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減損会計を学ぶ 【第12回】「グルーピングに関するその他の留意事項」

筆者:阿部 光成

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減損会計を学ぶ

【第12回】

「グルーピングに関するその他の留意事項」

 

公認会計士 阿部 光成

 

前回までで述べたように、減損会計では、グルーピングがポイントになる。

「固定資産の減損に係る会計基準の適用指針」(以下「減損適用指針」という)は、グルーピングに関して、経営の実態が適切に反映されるよう配慮して行うと述べ、資産のグルーピングを行う手順を例示することにより、実務的な指針として役立てることを目的としている(減損適用指針7項、70項)。

今回は、グルーピングに関するその他の留意事項について解説する。
文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。

 

Ⅰ 資産の処分等の意思決定を行った場合

減損適用指針8項は、次のような資産については、原則として、それぞれがキャッシュ・フローを生み出す最小の単位として扱うと規定している。

 取締役会や常務会等において、資産の処分や事業の廃止に関する意思決定を行い、その代替的な投資も予定されていないときなど、これらに係る資産を切り離しても他の資産又は資産グループの使用にほとんど影響を与えない場合

 将来の使用が見込まれていない遊休資産(企業が将来の使用を見込んでいる遊休資産は、その見込みに沿って、グルーピングを行う)

資産の処分や事業の廃止に関する意思決定は、取締役会や常務会等において行われるほか、社内規定等に基づき、他に決定権限が委譲されている場合には、当該決定権限に従った権限者の承認により行われると述べられている(減損適用指針71項)。

また、処分の意思決定を行った重要な資産や、廃止の意思決定を行った事業に係る重要な資産、将来の使用が見込まれていない重要な遊休資産は、これら同士の将来キャッシュ・フローを合算して減損損失を認識するかどうかの判定を行ったり、減損損失を測定したりしないことに留意すると述べられている(減損適用指針72項)。

 

Ⅱ グルーピングの継続性

資産のグルーピングについては継続性が求められており、原則として、毎期同様に行う必要があると規定されている(減損適用指針9項)。

グルーピングの変更が認められるのは、事実関係が変化した場合であり、減損適用指針は、次のものを例示している(減損適用指針74項)。

 事業の再編成による管理会計上の区分の変更

 主要な資産の処分

 事業の種類別セグメント情報におけるセグメンテーションの方法等の変更

 

Ⅲ 物理的な1つの資産をグルーピングの単位の基礎とすること

資産のグルーピングを決定する基礎となる単位は、継続的な収支の把握の単位である(減損適用指針7項(1))。
例えば、店舗・工場などの括りで継続的に収支の把握がなされている場合は、その括りがグルーピングを決定する基礎となる単位となる。

この場合、減損適用指針は、資産のグルーピングの単位を決定する基礎は、原則として、小さくとも物理的な1つの資産になると考えている(減損適用指針70項(1))。

これは、固定資産の減損会計は、資産を対象とするため、1つの資産において、継続的に収支の把握がなされている単位が複数存在する場合でも、1つの資産を細分化して減損処理の対象とすることは適切ではないと考えられているためである(減損適用指針70項(1))。

要するに建物は建物、機械装置は機械装置を単位とし減損会計を適用するものであり、例えば、建物をフロアごと部屋ごとに分割して減損会計を行うということではないと解される。

ただし、物理的な1つの資産でも仕様が異なる等のため、複数からなる資産と考えられる場合もある。

これには、商業ビルにおいて仕様が異ならなくとも、自社利用部分と外部賃貸部分とが長期継続的に区分されるような場合も含めることができるものと考えられると述べられている(減損適用指針70項(1))。

実務においては、上記の状況に関して、経営の実態が適切に反映されるようにグルーピングを行うよう注意する必要があると解される。

 

Ⅳ セグメント情報における開示対象セグメントを超えないこと

減損適用指針は、連結財務諸表における資産グループは、どんなに大きくとも、事業の種類別セグメント情報における開示対象セグメントの基礎となる事業区分よりも大きくなることはないと考えられると述べている(減損適用指針73項)。

セグメント情報については、「セグメント情報等の開示に関する会計基準」(企業会計基準第17号)が公表されており、マネジメント・アプローチが採用されている。

マネジメント・アプローチとは、経営上の意思決定を行い、業績を評価するために、経営者が企業を事業の構成単位に分別した方法を基礎としてセグメント情報を開示する手法である(企業会計基準第17号45項)。

減損適用指針は、「事業の種類別セグメント情報における開示対象セグメント」の表現を用いているが、グルーピングについては、実務的には、管理会計上の区分や投資の意思決定(資産の処分や事業の廃止に関する意思決定を含む)を行う際の単位等を考慮して決定すると規定しているので(減損適用指針7項)、「セグメント情報等の開示に関する会計基準」と基本的に同様に考えることができると解される。

 

Ⅴ 連結におけるグルーピングの見直し

連結財務諸表においても、原則的には、個別財務諸表における資産のグルーピングをそのまま用いることとなる(減損適用指針75項)。

連結財務諸表においては、連結の見地から、個別財務諸表において用いられた資産のグルーピングの単位が見直される場合がある(「固定資産の減損に係る会計基準の設定に関する意見書」四、2(6)①なお書、減損適用指針10項)。

この場合には、次のことに注意する。

 連結におけるグルーピングの見直しが行われるのは、管理会計上の区分や投資の意思決定を行う際の単位の設定等が複数の連結会社(在外子会社を含む)を対象に行われており、連結財務諸表において、他の資産又は資産グループのキャッシュ・フローから概ね独立したキャッシュ・フローを生み出す最小の単位が、各連結会社の個別財務諸表における資産のグルーピングの単位と異なる場合である(減損適用指針10項)。

 連結財務諸表における資産のグルーピングの単位の見直しは、必ず行わなければならないものではなく、また、管理会計上の区分や投資の意思決定を行う単位の設定等が複数の連結会社を対象に行われていない場合には、見直されるわけではないことに注意が必要である(減損適用指針75項)。

連結の見地から資産のグルーピングの単位が見直された場合には、個別財務諸表における減損損失が、連結上、修正されることとなる(減損適用指針75項)。

連結財務諸表において計上される減損損失が、個別財務諸表における減損損失の合計額を下回る場合には、連結上、当該差額を消去し、上回る場合には、連結上、当該差額を追加計上することとなる。

(了)

「減損会計を学ぶ」は、隔週で掲載されます。

連載目次

「減損会計を学ぶ」(全24回)

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「金融商品会計を学ぶ」(全29回)

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筆者紹介

  • 阿部 光成

    (あべ・みつまさ)

    公認会計士
    中央大学商学部卒業。阿部公認会計士事務所。

    現在、豊富な知識・情報力を活かし、コンサルティング業のほか各種実務セミナー講師を務める。
    企業会計基準委員会会社法対応専門委員会専門委員、日本公認会計士協会連結範囲専門委員会専門委員長、比較情報検討専門委員会専門委員長を歴任。

    主な著書に、『新会計基準の実務』(編著、中央経済社)、『企業会計における時価決定の実務』(共著、清文社)、『新しい事業報告・計算書類―経団連ひな型を参考に―〔全訂版〕』(編著、商事法務)がある。

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