期課程単位修得退学
平成27年3月、博士(経営法) 一橋大学
令和3年4月、国際医療福祉大学大学院医療経営管理分野教授に就任。
令和5年4月、拓殖大学商学部教授に就任。

【主要著書】
・『事例で解説 法人税の損金経理』(2024年・清文社)
・『三訂版 医療・福祉施設における消費税の実務』(2023年・清文社)
・『改訂 消費税 インボイス制度導入の実務』(2023年・清文社)
・『裁判例・裁決事例に学ぶ消費税の判定誤りと実務対応』(2020年・清文社)
・『消費税 軽減税率対応とインボイス制度 導入の実務』(2019年・清文社)
・『[第三版]税務調査と質問検査権の法知識Q&A』(2017年・清文社)
・『最新判例でつかむ固定資産税の実務』(2017年・清文社)
・『新版 税務調査事例からみる役員給与の実務Q&A』(2016年・清文社)
・『要点スッキリ解説 固定資産税』(2016年・清文社)
・『Q&Aでわかる消費税軽減税率のポイント』(2016年・清文社)
・『Q&A医療法人の事業承継ガイドブック』(2015年・清文社)
・『国際課税における税務調査対策Q&A』(2014年・清文社)
・『消費税[個別対応方式・一括比例配分方式]有利選択の実務』(2013年・清文社)
・『修正申告と更正の請求の対応と実務』(2013年・清文社)
・『税務調査の指摘事例からみる法人税・所得税・消費税の売上をめぐる税務』(2011年・清文社)
・『相続税調査であわてない「名義」財産の税務(第3版)』(2021年・中央経済社)
・『相続税調査であわてない不動産評価の税務』(2015年・中央経済社)
・『消費税の税務調査対策ケーススタディ』(2013年・中央経済社)
・『医療現場で知っておきたい税法の基礎知識』(2012年・税務経理協会)
・『事例でわかる病医院の税務・経営Q&A(第2版)』(2012年・税務経理協会)
・『Q&A 相続税の申告・調査・手続相談事例集』(2011年・税務経理協会)
・『ケーススタディ 中小企業のための海外取引の税務』(2020年・ぎょうせい)
・『消費税の税率構造と仕入税額控除』(2015年・白桃書房)

【ホームページ】
https://wasai-consultants.com

             

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