税効果会計を学ぶ 【第6回】「対象となる税金と一時差異等」
筆者:阿部 光成
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適用指針等を織り込んだ最新版の『税効果会計を学ぶ』が好評連載中です。
税効果会計を学ぶ
【第6回】
「対象となる税金と一時差異等」
公認会計士 阿部 光成
前回までの「税効果会計を学ぶ」において、一時差異等から始まり、繰延税金資産の回収可能性の判断、繰延税金資産及び繰延税金負債等の表示方法並びに注記事項までという一連のプロセスを解説した。
今回は、一時差異等に戻り、関連する事項について解説を行う。
文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。
Ⅰ 税効果会計の対象となる税金
法人税等とは、法人税、都道府県民税及び市町村民税(以下「住民税」という)並びに事業税(収入金額その他利益以外のものを課税標準とする事業税を除く)である。外国法人税等も法人税等に含まれる(「個別財務諸表における税効果会計に関する実務指針」(会計制度委員会報告第10号。以下「個別税効果会計実務指針」という)3項)。
税効果会計の対象となる税金をまとめると、次のようになる(個別税効果会計実務指針36項)。
〈法人税その他利益に関連する金額を課税標準とする税金〉
① 法人税
② 住民税
③ 事業税
④ 外国で課される利益を課税標準とする税金
〈税効果会計の対象とならない税金〉
① 土地譲渡益に課される特別税金
② 固定資産税(所得以外を課税標準とする税金)
③ 事業所税(所得以外を課税標準とする税金)
④ 過少申告加算税(ペナルティとしての性格をもつ税金)
⑤ 重加算税(ペナルティとしての性格をもつ税金)
⑥ 消費税(利益以外に課税する税金)
⑦ 同族会社の留保金に課される税金
⑧ 住民税の均等割
⑨ 収入金額その他利益以外のものを課税標準とする事業税
Ⅱ 一時差異
税効果会計は、企業会計上の資産又は負債の額と課税所得計算上の資産又は負債の額の相違に着目して、法人税等を控除する前の当期純利益と法人税等を合理的に対応させることを目的とする手続である。
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連載目次
「税効果会計を学ぶ」(全24回)
- 【第1回】 税効果会計の適用による損益計算書と貸借対照表
- 【第2回】 資産負債法と繰延法
- 【第3回】 繰延税金資産の回収可能性の判断ポイント
- 【第4回】 適用する法定実効税率
- 【第5回】 繰延税金資産及び繰延税金負債等の表示方法並びに注記事項
- 【第6回】 対象となる税金と一時差異等
- 【第7回】 一時差異等に係る税効果の認識
- 【第8回】 繰延税金資産の回収可能性に関する監査上の基本的考え方
- 【第9回】 タックスプランニング
- 【第10回】 取締役会等の承認を得た経営計画等及び会社分類(例示区分)の見直し
- 【第11回】 将来解消見込年度が長期にわたる将来減算一時差異
- 【第12回】 役員賞与に係る引当金とストック・オプション、将来加算一時差異
- 【第13回】 その他有価証券の評価差額の取扱い①
- 【第14回】 その他有価証券の評価差額の取扱い②
- 【第15回】 その他有価証券の評価差額の取扱い③
- 【第16回】 連結財務諸表における税効果会計の取扱い①
- 【第17回】 連結財務諸表における税効果会計の取扱い②~子会社の資産及び負債の時価評価による評価差額
- 【第18回】 連結財務諸表における税効果会計の取扱い③~未実現損益に係る一時差異
- 【第19回】 連結財務諸表における税効果会計の取扱い④~連結会社相互間の債権と債務の相殺消去による貸倒引当金の減額修正
- 【第20回】 連結財務諸表における税効果会計の取扱い⑤~のれん・子会社への投資の評価減に関する税効果
- 【第21回】 連結財務諸表における税効果会計の取扱い⑥~子会社への投資に係る一時差異
- 【第22回】 連結財務諸表における税効果会計の取扱い⑦~留保利益などに係る一時差異
- 【第23回】 完全支配関係にある国内会社間の譲渡取引
- 【第24回】 繰延税金資産及び繰延税金負債の表示・税効果会計に関する注記
【参考記事】
「ストック・オプション会計を学ぶ」(全12回)
- 【第1回】 ストック・オプションを巡る最近の動向
- 【第2回】 ストック・オプション会計基準の適用範囲
- 【第3回】 ストック・オプションの会計処理の概要
- 【第4回】 権利確定日以前の会計処理
