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金融商品会計を学ぶ 【第28回】「ヘッジ会計⑨」

筆者:阿部 光成

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金融商品会計学ぶ

【第28回】

「ヘッジ会計⑨」

 

公認会計士 阿部 光成

 

引き続き、「金融商品に関する会計基準」(企業会計基準第10号。以下「金融商品会計基準」という)及び「金融商品会計に関する実務指針」(会計制度委員会報告第14号。以下「金融商品実務指針」という)におけるヘッジ会計について述べる。

なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。

 

Ⅰ 包括ヘッジ

ヘッジ対象が複数の資産又は負債から構成されている場合における、ヘッジ手段に係る損益又は評価差額の配分は、各ヘッジ対象に対するヘッジの効果を反映する配分基準に基づいて行い、次のような配分方法がある(金融商品実務指針173項、343項)。

 ヘッジ取引開始時又は終了時における各ヘッジ対象の時価を基礎とする方法

 ヘッジ取引終了時における各ヘッジ対象の帳簿価額を基礎とする方法

 ヘッジ取引開始時からヘッジ取引終了時までの間における各ヘッジ対象の相場変動幅を基礎とする方法

 

Ⅱ 金利スワップの特例処理

金融商品会計基準注解14は次のように規定している。

資産又は負債に係る金利の受払条件を変換することを目的として利用されている金利スワップが金利変換の対象となる資産又は負債とヘッジ会計の要件を充たしており、かつ、その想定元本、利息の受払条件(利率、利息の受払日等)及び契約期間が当該資産又は負債とほぼ同一である場合には、金利スワップを時価評価せず、その金銭の受払の純額等を当該資産又は負債に係る利息に加減して処理することができる。

金利スワップについて特例処理が認められるためには、次の条件をすべて満たす必要がある。なお、売買目的有価証券及びその他有価証券は特例処理の対象としない(金融商品実務指針178項、「金融商品会計に関するQ&A」Q58)。

金利スワップの特例処理は、金融商品会計基準の基本原則であるデリバティブの時価評価に例外を設けるものであることから、拡張解釈を避け、金利スワップがヘッジ対象たる資産又は負債とほとんど一体とみなせる場合に限られている(金融商品実務指針346項)。

金利スワップの特例処理の適用要件を充足すればヘッジ有効性の要件は自動的に満たされると考えられるため、金融商品実務指針178項の条件に合致する金利スワップについては、改めて有効性判定を行うことは要しない(金融商品実務指針158項、346項)。

 金利スワップの想定元本と貸借対照表上の対象資産又は負債の元本金額がほぼ一致していること。
 金利スワップの想定元本と対象となる資産又は負債の元本については、いずれかの5%以内の差異であれば、ほぼ同一であると考えて、この特例処理を適用することができる。

 金利スワップの契約期間とヘッジ対象資産又は負債の満期がほぼ一致していること。
 契約期間又は満期の長さによって、一概に何日又は何か月異なっている場合が要件に該当しないということはできないものの、当該差異日数が金利スワップの契約期間とヘッジ対象資産又は負債の満期のいずれかの5%以内であればほぼ一致していると考えられる(10年の金利スワップであれば6か月、5年の金利スワップであれば3か月の差異まではほぼ一致と考えてよい)

 対象となる資産又は負債の金利が変動金利である場合には、その基礎となっているインデックスが金利スワップで受払される変動金利の基礎となっているインデックスとほぼ一致していること。
 例えば、3か月TIBORと3か月LIBORは比較的高い相関関係を示すことが多いと考えられるが、自動的に「ほぼ一致」とするのではなく、ヘッジ取引開始時の直近の状況により「ほぼ一致」かどうかを判定すべきものと考えられている。直近の一定期間について両者が高い相関関係を示していることが確認されている場合には、ほぼ一致しているものとして扱うことができる。
 プライムレートとTIBOR又はLIBORの関係については、TIBORやLIBORが時々刻々と変化するのに対して、プライムレートは一定期間変化しないのが通常であり、事前にほぼ一致と判定することはできないものと考えられ、特例処理の対象とはならない。

 金利スワップの金利改定のインターバル及び金利改定日がヘッジ対象の資産又は負債とほぼ一致していること。
 金利取引は3か月を単位として行われることが比較的多いため、金利改定日及びインターバルの差異は最大でも3か月以内でなければ、ほぼ一致しているとは言えない。

 金利スワップの受払条件がスワップ期間を通して一定であること(同一の固定金利及び変動金利のインデックスがスワップ期間を通して使用されていること)。

 金利スワップに期限前解約オプション、支払金利のフロアー又は受取金利のキャップが存在する場合には、ヘッジ対象の資産又は負債に含まれた同等の条件を相殺するためのものであること。

次の事項に注意する(金融商品実務指針178項、179項、346項、347項)。

 金利スワップについて特例処理の要件を満たさない場合であってもヘッジ会計の要件を満たすときは、繰延ヘッジの方法によりヘッジ会計を適用できる。

 支払金利に係るキャップ取引及び受取金利に係るフロアー取引は、金利スワップに準じて特例処理の対象とできる。この場合、金融商品実務指針178項に定める条件を満たす必要がある。取引開始時に受渡しされるオプション料相当額については、利息の調整額として、ヘッジ対象である資産又は負債の契約期間にわたって配分する。

 金融商品会計基準では明確には言及していないもの、基準の異なる変動金利(例えば、ロンドン市場の金利と東京市場の金利)を交換するベーシス・スワップが貸借対照表上の資産と負債の金利インデックスを一致させることを目的としている場合には、特例処理の適用を認めてよいと考えられている。

(了)

この連載の公開日程は、下記の連載目次をご覧ください。

連載目次

「金融商品会計を学ぶ」(全29回)

【参考記事】
「減損会計を学ぶ」(全24回)

【参考記事】
「税効果会計を学ぶ」(全24回)

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筆者紹介

  • 阿部 光成

    (あべ・みつまさ)

    公認会計士
    中央大学商学部卒業。阿部公認会計士事務所。

    現在、豊富な知識・情報力を活かし、コンサルティング業のほか各種実務セミナー講師を務める。
    企業会計基準委員会会社法対応専門委員会専門委員、日本公認会計士協会連結範囲専門委員会専門委員長、比較情報検討専門委員会専門委員長を歴任。

    主な著書に、『新会計基準の実務』(編著、中央経済社)、『企業会計における時価決定の実務』(共著、清文社)、『新しい事業報告・計算書類―経団連ひな型を参考に―〔全訂版〕』(編著、商事法務)がある。

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