公開日: 2020/09/03 (掲載号:No.384)
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法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【事例21】「従業員名義預金口座に振り込まれていた決算賞与の損金性」

筆者: 安部 和彦

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説

【事例21】

「従業員名義預金口座に振り込まれていた決算賞与の損金性」

 

国際医療福祉大学大学院准教授
税理士 安部 和彦

 

【Q】

私は、都内でスマホ向けゲームのアプリを開発しているA株式会社を代表取締役として経営しております。昨年秋の消費税増税に加え、今年2月以降のコロナ禍により、わが国の経済は極めて厳しい状況にありますが、わが社の商品はいわゆる「巣ごもり消費」にはまって大ヒットを連発しており、わが社の2020年6月期の業績は、お陰様で昨年度までの3期連続の増収増益をも上回り、過去最高を更新するのは確実な情勢です。

これもひとえに昼夜を問わずアイディア出し、製品化に勤しんでいる、クリエイティブかつ勤勉な従業員の頑張りの賜物であり、経営者としてそれに報酬面で報いるのは当然のことと考えております。そのため、毎年のように従業員に対し決算賞与を弾むようにしています。勿論、税務面でも問題ないよう顧問税理士とよく打ち合わせて当該賞与を支払っております。すなわち、私を含む取締役に対しては法人税法上損金不算入となる決算賞与を支払わず、翌期の役員報酬に均等に上乗せするという方法で支払っております。

ところが、先日受けた税務調査で予期せぬ指摘を受けました。それは、従業員に対して支払った賞与のうち、一部分は従業員名義の預金口座を経理部が直接管理しているため、当該口座に支払われた決算賞与は損金不算入となるというものでした。

わが社が一部の従業員に対して支払う決算賞与を、調査官が指摘するような方法で行っているのは事実ですが、これには理由があり、一部の独身の従業員は多額の決算賞与を一度に受け取ると、ギャンブル等にそれを浪費してしまいがちであるため、会社がその分を代わって管理し、結婚して配偶者が当該従業員の給与を管理できるようになれば、それを引き渡すという「親心」からのものです。

会社のこのような行為は「過保護ではないか」という批判に対しては真摯に受け止めますが、それと税務上の取扱いは全く別の話で、役員であればともかくとして、従業員に対して支払った賞与が損金算入されないというのは、どうにも納得がいきません。従業員に対する決算賞与に関する調査官の指摘は妥当なのでしょうか、教えてください。

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法人税の損金経理要件をめぐる事例解説

【事例21】

「従業員名義預金口座に振り込まれていた決算賞与の損金性」

 

国際医療福祉大学大学院准教授
税理士 安部 和彦

 

【Q】

私は、都内でスマホ向けゲームのアプリを開発しているA株式会社を代表取締役として経営しております。昨年秋の消費税増税に加え、今年2月以降のコロナ禍により、わが国の経済は極めて厳しい状況にありますが、わが社の商品はいわゆる「巣ごもり消費」にはまって大ヒットを連発しており、わが社の2020年6月期の業績は、お陰様で昨年度までの3期連続の増収増益をも上回り、過去最高を更新するのは確実な情勢です。

これもひとえに昼夜を問わずアイディア出し、製品化に勤しんでいる、クリエイティブかつ勤勉な従業員の頑張りの賜物であり、経営者としてそれに報酬面で報いるのは当然のことと考えております。そのため、毎年のように従業員に対し決算賞与を弾むようにしています。勿論、税務面でも問題ないよう顧問税理士とよく打ち合わせて当該賞与を支払っております。すなわち、私を含む取締役に対しては法人税法上損金不算入となる決算賞与を支払わず、翌期の役員報酬に均等に上乗せするという方法で支払っております。

ところが、先日受けた税務調査で予期せぬ指摘を受けました。それは、従業員に対して支払った賞与のうち、一部分は従業員名義の預金口座を経理部が直接管理しているため、当該口座に支払われた決算賞与は損金不算入となるというものでした。

