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税効果会計を学ぶ 【第12回】「役員賞与に係る引当金とストック・オプション、将来加算一時差異」

筆者:阿部 光成

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税効果会計を学ぶ

【第12回】

「役員賞与に係る引当金と

ストック・オプション、将来加算一時差異」

公認会計士 阿部 光成

 

前回までに触れていない一時差異等のうち、役員賞与に係る引当金とストック・オプション、将来加算一時差異を取り上げる。
なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。

 

Ⅰ 役員賞与に係る引当金とストック・オプション

「個別財務諸表における税効果会計に関する実務指針」(会計制度委員会報告第10号。以下「個別税効果会計実務指針」という)14項では、税引前当期純利益の計算において費用又は収益として計上されるが、課税所得の計算上は永久に損金又は益金に算入されない項目については、将来、課税所得の計算上で加算又は減算させる効果をもたないため一時差異等には該当せず、税効果会計の対象とはならないとされている。

「税効果会計に関するQ&A」のQ2では、役員賞与に係る引当金及びストック・オプションに係る費用について次のように述べている。

これらは、一時差異等の定義を満たしており税効果会計の対象となるのか、それともそもそも一時差異等に該当しないのかという論点について、整理したものと解される。

1 役員賞与に係る引当金

役員賞与は、発生した会計期間の費用として処理されることとされ、当事業年度の職務に係る役員賞与を期末後に開催される株主総会の決議事項とする場合には、当該支給は株主総会の決議が前提となるので、当該決議事項とする額又はその見込額(当事業年度の職務に係る額に限る)は、原則として、引当金に計上する(「役員賞与に関する会計基準」(企業会計基準第4号)3項、13項)。

税務上、役員給与のうち損金に算入される額は、一定の要件を満たしたものに限られているので(法人税法34条から36条)、会計上、費用処理された役員賞与のうち将来にわたって損金算入されないものは、将来減算一時差異に該当しないので、税効果会計の対象とはならない。

2 ストック・オプションに係る費用

いわゆる税制適格ストック・オプション(租税特別措置法29条の2)については、従業員等の個人において給与所得等が非課税となり、法人において当該役務提供に係る費用の額が損金に算入されないので(法人税法54条2項)、将来減算一時差異に該当せず、税効果会計の対象とはならない。

また、いわゆる税制非適格ストック・オプションについては、従業員等の個人が給与所得等として課税されるときは、給与等課税事由が生じた日(権利行使日)に、法人において、当該役務提供に係る費用の額が損金に算入されるので(法人税法54条1項)、ストック・オプションの付与時において将来減算一時差異に該当し、税効果会計の対象となる。

 

Ⅱ 将来加算一時差異

1 将来加算一時差異の例示

将来加算一時差異は、将来の課税所得の計算上で加算効果のある一時差異であり、差異が生じたときに課税所得の計算上減算され、将来、当該差異が解消するときに課税所得の計算上加算される(個別税効果会計実務指針9項、10項)。

例えば、減価償却資産について剰余金の処分(積立金方式)により圧縮記帳を実施した場合は、会計上の簿価は固定資産の取得価額で計上され、その後の減価償却計算等の基礎となるが、税務上の簿価は固定資産の取得価額から圧縮積立金を控除した後の額となり、当該資産の会計上の簿価と税務上の簿価との間に差額が生ずる。

当該差額は、将来の減価償却の実施により、会計上の減価償却費が税務上の減価償却費の損金算入限度額を超過することになり、当該償却超過額に相当する額について圧縮積立金を取り崩し、将来の課税所得の計算上当該圧縮積立金取崩高が加算されることになるため、将来加算一時差異となる。

そのほか、将来加算一時差異の例としては次のものがあげられる。

① 税務上の特別償却額や資産又は負債の評価替えにより生じた評価差益

② 完全支配関係にある国内会社間の資産の移転による譲渡益の繰延べに係る税務上の調整負債

③ 完全支配関係にある国内会社間の寄附金支出法人の株主における子会社株式の税務上の簿価修正

④ 積立金方式による租税特別措置法上の特別償却準備金等

2 積立金方式による諸準備金等

個別税効果会計実務指針20項では、圧縮積立金、特別償却準備金、その他租税特別措置法上の諸準備金の積立額及び取崩額は、税効果相当額を控除した純額によると規定している。つまり、純資産の部に計上する諸準備金等については、繰延税金負債控除後の純額を積み立てることとなる。

諸準備金等に係る一時差異については、個別税効果会計実務指針15項に従って適用すると税効果額が繰延税金負債として計上され、同額が損益計算書上の法人税等調整額に計上される。これにより、繰越利益剰余金の金額は、法人税等調整額に借記した額だけ税効果会計を適用する前に比べて減少することとなる(個別税効果会計実務指針38項、39項)。

このため、諸準備金等は、純資産の部に繰延税金負債控除後の純額をもって計上することになり、純資産の部に計上する諸準備金等については、繰延税金負債控除後の純額を積み立てることとなる。

いったん純資産の部で積み立てられた諸準備金等は、税務上の加算に対応して取り崩すことになる。

(了)

「税効果会計を学ぶ」は、隔週の掲載となります。

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筆者紹介

  • 阿部 光成

    (あべ・みつまさ)

    公認会計士
    中央大学商学部卒業。阿部公認会計士事務所。

    現在、豊富な知識・情報力を活かし、コンサルティング業のほか各種実務セミナー講師を務める。
    企業会計基準委員会会社法対応専門委員会専門委員、日本公認会計士協会連結範囲専門委員会専門委員長、比較情報検討専門委員会専門委員長を歴任。

    主な著書に、『新会計基準の実務』(編著、中央経済社)、『企業会計における時価決定の実務』(共著、清文社)、『新しい事業報告・計算書類―経団連ひな型を参考に―〔全訂版〕』(編著、商事法務)がある。

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