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金融商品会計を学ぶ 【第11回】「満期保有目的の債券の会計処理」

筆者:阿部 光成

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金融商品会計を学ぶ

【第11回】

「満期保有目的の債券の会計処理」

 

公認会計士 阿部 光成

 

今回は、「金融商品に関する会計基準」(企業会計基準第10号。以下「金融商品会計基準」という)及び「金融商品会計に関する実務指針」(会計制度委員会報告第14号。以下「金融商品実務指針」という)に規定する満期保有目的の債券の会計処理について解説する。
なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。

 

Ⅰ 満期保有目的の債券とは

1 定義

「満期保有目的の債券」とは、満期まで所有する意図をもって保有する社債その他の債券のことをいう(金融商品会計基準16項)。

債券には、国債、社債、転換社債型新株予約権付社債などがあるが(金融商品実務指針68項)、このうち満期保有目的の債券に分類できるものは、定義及び要件を満たす債券に限られる(金融商品実務指針272項)。

償還株式は厳密には債券ではないが、一定額で償還されるという債券との類似性に着目してその範囲に含められている。一定額で償還されない償還株式は持分証券(株式)として取り扱う(金融商品実務指針68項)。

2 条件

満期保有目的の債券に分類するためには、価格変動のリスクのないことがポイントとなる。そのため、(a)あらかじめ償還日が定められており、かつ、(b)額面金額による償還が予定されているという条件を満たす必要がある(金融商品実務指針68項、272項)。

債券であっても、その属性から満期保有目的の条件を満たさないものは、この区分に含めることはできず、次のことに留意が必要である(金融商品実務指針68項、272項)。

 転換社債型新株予約権付社債は、債券の一種であるが、その性質上、満期まで保有するメリットが少なく、満期前に株式に転換することが期待されているため、基本的には満期保有目的にはなじまない。ただし、転換社債型新株予約権付社債であっても、株価が行使価格に比して大幅に下落したため、株式転換権の行使が将来的に全く期待し得ない状況において、転換社債型新株予約権付社債を普通社債と同様に最終利回りに着目して取得する場合には、満期保有の条件を満たすこともある。

 満期の定めのない永久債は、属性としては満期保有目的の条件を満たさない。ただし、償還する権利を発行者がコール・オプションとして有しているものについては、その契約条項等からみて、償還が実行される可能性が極めて高いと認められれば、満期保有目的の条件を満たすものといえる。

 抽選償還が特約として付されている債券又は期前償還する権利を発行者がコール・オプションとして有している債券(いわゆるコーラブル債)については、満期到来前に償還される可能性があるとしても、満期保有目的の条件を損なうものではない。ただし、プッタブル債のように、保有者側の権利として償還権が付与されている場合には、満期保有の意思が否定される。

 債券が属性として有する元本リスク(信用リスク、為替リスク等)は満期保有目的の条件を否定するものではない。

 償還時の平均株価等によって償還元本が増減することが約定された株価リンク債、償還時の為替相場によって償還元本が増減する為替リンク債等の仕組債については、そのスキーム上リスクが元本に及ぶものであるため、複合金融商品として組込デリバティブ部分を区分処理するとしても満期保有目的の条件を満たさない。

 上記(a)及び(b)の条件を満たせば、約定金利については固定利付もしくは変動利付、又はゼロ・クーポン債であっても満期保有の要件に抵触しない。

 満期保有目的の債券は、当該保有目的区分へ分類するための要件から、信用リスクの高くない債券が対象となる(金融商品実務指針274項、「金融商品会計に関するQ&A」Q22)。

 

Ⅱ 「満期まで所有する意図をもって保有する」とは

「満期まで所有する意図をもって保有する」とは、企業が償還期限まで所有するという積極的な意思とその能力に基づいて保有することをいう(金融商品会計基準16項、金融商品実務指針69項)。

次のことに留意する(金融商品実務指針69項、273項)。

 保有期間が漠然と長期であると想定し保有期間をあらかじめ決めていない場合、又は市場金利や為替相場の変動等の将来の不確定要因の発生いかんによっては売却が予測される場合には、満期まで所有する意思があるとは認められない。