- 【第5回】 権利確定日後の会計処理
- 【第6回】 公正な評価単価
- 【第7回】 条件変更の会計処理①
- 【第8回】 条件変更の会計処理②
- 【第9回】 ストック・オプションと業務執行や労働サービスとの対応関係の認定①
- 【第10回】 ストック・オプションと業務執行や労働サービスとの対応関係の認定②
- 【第11回】 未公開企業
- 【第12回】 財貨又はサービスの取得の対価として自社株式オプション又は自社の株式を用いる取引の会計処理
【参考記事】
「減損会計を学ぶ」(全24回)
- 【第1回】 減損会計の全体像
- 【第2回】 減損会計の特徴
- 【第3回】 減損会計の対象
- 【第4回】 減損会計の特徴②
- 【第5回】 減損の兆候
- 【第6回】 減損の兆候の例示①~営業活動から生ずる損益等が継続的なマイナス~
- 【第7回】 減損の兆候の例示②~使用範囲・方法について回収可能価額を著しく低下させる変化がある場合~
- 【第8回】 減損の兆候の例示③~経営環境の著しい悪化の場合・市場価格の著しい下落の場合~
- 【第9回】 共用資産の減損の兆候・のれんの減損の兆候
- 【第10回】 グルーピング
- 【第11回】 事業の種類・業態により異なるグルーピング
- 【第12回】 グルーピングに関するその他の留意事項
- 【第13回】 減損損失の認識の判定①
- 【第14回】 減損損失の認識の判定②~将来キャッシュ・フローの見積期間が20年を超えないケース~
- 【第15回】 減損損失の認識の判定③~将来キャッシュ・フローの見積期間が20年を超えるケース~
- 【第16回】 経営計画
- 【第17回】 減損損失の測定~正味売却価額と使用価値~
- 【第18回】 減損損失の配分
- 【第19回】 割引率①~割引計算の考え方~
- 【第20回】 割引率②~割引率の選択~
- 【第21回】 共有資産の取扱い
- 【第22回】 のれんの取扱い
- 【第23回】 減損処理後の会計処理
- 【第24回】 減損会計の開示・税効果
【参考記事】
「金融商品会計を学ぶ」(全29回)
- 【第1回】 金融商品会計の全体像
- 【第2回】 金融商品の範囲
- 【第3回】 金融資産及び金融負債の発生の認識
- 【第4回】 金融資産の消滅の認識
- 【第5回】 金融資産の権利に対する支配が他に移転したとき
- 【第6回】 金融資産の消滅時に何らかの権利・義務が存在する場合
- 【第7回】 金融負債の消滅の認識
- 【第8回】 金融資産及び金融負債の評価(時価)
- 【第9回】 有価証券の評価基準及び時価(総論)
- 【第10回】 売買目的有価証券の会計処理
- 【第11回】 満期保有目的の債券の会計処理
- 【第12回】 その他有価証券の会計処理
- 【第13回】 時価のある有価証券の減損処理
- 【第14回】 時価を把握することが極めて困難と認められる株式・債券の減損処理
- 【第15回】 有価証券の保有目的区分の変更
- 【第16回】 貸倒引当金の計上方法①
- 【第17回】 貸倒引当金の計上方法②
- 【第18回】 デリバティブ取引
- 【第19回】 任意組合・匿名組合等、建設協力金等の会計処理
- 【第20回】 ヘッジ会計① -ヘッジ会計とは
- 【第21回】 ヘッジ会計② -ヘッジ会計の要件(事前テストと事後テスト)
- 【第22回】 ヘッジ会計③ -リスク管理方針文書と内部統制
- 【第23回】 ヘッジ会計④ -ヘッジ対象・ヘッジ指定・ヘッジ有効性の評価方法
- 【第24回】 ヘッジ会計⑤ -ヘッジ有効性の評価、その他有価証券・満期保有目的の債券
- 【第25回】 ヘッジ会計⑥ -予定取引
- 【第26回】 ヘッジ会計⑦ -連結会社間取引のヘッジの可否・売建オプション・外貨建取引に係るヘッジ
- 【第27回】 ヘッジ会計⑧ -予定取引実行時の処理
- 【第28回】 ヘッジ会計⑨ -包括ヘッジ・金利スワップの特例処理
- 【第29回】 ヘッジ会計⑩ -繰延ヘッジ損益の会計処理・ヘッジ会計の「中止」と「終了」
筆者紹介
阿部 光成
(あべ・みつまさ)
公認会計士
中央大学商学部卒業。阿部公認会計士事務所。現在、豊富な知識・情報力を活かし、コンサルティング業のほか各種実務セミナー講師を務める。
企業会計基準委員会会社法対応専門委員会専門委員、日本公認会計士協会連結範囲専門委員会専門委員長、比較情報検討専門委員会専門委員長を歴任。主な著書に、『新会計基準の実務』(編著、中央経済社)、『企業会計における時価決定の実務』(共著、清文社)、『新しい事業報告・計算書類―経団連ひな型を参考に―〔全訂版〕』(編著、商事法務)がある。