わが社が一部の従業員に対して支払う決算賞与を、調査官が指摘するような方法で行っているのは事実ですが、これには理由があり、一部の独身の従業員は多額の決算賞与を一度に受け取ると、ギャンブル等にそれを浪費してしまいがちであるため、会社がその分を代わって管理し、結婚して配偶者が当該従業員の給与を管理できるようになれば、それを引き渡すという「親心」からのものです。

会社のこのような行為は「過保護ではないか」という批判に対しては真摯に受け止めますが、それと税務上の取扱いは全く別の話で、役員であればともかくとして、従業員に対して支払った賞与が損金算入されないというのは、どうにも納得がいきません。従業員に対する決算賞与に関する調査官の指摘は妥当なのでしょうか、教えてください。

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連載目次

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説

▷総論

● 法人税の課税所得計算と損金経理(その1~5)

▷事例解説

● 法人税の損金経理要件をめぐる事例解説【事例1~40】

・・・  以下、順次公開 ・・・

筆者紹介

安部 和彦

(あんべ・かずひこ)

税理士
和彩総合事務所 代表社員
拓殖大学商学部教授

東京大学卒業後、平成2年、国税庁入庁。
調査査察部調査課、名古屋国税局調査部、関東信越国税局資産税課、国税庁資産税課勤務を経て、外資系会計事務所へ移り、平成18年に安部和彦税理士事務所・和彩総合事務所を開設、現在に至る。
医師・歯科医師向け税務アドバイス、相続税を含む資産税業務及び国際税務を主たる業務分野としている。
平成23年4月、国際医療福祉大学大学院医療経営管理分野准教授に就任。
平成26年9月、一橋大学大学院国際企業戦略研究科経営法務専攻博士後期課程単位修得退学
平成27年3月、博士(経営法) 一橋大学
令和3年4月、国際医療福祉大学大学院医療経営管理分野教授に就任。
令和5年4月、拓殖大学商学部教授に就任。

【主要著書】
・『事例で解説 法人税の損金経理』(2024年・清文社)
・『三訂版 医療・福祉施設における消費税の実務』(2023年・清文社)
・『改訂 消費税 インボイス制度導入の実務』(2023年・清文社)
・『裁判例・裁決事例に学ぶ消費税の判定誤りと実務対応』(2020年・清文社)
・『消費税 軽減税率対応とインボイス制度 導入の実務』(2019年・清文社)
・『[第三版]税務調査と質問検査権の法知識Q&A』(2017年・清文社)
・『最新判例でつかむ固定資産税の実務』(2017年・清文社)
・『新版 税務調査事例からみる役員給与の実務Q&A』(2016年・清文社)
・『要点スッキリ解説 固定資産税』(2016年・清文社)
・『Q&Aでわかる消費税軽減税率のポイント』(2016年・清文社)
・『Q&A医療法人の事業承継ガイドブック』(2015年・清文社)
・『国際課税における税務調査対策Q&A』(2014年・清文社)
・『消費税[個別対応方式・一括比例配分方式]有利選択の実務』(2013年・清文社)
・『修正申告と更正の請求の対応と実務』(2013年・清文社)
・『税務調査の指摘事例からみる法人税・所得税・消費税の売上をめぐる税務』(2011年・清文社)
・『相続税調査であわてない「名義」財産の税務(第3版)』(2021年・中央経済社)
・『相続税調査であわてない不動産評価の税務』(2015年・中央経済社)
・『消費税の税務調査対策ケーススタディ』(2013年・中央経済社)
・『医療現場で知っておきたい税法の基礎知識』(2012年・税務経理協会)
・『事例でわかる病医院の税務・経営Q&A(第2版)』(2012年・税務経理協会)
・『Q&A 相続税の申告・調査・手続相談事例集』(2011年・税務経理協会)
・『ケーススタディ 中小企業のための海外取引の税務』(2020年・ぎょうせい)
・『消費税の税率構造と仕入税額控除』(2015年・白桃書房)

【ホームページ】
https://wasai-consultants.com

             

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