 満期までの資金繰り計画等から見て、又は法律等の障害により継続的な保有が困難と判断される場合には、満期まで所有する能力があるとは認められない。

 満期まで所有する意図は取得時点において判断する。

 一旦、他の保有目的で取得した債券について、その後保有目的を変更して満期保有目的の債券に振り替えることは認められない。

 

Ⅲ 満期保有目的の債券の会計処理

1 考え方

金融商品会計基準は、満期保有目的の債券に関する会計処理の考え方を次のように説明している(金融商品会計基準71項、金融商品実務指針272項、273項)。

 満期保有目的の債券は、時価が算定できるものであっても、満期まで保有することによる約定利息及び元本の受取りを目的としており、満期までの間の金利変動による価格変動のリスクを認める必要がないこと。

 債券の保有に伴うキャッシュ・フローを満期まで保有することによりあらかじめ確定させようとする企業の合理的な投資行動を、時価評価の例外的な取扱いとして認める趣旨であること。

2 貸借対照表価額及び償却原価法

満期保有目的の債券については、取得原価をもって貸借対照表価額とする(金融商品会計基準16項)。

ただし、債券を債券金額より低い価額又は高い価額で取得した場合において、取得価額と債券金額との差額の性格が金利の調整と認められるときは、償却原価法に基づいて算定された価額をもって貸借対照表価額としなければならない(金融商品会計基準16項)。

次のことに留意する。

 償却原価法とは、金融資産又は金融負債を債権額又は債務額と異なる金額で計上した場合において、当該差額に相当する金額を弁済期又は償還期に至るまで毎期一定の方法で取得価額に加減する方法である(金融商品会計基準注5)。

 取得価額と債券金額との差額(取得差額)が発生する要因には、クーポンレートと取得時の市場利子率との調整に基づくものと債券の発行体の信用力の変動や減損及びその他の要因があるが、償却原価法の対象となるのは、取得差額が金利の調整部分(金利調整差額)により生じた場合に限定される(金融商品実務指針70項、274項)。

 償却原価法は、原則として、利息法による(継続適用を条件として、簡便法である定額法を採用できる。金融商品実務指針70項)。

 取得差額のうち償却原価法の対象とされるのはクーポンレートと市場利子率との調整部分であるから、その適用によって取得価額に加減する金額の性格は有価証券利息である(金融商品実務指針274項)。

 減損処理を行った債券については、取得差額はもはや金利調整差額とは考えられないので、以後、償却原価法の適用はない(「金融商品会計に関するQ&A」Q25)。

3 満期保有目的の債券の売却取引

満期保有目的の債券を償還期限前に売却した場合、売却価額と売却時の償却原価との差額を当期の売却損益に計上する(金融商品実務指針83項ただし書、71項)。

次のことに留意する(金融商品実務指針71項、275項)。

 償却原価法として「利息法」を採用しているときの売却原価の算定は「先入先出法」による。

 償却原価法として「定額法」を採用しているときの売却原価の算定は「先入先出法」又は「平均法」のいずれかによる。

 抽選償還又は発行者のコール・オプションの行使により期限前償還が行われた場合の償還時の償却原価と償還額との差額は、原則として、償還された期の有価証券利息に含める。

4 満期保有目的の債券の売却に係る損益の表示

「金融商品会計に関するQ&A」Q68では、満期保有目的の債券の売却損益は、残りの満期保有目的の債券の保有意思を否定されない合理的な理由による売却に伴う損益である限り、純額で営業外損益に計上することが適切としている。

ただし、満期保有目的の債券の売却は厳しく制限されており(金融商品実務指針83項)、合理的な理由によらない売却に伴う損益は、特別損益に計上する必要があると述べている。

(了)

「金融商品会計を学ぶ」は、隔週で掲載されます。

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筆者紹介

  • 阿部 光成

    (あべ・みつまさ)

    公認会計士
    中央大学商学部卒業。阿部公認会計士事務所。

    現在、豊富な知識・情報力を活かし、コンサルティング業のほか各種実務セミナー講師を務める。
    企業会計基準委員会会社法対応専門委員会専門委員、日本公認会計士協会連結範囲専門委員会専門委員長、比較情報検討専門委員会専門委員長を歴任。

    主な著書に、『新会計基準の実務』(編著、中央経済社)、『企業会計における時価決定の実務』(共著、清文社)、『新しい事業報告・計算書類―経団連ひな型を参考に―〔全訂版〕』(編著、商事法務)がある。

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