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税効果会計を学ぶ 【第2回】「資産負債法と繰延法」

筆者:阿部 光成

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税効果会計を学ぶ

【第2回】

「資産負債法と繰延法」

 

公認会計士 阿部 光成

 

Ⅰ 税効果会計に関連する会計基準等

税効果会計の適用は、会計基準等に準拠して行うこととなる。
ただし、次のように税効果会計に関連する会計基準等は多数あるので、実務上、関連する規定を探すのに苦労することがある。そこで、データベース化された会計基準等を用いて、検索機能を活用することが考えられる。
なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。

① 税効果会計に係る会計基準の設定に関する意見書(以下「税効果意見書」という)

② 税効果会計に係る会計基準・注解(以下「税効果会計基準」という)

③ 個別財務諸表における税効果会計に関する実務指針(会計制度委員会報告第10号。以下「個別税効果会計実務指針」という)

④ 税効果会計に関するQ&A

⑤ その他有価証券の評価差額及び固定資産の減損損失に係る税効果会計の適用における監査上の取扱い(監査委員会報告第70号)

⑥ 連結財務諸表における税効果会計に関する実務指針(会計制度委員会報告第6号)

⑦ 中間財務諸表等における税効果会計に関する実務指針(会計制度委員会報告第11号)

⑧ 繰延税金資産の回収可能性の判断に関する監査上の取扱い(監査委員会報告第66号)

このほか、組織再編に関連する税効果会計の取扱いについては、「企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針」(企業会計基準適用指針第10号)に規定がある。

また、四半期財務諸表に関しては、

・四半期財務諸表に関する会計基準(企業会計基準第12号)

・四半期財務諸表に関する会計基準の適用指針(企業会計基準適用指針第14号)

・改正法人税法及び復興財源確保法に伴う税率変更等に係る四半期財務諸表における税金費用の実務上の取扱い(実務対応報告第28号)

・改正法人税法及び復興財源確保法に伴い税率が変更された事業年度の翌事業年度以降における四半期財務諸表の税金費用に関する実務上の取扱い(実務対応報告第29号)

に規定がある。

連結納税制度を適用する場合の税効果会計については、企業会計基準委員会から、実務対応報告5号と実務対応報告7号が公表されている。

 

Ⅱ 資産負債法と繰延法

本連載の第1回では、税効果会計のポイントとして次のことを述べた。

  • 法人税等を控除する前の当期純利益と法人税等を合理的に対応させること
  • 企業会計上の資産又は負債の額と課税所得計算上の資産又は負債の額の相違に着目すること

前者については第1回において述べたので、今回は後者について解説を行う。

税効果会計の方法には、資産負債法繰延法がある(税効果意見書三、個別税効果会計実務指針33項)。
両者の基本的な相違は、「調整対象となる差異の内容」と「適用する税率」にある。

1 繰延法

繰延法は、損益項目に着目し、会計上の収益又は費用の金額と税務上の益金又は損金の額に相違がある場合に、当該差異を「期間差異」と「永久差異」に分け、期間差異(損益の期間帰属の相違に基づく差異)について、税効果を認識する方法である(個別税効果会計実務指針33項。手塚仙夫『税効果会計の実務(第7版)』(清文社・2011年・21ページ))。

期間差異の例としては、会計上の費用の認識時期と税務上の損金の認識時期の相違となる、棚卸資産の有税評価減があげられる。
また、永久差異の例としては、将来の課税所得の調整が行われない、交際費の損金不算入があげられる。

繰延法は実際に課税関係が生じたときの税率を用いるので、税効果会計に適用される税率は、期間差異が発生した年度の課税所得に適用された税率となる(個別税効果会計実務指針33項)。

2 資産負債法

資産負債法は、残高項目に着目し、会計上の資産又は負債の金額と税務上の資産又は負債の金額との間に差異があり、会計上の資産又は負債が将来回収又は決済されるなどにより当該差異が解消されるときに、税金を減額又は増額させる効果がある場合に、当該差異(一時差異)について、税効果を認識する方法である(個別税効果会計実務指針33項)。

資産負債法に適用される税率は、一時差異が解消される将来の年度に適用される税率である(個別税効果会計実務指針33項)。

3 税効果会計基準で採用した資産負債法

税効果会計基準で採用した方法は、資産負債法である(税効果意見書三)。

資産負債法は、税率変更等に応じて繰延税金資産又は繰延税金負債が回収額又は支払額をより適切に示す方法であり、国際的にも主流となっている方法である(「連結財務諸表制度の見直しに関する意見書」(企業会計審議会)第二部、二、3(3))。

一時差異(資産負債法)と期間差異(繰延法)の範囲はほぼ一致するが、例えば、「その他有価証券」について時価評価したときの評価差額のように、直接純資産の部に計上された評価差額は一時差異ではあるが期間差異ではない。
なお、期間差異に該当する項目は、すべて一時差異に含まれる(個別税効果会計実務指針33項)。

4 数値例

第1回で用いた設例を使い、資産負債法に従って解説を行う。

[数 値 例]

(前提)

① 滞留棚卸資産 1,500千円について評価減 1,000千円を行い、帳簿価額を 500千円とした。

② 評価減 1,000千円は税務上、損金とならないので、別表四で申告加算し、別表五で繰り越している。

③ 法定実効税率は40%とする。

※1 : (税引前当期純利益5,000+評価減1,000)×法定実効税率40% = 2,400
※2 : 評価減1,000(=税務上の帳簿価額1,500-会計上の帳簿価額500)×法定実効税率40% = 400

(仕訳)
     繰延税金資産(BS)  400  /  法人税等調整額(PL)  400

税効果会計基準では資産負債法を採用しているので、当該方法に従って算出すると、税務上の資産の額1,500と会計上の資産の額500との差額1,000が一時差異となる。

法定実効税率40%が、将来において、回収又は支払いが行われると見込まれる期の税率である場合には(個別税効果会計実務指針17項)、前述の一時差異1,000に40%を乗じて、繰延税金資産400が認識されることになる。

(了)

「税効果会計を学ぶ」は、隔週の掲載となります。

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筆者紹介

  • 阿部 光成

    (あべ・みつまさ)

    公認会計士
    中央大学商学部卒業。阿部公認会計士事務所。

    現在、豊富な知識・情報力を活かし、コンサルティング業のほか各種実務セミナー講師を務める。
    企業会計基準委員会会社法対応専門委員会専門委員、日本公認会計士協会連結範囲専門委員会専門委員長、比較情報検討専門委員会専門委員長を歴任。

    主な著書に、『新会計基準の実務』(編著、中央経済社)、『企業会計における時価決定の実務』(共著、清文社)、『新しい事業報告・計算書類―経団連ひな型を参考に―〔全訂版〕』(編著、商事法務)がある。

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