法人税の損金経理要件をめぐる事例解説
【事例61】
「株主総会の承認を得ていない決算書類に基づく確定申告の有効性」
拓殖大学商学部教授
税理士 安部 和彦
【Q】
私は、東北地方のある県庁所在地に本社を置き、不動産の賃貸や管理等を行う株式会社X(資本金3,000万円で3月決算)に勤務しており、現在総務部長を務めております。東北地方は太平洋側の地域を中心に、10年以上前の東日本大震災で大きな被害を受け、現在も復興の過程にあるという状況です。しかし、先日の能登半島地震のように、わが国ではほかの地方においても毎年のように多大な地震の被害を受けているとの報道に接するところであり、そのたびごとにとても他人事とは思えず、微力ながら何かの足しになればと募金を行っています。東日本大震災で多大な被害を受けた地域では、不動産オーナーも多額の損失を被っており、わが社もそのような取引先の実情に応じ、寄り添うような対応が求められてきたところです。
さて、私の前職は地方銀行の支店長で、わが社には2年前に転職しております。私の現在のポストの前任者はわが社一筋のたたき上げだったようで、社長の信認は厚かったようですが、近年世間で問題となっている法令順守の意識にはやや欠ける人だったと聞き及んでおります。そのため、私が総務部長に就いてからは、前任者のコンプライアンス違反を是正する作業を続けている状態です。
そんな中、つい先日私が発見したのが、わが社の決算書類につき株主総会の承認を得ていない年度があるという驚きの事実でした。その年度につき決算と申告内容を精査したところ、本来であれば法人税法の要件を満たした有価証券評価損につき費用計上すべきであるにもかかわらず行っていないことから、決算書類を修正し臨時株主総会で当該書類について承認を得ました。次いで、株主総会の承認を得ていない決算書類に基づく当初申告は無効であるため、修正後の真正の決算書類に基づく法人税の申告書を再度作成し、それを税務署に提出しました。
ところがこれに対して税務署から連絡があり、株主総会の承認を得ていない決算書類に基づく当初申告は有効であり、当初申告において損金経理により有価証券評価損を計上していないことから、損金算入は認められない旨を告げられました。税務署の説明には納得がいかないのですが、税法上はどう考えるのでしょうか、教えてください。
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