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税効果会計を学ぶ 【第10回】「取締役会等の承認を得た経営計画等及び会社分類(例示区分)の見直し」

筆者:阿部 光成

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税効果会計を学ぶ

【第10回】

「取締役会等の承認を得た経営計画等

及び会社分類(例示区分)の見直し」

 

公認会計士 阿部 光成

 

今回は、「繰延税金資産の回収可能性の判断に関する監査上の取扱い」(監査委員会報告第66号。以下「監査委員会報告第66号」という)を適用する際の留意点について解説を行う。
なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。

 

Ⅰ 取締役会等の承認を得た経営計画等

1 経営計画等

監査委員会報告第66号は、収益力に基づく課税所得の十分性を根拠に繰延税金資産を計上する場合は、会社によって将来の業績予測が作成されていなければならないと規定している(監査委員会報告第66号5(3))。

将来の業績予測は、事業計画や経営計画又は予算編成の一部等その呼称にかかわらず、原則として、取締役会や常務会等(以下「取締役会等」という)の承認を得たものであることが必要であるとされている。

ただし、取締役会等の承認を得た経営計画等だからといって、ただちにそれが収益力に基づく課税所得の十分性の根拠となるわけではないことに注意が必要である。
例えば、従来、損失を計上していた会社において、社員に奮起を促すために、高い利益目標を掲げ、右肩上がりの経営計画等を策定することが考えられる。経営者としては高い利益目標を掲げ、社員に奮起を促すこと自体はおかしなことではない。

しかしながら、当該経営計画等が、過年度の実績のトレンドと比較して乖離しており、あまりにも楽観的である場合には、よほど積極的な根拠が示されない限り、その実現可能性に問題があるものと思われる。
取締役会等の承認を得た経営計画等であったとしても、その実現可能性を考慮し、一定のストレスをかけるなどをして、繰延税金資産の回収可能性を判断する際の収益力に基づく課税所得の十分性に用いることが考えられる。

監査委員会報告第66号でも、取締役会等の承認を得たものであっても、会社の現状の収益力等を勘案し、明らかに合理性を欠く業績予測であると認められる場合には、適宜その修正を行った上で課税所得を見積もる必要があることに留意すると規定している(監査委員会報告第66号5(3))。

2 経営計画等の見直し

前述のとおり、収益力に基づく課税所得の十分性を検討する際には、取締役会等の承認を得た経営計画等がポイントとなる。

年度決算においては、第3四半期までの実績が明らかになっているので、そのトレンドも踏まえ、従来の経営計画等と実績についての分析を行い、従来のトレンドが今後も継続するかどうか、また、経営計画等と実績との乖離が大きい場合には、その理由はどのようなものかなどを調査し、必要に応じて、新たな経営計画等に反映し、取締役会等の承認を得ることになると考えられる。

3 5年以内のより短い期間

将来の課税所得の合理的な見積可能期間(おおむね5年)は、個々の会社の業績予測期間、業績予測能力、会社の置かれている経営環境等を勘案した結果、5年以内のより短い期間となる場合がある。

その場合には、この短い期間を合理的な見積可能期間とする必要があることに留意する(監査委員会報告第66号5(3))。

 

Ⅱ 会社分類(例示区分)の見直し

繰延税金資産の回収可能性の検討に当たっては、第3四半期までの実績及び今後の経営計画等を慎重に検討の上、会社分類等の妥当性について検討を行うことが考えられる。

会社分類(例示区分)の判断に際しては、以下の点に留意することが必要と考えられる。

1 会社分類(例示区分)①について

会社分類(例示区分)①の会社等とは、「期末における将来減算一時差異を十分に上回る課税所得を毎期計上している会社等」である。

ここでは、将来減算一時差異を十分に上回る課税所得が毎期計上されていることが必要である。単に課税所得が将来減算一時差異を上回っているだけでなく、「十分に」上回る課税所得が毎期計上されていること、という点に注意が必要である。

2 会社分類(例示区分)②について

会社分類(例示区分)②の会社等とは、「業績は安定しているが、期末における将来減算一時差異を十分に上回るほどの課税所得がない会社等」である。

監査委員会報告第66号では、過去の業績が安定している会社等を、「当期及び過去(おおむね3年以上)連続してある程度の経常的な利益を計上しているような会社」と規定している。

「過去の業績が安定しているかどうか」については判断が必要になると解されるが、会社によっては、わずかな利益額であるものの、トレンドとしては安定的であるケースも考えられる。

監査委員会報告第66号は、将来年度の会社の収益力を客観的に判断することは実務上困難な場合が多いことから、会社の過去の業績等の状況を主たる判断基準として、将来年度の課税所得の見積額による繰延税金資産の回収可能性を判断する場合の指針を示している(監査委員会報告第66号5)。

繰延税金資産の回収可能性は将来年度の会社の収益力に依存するものであり、会社の基礎収益力等を的確に把握することがポイントと解される。
このため、単に利益額が安定しているかどうかをもって安易に会社分類(例示区分)②に該当すると判断するのではなく、「当期及び過去(おおむね3年以上)連続してある程度の経常的な利益を計上している」ことについて適切に判断する必要があると考えられる。

3 会社分類(例示区分)④但書について

会社分類(例示区分)④の会社等とは、「重要な税務上の繰越欠損金が存在する会社等」をいう。

監査委員会報告第66号では、会社分類(例示区分)④の但書において、「例えば、事業のリストラクチャリングや法令等の改正などによる非経常的な特別の原因により発生したものであり、それを除けば課税所得を毎期計上している会社の場合には、将来の合理的な見積可能期間(おおむね5年)内の課税所得の見積額を限度」として繰延税金資産は回収可能性があると判断できると規定されている。

「非経常的な特別原因」とは、リストラクチャリングや法令等の改正などが想定されているので、通常の事業活動を行っているときに潜在的に常時存在する事象、すなわち、景気の悪化、株価の下落、取引先の破綻のみでは非経常的な特別の原因には該当しないと解される。

(了)

「税効果会計を学ぶ」は、隔週の掲載となります。

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筆者紹介

  • 阿部 光成

    (あべ・みつまさ)

    公認会計士
    中央大学商学部卒業。阿部公認会計士事務所。

    現在、豊富な知識・情報力を活かし、コンサルティング業のほか各種実務セミナー講師を務める。
    企業会計基準委員会会社法対応専門委員会専門委員、日本公認会計士協会連結範囲専門委員会専門委員長、比較情報検討専門委員会専門委員長を歴任。

    主な著書に、『新会計基準の実務』(編著、中央経済社)、『企業会計における時価決定の実務』(共著、清文社)、『新しい事業報告・計算書類―経団連ひな型を参考に―〔全訂版〕』(編著、商事法務)がある。

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