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税効果会計を学ぶ 【第4回】「適用する法定実効税率」

筆者:阿部 光成

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税効果会計を学ぶ

【第4回】

「適用する法定実効税率」

 

公認会計士 阿部 光成

 

Ⅰ 税効果会計で使用する税率

本稿では、税効果会計で使用する税率について解説する。
文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。

1 法定実効税率

「税効果会計に係る会計基準」第二、二、2は、繰延税金資産又は繰延税金負債の金額は、回収又は支払いが行われると見込まれる期の税率に基づいて計算すると規定している。

「個別財務諸表における税効果会計に関する実務指針」(会計制度委員会報告第10号。以下「個別税効果会計実務指針」という)は、税効果会計で使用する税率を「法定実効税率」と呼び、次のように算定すると規定している(個別税効果会計実務指針17項)。

【法定実効税率の算定方法】

2 法定実効税率算定上の留意点

法定実効税率の算定方法は上記のとおりであり、一時差異等が解消又は消滅する際の将来の各会社の法人税、住民税及び事業税の各適用税率を合理的に見積もる(個別税効果会計実務指針37項)。

実務上、将来の所得水準を考慮し、複数の事業所を有する会社においては、代表的な事業所(例えば、本社所在地、主な所得源泉地)に適用されている税率をもとに法定実効税率を算定する。
このため、標準税率が必ずしも法定実効税率の算定基礎になるとは限らないことに注意が必要である。

事業税の課税標準には、所得のほか、外形基準により付加価値割と資本割によるものも含まれる。これらの外形基準による税率は利益に関連する金額を課税標準とする税金ではないため、上記の算式の「事業税率」には所得割のみを含めることになる(個別税効果会計実務指針17項なお書)。

3 改正税法の公布がポイント

税効果会計上で適用する税率は、決算日現在における税法規定に基づく税率による(個別税効果会計実務指針18項)。

したがって、改正税法が当該決算日までに公布されており、将来の適用税率が確定している場合は、改正後の税率を適用することになる(個別税効果会計実務指針18項)。

この点については、税法の改正により税率の変更が予定されている場合には可能な限り改正内容を取り込むべきであるとの意見もあったようだが、会計のルールとしては、改正税法が当該決算日までに公布されているかどうかで判断するものと決めたものと解される。

このため、税制改正が行われ、法定実効税率の算定に影響する場合には、当該税制改正の公布日がいつなのかについて注意しておく必要がある。税制改正の内容は重要であるが、その公布日も重要であるということである。

 

Ⅱ 平成25年3月決算における税効果会計で使用する税率

平成23年度税制改正及び復興特別法人税の創設の概要は、次のようなものである。

  • 平成24年4月1日以後に開始する事業年度の所得金額に対する法人税の税率が、現行の30%から25.5%に引き下げられている。
  • 復興財源確保法においては復興特別法人税が創設され、平成24年4月1日から平成27年3月31日までの間に開始する事業年度において、各課税事業年度の基準法人税額に10%の税率を乗じて復興特別法人税額が計算される。

このため、平成25年3月決算においては、次のように事業年度によって適用される税率が異なることから、税効果会計の適用に際して注意が必要になる。なお、実際の会計処理に際しては、各社で実効税率の算定を行うようにお願いしたい。

【事業年度ごとの税率】
(期末資本金の額が1億円超法人に対する東京都の税率の場合)

前回用いた滞留棚卸資産に関する数値例では、当該将来減算一時差異1,000が、将来のどの事業年度において解消し、税務上、損金算入となる見込みかについて、スケジューリングを行うことになるとしていた。

【将来減算一時差異に関するスケジューリング】

将来減算一時差異の解消見込が、×1年から×3年までに行われると合理的に予測されているとする。

この場合、解消見込年度ごとに適用する税率が異なることから、【事業年度ごとの税率】と解消見込年度を照らし合わせて、将来減算一時差異に乗ずる法定実効税率を決定することに注意が必要である。

このようにスケジューリングと適用する法定実効税率の関係が重要となるので、税効果会計上のポイントとしては、スケジューリングの合理性ということになると考えられる。

(了)

「税効果会計を学ぶ」は、隔週の掲載となります。

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筆者紹介

  • 阿部 光成

    (あべ・みつまさ)

    公認会計士
    中央大学商学部卒業。阿部公認会計士事務所。

    現在、豊富な知識・情報力を活かし、コンサルティング業のほか各種実務セミナー講師を務める。
    企業会計基準委員会会社法対応専門委員会専門委員、日本公認会計士協会連結範囲専門委員会専門委員長、比較情報検討専門委員会専門委員長を歴任。

    主な著書に、『新会計基準の実務』(編著、中央経済社)、『企業会計における時価決定の実務』(共著、清文社)、『新しい事業報告・計算書類―経団連ひな型を参考に―〔全訂版〕』(編著、商事法務)がある。

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