法人税の損金経理要件をめぐる事例解説
【事例88】
「親会社の貸倒引当金計上を回避するために行われた
子会社に対する債権放棄の損金性」
拓殖大学商学部教授
税理士 安部 和彦
【Q】
私は、近畿地方のとある県庁所在地に本社を置き、旅客自動車運送事業を営む株式会社X(資本金5,000万円で3月決算)において、経営企画部長を務めております。
わずか数年前は、わが国のインバウンド向け観光業(運輸、宿泊、飲食業など)はコロナ禍で深刻な打撃を受け、青色吐息でしたが、コロナ禍明け後は急速に回復し、わが社のテリトリーである近畿地方でもここ数年は非常に好調に推移しております。わが社の主力事業は、乗車定員10人以下の自動車を貸し切って旅客を運送する一般乗用旅客自動車運送事業、いわゆるタクシー事業です。現在のわが国におけるタクシー事業を取り巻く環境は、政府・国土交通省がいうところの、地域住民や旅行者一人一人のトリップ単位での移動ニーズに対応して、複数の公共交通やそれ以外の移動サービスを最適に組み合わせて検索・予約・決済等を一括で行うサービスである、モビリティのサービス化(Mobility as a Service, MaaS)や自動運転分野の発展を背景に目まぐるしく変化しており、また、乗務員の不足感が強まっていることから、いかにその確保を行うかが厳しい業界内競争を勝ち抜く上でのカギとなっております。
さて、そのような中、わが社は先日から定例の税務調査を受けております。そこで現在問題となっているのは、経営不振の子会社に対して有する債権を放棄した場合、その金額が損金に算入されるかどうかです。子会社の貸借対照表上は債務超過であり、事実上破産状態であることから、債権放棄を行って経営を立て直すのは親会社して合理的な経営判断であると考えられますが、税務署は、子会社の有する土地を時価評価すれば債務超過ではないとして、当該債権放棄は時期尚早であり、その金額は寄附金として扱われ、損金に算入されない金額が一部生ずると主張しております。税務署のやり方は土地の評価額に関し客観性の欠ける手法を用いており、恣意的な課税方法であると思いますが、税法上どのように考えるのが妥当なのでしょうか、教えてください。
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