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ストック・オプション会計を学ぶ 【第8回】「条件変更の会計処理②」

筆者:阿部 光成

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ストック・オプション会計学ぶ

【第8回】

「条件変更の会計処理②」

 

公認会計士 阿部 光成

 

Ⅰ はじめに

前回に引き続き、「ストック・オプション等に関する会計基準」(企業会計基準第8号。以下「ストック・オプション会計基準」という)にしたがって、ストック・オプションに係る条件変更の会計処理について解説する。

条件変更には次の類型がある。

 公正な評価単価を変動させる条件変更(【第7回】を参照)

 ストック・オプション数を変動させる条件変更(今回)

 費用の合理的な計上期間を変動させる条件変更(今回)

 

Ⅱ ストック・オプション数を変動させる条件変更

1 会計処理

ストック・オプションについて、権利確定条件を変更する等の条件変更により、ストック・オプション数を変動させた場合には、次のように会計処理する(ストック・オプション会計基準11項)。

 条件変更前から行われてきた、ストック・オプション会計基準5項の規定に基づく費用計上を継続して行う。

 に加え、条件変更によるストック・オプション数の変動に見合う、ストック・オプションの公正な評価額の変動額を、以後、合理的な方法に基づき、残存期間にわたって計上する。

2 考え方

勤務条件や業績条件等の権利確定条件を変更した場合には、一般にストック・オプション数が変動することになる。

ストック・オプション数の見直しの会計処理については、ストック・オプション会計基準7項(2)に規定があるが、この規定の前提となっているのは、環境の変化等の企業が意図しないストック・オプション数の変動であり、そのため重要な変動が生じた場合には、その影響額を見直した期に損益として計上することとされている。

しかしながら、企業の意図による条件変更の結果、ストック・オプション数に変動が生じた場合(ストック・オプション会計基準11項)には、将来にわたる効果を期待して条件変更を行ったものと考えられるため、ストック・オプション会計基準7項(2)は適用されず、ストック・オプション会計基準11項にしたがって、その影響額は条件変更後、残存期間にわたって反映させることになる(ストック・オプション会計基準57項)。

 

Ⅲ 費用の合理的な計上期間を変動させる条件変更

1 会計処理

ストック・オプションについて、対象勤務期間の延長又は短縮に結びつく勤務条件の変更等により、費用の合理的な計上期間を変動させた場合には、当該条件変更前の残存期間に計上すると見込んでいた金額を、以後、合理的な方法に基づいて、新たな残存期間にわたって費用計上する(ストック・オプション会計基準12項)。

2 考え方

条件変更の結果、当該ストック・オプションと対価関係にある対象勤務期間が変動する場合には、厳密にいえば、条件変更の前後で報酬としての同一性を失い、別の報酬に置き換わると理解することもできる(ストック・オプションが「どのサービスに対する対価として用いられているのか」ということ。財務会計基準機構監修、企業会計基準委員会編『企業会計基準完全詳解 改訂増補版』(税務経理協会、平成21年8月)187ページ)。

しかしながら、行使価格の引下げ等にあわせて、対象勤務期間の延長に結びつく勤務条件の変更が行われることもあり得るため、当初の対象勤務期間が延長又は短縮された場合には、条件変更の問題として取り扱うこととされた(ストック・オプション会計基準58項)。

 

Ⅳ 複合的な条件変更

前回と今回では、公正な評価単価を変動させる条件変更、ストック・オプション数を変動させる条件変更、費用の合理的な計上期間を変動させる条件変更について述べてきた。

これらの条件変更は、相互に排他的なものではなく、例えば、ストック・オプション数を変動させる勤務条件の変更は、通常、対象勤務期間の変更を伴い、合理的な費用の計上期間をも変動させる場合がある。また、勤務条件の変更は、権利確定日の変更を伴い、権利行使期間の開始日と一致することの多い権利確定日が変更されれば、ストック・オプションの公正な評価単価を算定する上での変数の1つである、ストック・オプションの予想残存期間に影響を及ぼす可能性がある。さらに、行使価格の引下げと同時に、対象勤務期間の延長が行われるなど、複数の条件変更が同時に行われることもあり得る。

このような、複合的な条件変更の場合にも、その会計処理は、それぞれの要素に分解して行うことになる(ストック・オプション会計基準59項)。

(了)

「ストック・オプション会計を学ぶ」は、隔週で掲載されます。

連載目次

【参考記事】
「金融商品会計を学ぶ」(全29回)

【参考記事】
「減損会計を学ぶ」(全24回)

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「税効果会計を学ぶ」(全24回)

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筆者紹介

  • 阿部 光成

    (あべ・みつまさ)

    公認会計士
    中央大学商学部卒業。阿部公認会計士事務所。

    現在、豊富な知識・情報力を活かし、コンサルティング業のほか各種実務セミナー講師を務める。
    企業会計基準委員会会社法対応専門委員会専門委員、日本公認会計士協会連結範囲専門委員会専門委員長、比較情報検討専門委員会専門委員長を歴任。

    主な著書に、『新会計基準の実務』(編著、中央経済社)、『企業会計における時価決定の実務』(共著、清文社)、『新しい事業報告・計算書類―経団連ひな型を参考に―〔全訂版〕』(編著、商事法務)がある。

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