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ストック・オプション会計を学ぶ 【第9回】「ストック・オプションと業務執行や労働サービスとの対応関係の認定①」

筆者:阿部 光成

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ストック・オプション会計学ぶ

【第9回】

「ストック・オプションと業務執行や労働サービスとの対応関係の認定①」

 

公認会計士 阿部 光成

 

Ⅰ はじめに

今回と次回において、「ストック・オプション等に関する会計基準」(企業会計基準第8号。以下「ストック・オプション会計基準」という)及び「ストック・オプション等に関する会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第11号。以下「ストック・オプション適用指針」という)にしたがって、ストック・オプションと業務執行や労働サービスとの対応関係の認定について解説する。

 

Ⅱ ストック・オプションと業務執行や労働サービスとの対応関係の認定

ストック・オプション会計における各会計期間の費用計上額は、ストック・オプションの公正な評価額のうち、対象勤務期間を基礎とする方法その他の合理的な方法に基づき当期に発生したと認められる額として算定される(ストック・オプション会計基準5項)。

これは、ストック・オプションの公正な評価額を、これと対価関係にあるサービスの受領に対応させて費用計上することを示している(ストック・オプション適用指針17項)。

その対応関係は、ストック・オプションに係る企業と従業員等との間の契約によって決まり、その合理的な解釈によって判断すべきものと考えられている(ストック・オプション適用指針50項)。

各用語は、次の図表のように定義されている(ストック・オプション会計基準2項(6)(7)(9))。

株式報酬費用○○○/新株予約権○○○対象勤務期間 ・ストック・オプションと報酬関係にあるサービスの提供期間である。 ・付与日から権利確定日までの期間をいう。付与日 ・ストック・オプションが付与された日をいう。 ・募集新株予約権の割当日(会社法238条1項4号)である。権利確定日 ・権利の確定した日をいう。 ・権利確定日が明らかではない場合には、原則として、ストック・オプションを付与された従業員等がその権利を行使できる期間(権利行使期間)の開始日の前日を権利確定日とみなす。

 

1 権利確定日

ストック・オプションには、権利行使により対象となる株式を取得することができるというストック・オプション本来の権利を獲得すること(権利の確定という)について条件が付されているものが多い。

権利の確定についての条件(権利確定条件)には、「勤務条件」や「業績条件」がある(ストック・オプション会計基準2項(2))。

  • 「勤務条件」とは、ストック・オプションのうち、条件付きのものにおいて、従業員等の一定期間の勤務や業務執行に基づく条件をいう(ストック・オプション会計基準2項(10))。
  • 「業績条件」とは、ストック・オプションのうち、条件付きのものにおいて、一定の業績(株価を含む)の達成又は不達成に基づく条件をいう(ストック・オプション会計基準2項(11))。

権利確定日は次のように判定する(ストック・オプション適用指針17項)。

 勤務条件が付されている場合

  • 勤務条件を満たし権利が確定する日

 勤務条件は明示されていないが、権利行使期間の開始日が明示されており、かつ、それ以前にストック・オプションを付与された従業員等が自己都合で退職した場合に権利行使ができなくなる場合

  • 権利行使期間の開始日の前日(ストック・オプション会計基準2項(7))
  • この場合には、勤務条件が付されているものとみなす。

 条件の達成に要する期間が固定的ではない権利確定条件が付されている場合

  • 権利確定日として合理的に予測される日

 

次のことに注意する(ストック・オプション適用指針51項)。

(a) 勤務条件等、条件達成に要する期間が固定的である権利確定条件が付されている場合には、付与日からその期間の末日までが対象勤務期間である。

(b) 勤務条件が明示されていなくても、権利行使期間の開始日が明示されており、かつ、ストック・オプションを付与された従業員等が権利行使期間の開始日より前に自己都合で退職すれば権利行使できない場合には、実質的に、権利行使期間開始日の前日までの勤務の継続を権利確定条件(勤務条件)として要求しているものと理解することができる。

(c) 業績条件等、条件達成に要する期間が固定的でない権利確定条件が付されている場合であっても、権利確定日を合理的に予測することができる場合には、この予測により対象勤務期間を判定することになる。

2 権利確定条件が付されていない場合及び権利確定日を合理的に予測することができない場合

権利確定条件が付されていない場合(すなわち、付与日にすでに権利が確定している場合)には、対象勤務期間はなく、付与日に一時に費用を計上する(ストック・オプション適用指針18項)。

このようなケースは、付与日以前のサービス提供に対する対価としてストック・オプションが付与されたものと理解されるためである(ストック・オプション適用指針56項)。

ストック・オプション適用指針17項(3)の場合(上掲の場合)において、株価条件が付されている等、権利確定日を合理的に予測することが困難なため、予測を行わないときには、対象勤務期間はないものとみなし、付与日に一時に費用を計上する(ストック・オプション適用指針18項、56項)。

3 複数の権利確定条件が付されている場合

複数の権利確定条件が付されている場合、権利確定日は次のように判定する(ストック・オプション適用指針19項)。

 複数の権利確定条件のうち、いずれか1つを満たせばストック・オプションの権利が確定する場合

⇒ 最も早期に達成される条件が満たされる日

 複数の権利確定条件のすべてを満たさなければストック・オプションの権利が確定しない場合

⇒ 達成に最も長期を要する条件が満たされる日

 

ストック・オプションの権利が確定するために、ともに満たすべき複数の条件と、いずれか1つを満たせば足りる複数の条件とが混在している場合には、上記を組み合わせて判定する。

また、株価条件等、条件の達成に要する期間が固定的でなく、かつ、その権利確定日を合理的に予測することが困難な権利確定条件(ストック・オプション適用指針18項後段)が付されているため、予測を行わない場合については、ストック・オプション適用指針19項の適用上は、当該権利確定条件は付されていないものとみなすことになる(ストック・オプション適用指針19項また書き)。

次のことに注意する(ストック・オプション適用指針52項)。

(a) これは、勤務条件が付されているストック・オプションについて、さらに株価条件が付されており、その株価条件を達成すれば、勤務条件の達成を待たずにストック・オプションの権利が確定することとされている場合であって、株価条件による権利確定日の予測を行わない場合には、勤務条件のみが付されているものとして会計処理を行うということである。

(b) ただし、この場合でも、勤務条件の達成を待たずに権利確定した場合には、対象勤務期間のうち、残りの期間に計上する予定であった費用を権利確定時に一時に計上することになる。

 

(了)

「ストック・オプション会計を学ぶ」は、隔週で掲載されます。

連載目次

【参考記事】
「金融商品会計を学ぶ」(全29回)

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「減損会計を学ぶ」(全24回)

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「税効果会計を学ぶ」(全24回)

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筆者紹介

  • 阿部 光成

    (あべ・みつまさ)

    公認会計士
    中央大学商学部卒業。阿部公認会計士事務所。

    現在、豊富な知識・情報力を活かし、コンサルティング業のほか各種実務セミナー講師を務める。
    企業会計基準委員会会社法対応専門委員会専門委員、日本公認会計士協会連結範囲専門委員会専門委員長、比較情報検討専門委員会専門委員長を歴任。

    主な著書に、『新会計基準の実務』(編著、中央経済社)、『企業会計における時価決定の実務』(共著、清文社)、『新しい事業報告・計算書類―経団連ひな型を参考に―〔全訂版〕』(編著、商事法務)がある。

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